神遊び 4
わたしのことをお婆様と呼んでくれるわたしの可愛い教え子。神として繋がりが無いがなぜそう読んでいるのか?前に聞いてみたことがある。その時の答えはそう感じたからです。という曖昧な答えだったがまぁ悪い気はしないので特に気にしていない。
「まず順を追って話しましょう。今ここにいるお婆様やわたしたちとアリルとの違いは分かりますかね?」
セイレがゆっくりと話し始めた。アリルと呼ばれた神は少し身体を震わせてセイレの話を聞き始めた。
「一様説明しておきましょう。わたしたちは所謂この世界に"来た"存在で、アリル。あなたはこの世界で生れた存在と言うことです。そして、わたしたちの仕事は一つ、世界全体の安定を図ること。」
「セイレ、世界についても話してあげないと分からないんじゃない?」
「そこは別にいいんじゃ無いでしょうか。どうせ消えるんですから。」
吐き捨てるようにそう言ったセイレにわたしはデコピンをして叱った。軽い力でやったデコピンだが、アリルと呼ばれた神に同じようにデコピンをすれば頭が吹き飛ぶだろう。
「そう言わないの。」
「ですが・・・。分かりました。」
デコピンされた場所をさすりながらセイレが向き直った。
「面倒くさいので端的に話します。世界は世界です。」
「端的すぎるでしょ。」
セイレはそれだけ言うと世界の説明はそれ以上話そうとはしなかった。
「話を戻します。この世界の状態についてですね。普通世界はある程度の期間が経つと二つの進路に変化します。一つは世界の系譜にそのまま連なり人間が子供を残すように世界を生み出す進路になりますね。もう一つは系譜から外れわたしたちの手伝いなしに世界を繋げる進路です。が、今この世界はどちらの進路にも属していません。理由は簡単ですね。アリルが少し前に気にしていた世界寿命、それが尽き欠けているんです。」
「まさか・・・。嘘でしょ?」
「残念ながら本当です。最高神が姿を消したのもそれに理由があります。世界寿命が尽きたとき世界は生き延びようと他の世界に手を伸ばします。そうなればどうなるか。分かりますよね?それを防ぐのがわたし達とお婆様の役割です。」
セイレはわたしが突き刺した槍に近付いた。槍の柄を握るとセイレは一気に槍を突き刺した。槍は地面から少しだけ柄を覗かせるだけの状態まで埋まった。すると、先ほどよりも一際大きな揺れがわたしたちを襲った。近くにいた四人の天使を抱き寄せると足下に氷の床を創りだし空中に浮かびあげた。ランドも人型に戻ってその床にのっている。ランドが遊んでいた魔王の方を見るとそこには小さく引きちぎられた身体が転がっていた。
「わたしがアリルに言った尊敬するという言葉に嘘はありません。」
揺れによって立つことが出来ていないアリルに向って近寄っていったセイレ。セイレの方をジッと見つめているアリル。
「最初は小さな天使だったあなたが神にまで上り詰めたのは本当に素晴らしいことです。普通の世界だったならそのままわたしの守護天使としてもよかったくらいには。」
セイレはそれまで隠していた本来の神としての力を徐々に解放しながらアリルに話し続けた。
「でも、出来なかった。世界の寿命が削られる原因は前話したことがあったよね。この国は何回も別世界から呼び出しをおこなっている。それだけやって世界が耐えられる訳がない。」
セイレはアリルに背中を向けるとわたしたちのいる氷の床に跳び乗った。
「さようなら。次はもっと良い世界で生れると良いね。」
セイレがそう言ったのを確認するとわたしは時空間に氷の床ごと移動した。その途中でランドは自分の世界に帰っている。
「・・・世界の崩壊はしっかり見ておきなさい。それが、わたしたちの役割に対する代償だから。」
時空間の中からわたしたちは世界の崩壊する様を見ている。世界の中心に放たれたわたしの力は周囲の全てのものを細かく砕きながら無にしていく。しだいに支えが無くなった外郭が崩れはじめ、地上のものがドンドン消えていく。やがて、世界そのものが消え始め全てが無に還った。
「・・・お婆様。」
「大丈夫。これがわたしたちの役割だから。わたしたちがどれだけ手を尽くしても世界はどんどん消えていく。消えた分だけ世界は生れる。いずれ限界にたどり着いたときがわたしたちの消えるときだから。」
セリルに言い聞かせるように、自分に言い聞かせるようにそう言った。それからみんなを天界に送り届けた後わたしは自分の屋敷に戻った。そのままみんなに合うような気分になれなかったわたしは敷地内にある湖の対岸にある屋敷に比べれば小さな建物に移動した。中に入ったわたしは吹き抜けになっている中央から跳んで湖を見下ろせる窓の枠に腰掛けた。そこからは小さく波立っている湖面に反射する光が見える。常に暗い空に浮かぶ白い光を発する球体も湖面に映っている。その光景を何も考えずじっと見ていると入り口の扉が開かれた。
「お帰りなさい。」
「・・・ただいま。」
はいってきたメイドには顔を向けずにそう言った。メイドはわたしの腰掛けている窓枠近くまで来た。
「帰っていたのなら一言声をかけていただければよかったのに。」
「・・・ねぇメイド。あなたは悲しいって感情持ってるよね。」
突然話しかけたわたしに少し驚いた様子のメイド。
「そろそろ話しておこうか。わたしたち六神の一生について。」
そういうとわたしは窓枠から飛び降りて一つの部屋に向って歩き始めた。
「この部屋には絶対入るなっていったよね。その理由がこの中に置いてあるの。」
扉に手をかけたわたしはそこで決められた言葉をつないだ。誰にも理解できないわたしだけが知る言葉を。それが鍵になり扉にかかっていた鍵が外れた。扉を抜けた先には小さく青白い光を放つクリスタルが浮かんで部屋を照らしていて、その真ん中には一冊の数ページしかない薄い本が台の上に置かれていた。
「・・・これがその秘密ですか。」
「そっ。持ってみなよ。メイドならすぐに分かると思うよ。」
わたしは閉めた扉にもたれかかった状態で本を見ていたメイドに向ってそう言った。恐る恐るといった様子で本を持ち上げた。だが、メイドは持ち上げた本をすぐに落としてしまった。
「こ、これは・・・。」
「まっそうなるよね。」
わたしは床に落ちた本を拾うと台の上に戻した。
「今視たようにこの本はわたしの記憶から生み出した本なの。」
「そんな・・・今のは・・・。」
「そう。わたしの始祖神としての記憶。わたしたちはね、たとえ全ての世界が消え去ってわたしたちという存在が消滅したとしても、その記憶を再び存在するようになっても保持し続けるの。」
「わたしたちって・・・もしかして主以外にも?」
「ええ。六神の中だと信愛以外の全員。それ以外だとわたしたちから生れた神だね。知っている奴だとわたしの世界で管理手伝ってもらってる奴とかかな?あと一人いるけど多分メイドは知らないかな。」
「・・・信愛神様は違うんですか?」
「そっ。あの子は今世で生れた最高神だから。」
わたしは久しぶりに本を開いた。そこにはびっしりと始祖神の時に創り出した世界について書かれている。だが、そこに書かれている世界の説明は一行にも満たないものが多い。
「改めてみると面白みの無い本だね。」
読んでいた本を閉じて台に戻した。それからメイドを連れて部屋の外に出た。再び同じように封印し終えると建物を出た。湖の縁を取るように立てられた回廊を歩いて屋敷に向かった。
「わたしたちはね。要するに世界が消えても絶対に消えることは出来ないの。これを羨ましいと思うかどうかはそれぞれだけど、世界の崩壊を長く視てきた代償だね。それを決めたのも?????だし。」
「最後何て言いました?」
「聞こえて無いならいいよ。多分一生聞くことはにと思うから。」
回廊を進んで行ったわたしは屋敷の中に入るとイル達が勉強している部屋に入った。
「ただいま~。」
「あっお帰りなさい。」
「どれぐらい進んだかな?」
「えっと・・・、純粋な力の使い方についてはオロチさんから教えてもらいました。あとは、自己強化の仕方ですね。こんなのもあるって初めて知りましたよ。ヒァリンもおんなじですね。」
どうやらわたしが遊んでいる間にもオロチ達がしっかりと教えてくれていたようだ。それなら後教えておくのは一つだけだろう。
「そこまで分かってれば満点かな。あとはそれぞれの召喚体を成長させるから、広いところに移動しようか。」
二人を連れてわたしたちは湖の畔に移動した。そこにヒァリンとイルの召喚体を出してもらった。




