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神遊び 3

 街の中心、円形の広場になっているその中心にわたしは歩いてきていた。その隣にはランドが腕を組んで立っている。しゃがみ込んで広場の中心に手を置く。おもむろに空いている手で時空間にしまってあった槍を取り出すと先ほどまで手を置いていた場所めがけて槍を突き刺した。石畳になっている広場の地面を簡単に貫いた槍は二股に分かれている部分より上を残した状態で止まった。


「さて、世界の叫びを聞いてみようか。」


掴んでいる槍に思いっきり力を流す。すると槍がかすかに振動し、光り始めた。今は見えていないが膨大な力を纏った槍がどんどん地中深くまで突き進んでいるだろう。その証拠に小さな揺れが先ほどから広場を襲っている。


「叫び、悲鳴、そのどちらでもいい。聞かせてみな。それとも、まだ抗うの?」


わたしがそう言った瞬間地割れのように広場全体にひびが入っていき、大きな振動により建物もどんどん崩れている。至る所で人の悲鳴が聞こえており、広場にいる人は揺れの大きさでまったく動くことが出来ていない。わたしは掴んでいた槍から手を離すと翼を広げて空に飛んだ。ランドもそれに続いて空に来ている。眼下には白い光が灯る街に赤い光と黒い煙が混じり合っている。街から目を離せば森や草原、山から灼熱の溶岩がどんどん流れ出ている。


「ふふ、いいね。いいね!いいよ!もっと叫べ、もっと泣け!わたしを楽しませてよ!あはは!」


「ずいぶんと豹変したな。そっちが本性か?」


「その通りだよ!これが神としての本当のわたし!」


ランドはいつの間にか龍の姿に変化していた。


「あら、その姿でよかったの?」


「こっちのが威圧になるだろ。」


今のランドの姿は羽が2対生えていて全長も屋敷ほどある位大きい身体になっている。


「ふー、さてさてどう反抗してくるかな?」


わたしはランドと共に先ほどまでは綺麗だった広場に降り立った。今の姿は羽が3対生えているだけで見た目が元に戻っただけだ。地面に降り立ったわたしたちに近付いてくる三人の気配があった。


「な、何を・・してるの・・?」


近付いてきたのは学園の寮にいたはずのアリアとハル、それにヘンドさんだった。そういえばこの広場の近くは学園の裏門に近くだったはずだ。それで避難か分からないが広いところにと移動してきたのだろう。


「まさかこの揺れもあなたが起こしたの?」


「・・・ええ、そうですよ。相変わらず良い声で鳴いてくれます。世界の叫びは。」


わたしがそう言うとヘンドさんはわたしに向って飛びかかってきた。力いっぱいにお腹を殴られたわたしはそのまま後ろに吹き飛んでいき家を何戸か貫通して止まった。吹き飛ばされている最中にランドも同じように吹き飛ばされていた。


--------------------------------------------------


昨日まで自分の生徒だったはずの子を殴り飛ばしというのにわたしは何も感じていなかった。みんなが動き始めた頃に襲った大きな揺れ、わたしはとっさにアリアさんとハルくんを連れて寮から離れた。向ったのは広場で、建物が崩れたとしても埋まることの無い安全な場所だと判断したからだ。この判断は間違っていなかったと思う。実際広場は石畳が割れているだけだった。が、想定外だったのはそこにミカさんがいたと言うことと巨大な龍がその横にいたことだった。ミカさんの姿は明らかに人間では無かったため彼女が何かをしたことは明白だった。もしかしたら誤ってやってしまったのではと言う希望を抱いて聞いてみたが、その希望はすぐに打ち砕かれた。彼女が見下すように笑ったのを見たわたしは彼女を殴りつけていた。そして、隣にいた龍も同じように吹き飛んでいく。


「お前が動いたから殴ったがこいつらが原因か!?」


そこにいたのはわたしと同じこの世界に呼び出された存在でこの国で騎士として動いている男だった。


「多分!いや、絶対そう!」


「そうか。」


その時ミカさんが飛んでいった方からガラガラと言った音がした。そこには自分が突き刺さった影響で崩れた瓦礫を押しのけながら立ち上がるミカさんの姿があった。そして背後では小さな爆発音と共に龍が空に浮かび上がった。


「・・・まったくひどいではありませんか。いきなり殴りつけるなんて。」


崩れた家の中を歩いてくるミカさん。そしてわたしたちと対峙するように降りてきた龍は身体を光らせながら姿を変えていく。そこにはミカさんと一緒にいたランドくんが立っていた。


「一発受けてみたが・・・弱いな。かすり傷にもならんな。」


「そりゃそうでしょ。固さが違うよ。わたしみたいに肉体持ちだとこうなるんだから。」


ランドくんの隣に来たミカさんの姿にわたしたちは絶句した。そこに立っていたのは両腕から赤黒い液体を大量に垂らし、片足は膝より下が完全にちぎれている。さらにお腹には木材が突き刺さっている。


「はぁ、やっぱり肉体は不便だな~。」


おもむろにそう呟くとミカさんは自分の胸に腕を突き刺した。そこから血が出るのをお構いなしに身体の中から何かを引きずり出した。血にまみれたその手には正方形の透明な結晶が握られている。その結晶をミカさんは一瞬でどこかへ消したしまうとミカさんの身体に変化が現れた。身体全体にひびが入り始め、ちぎれていた足からは白い肌の足が創られている。ミカさんは学園の制服を着ていたが、その制服も自然に破れるようにはらっと落ちた。その下には女性の身体としては整いすぎている素晴らしい身体が露わになる。ただ、一つの違いは首より下が半透明で透けているように見える。その透けている身体を覆うようにどこからともなく服が現れミカさんを包み込んだ。


「さて、始めようか。」


ミカさんがそう呟くように言うとわたしの顔に横から生暖かい液体がかかった。そちらを見ると先ほどまで隣にいた男の顔があったはずの場所に赤く染まった拳があった。男だった物の身体からは血が噴き出してわたしとミカさんを染め上げる。


「まず一人。」


「・・・そっちは俺がやりたかったな。」


「良いじゃんか。そっちの二人はあげるからさ。」


「はいはい。」


何気ないように会話をするランドくんとミカさん。しかし、ミカさんは今し方一人の人間の顔を握りつぶして殺している。その会話に出てきた二人とはアリアさんとハルくんだろう。すぐにわたしは動いたがそれよりも早くわたしの上を巨体が通過していく。その巨体の影になり二人の姿が一瞬見えなくなった。その後巨体が空に飛び上がったときそこにいたはずの二人の姿は太ももから下を残して無くなっていた。


「張り合いの無い。避けようともしないとはな。」


空に飛び上がったランドくん。龍の姿になったその口からは赤い液体が一筋流れて出ていた。


「あはは、仕方ないよ~。それだけ弱いって言うことなんだから。」


わたしの隣でミカさんは誰もが惚れそうな笑顔でそう言った。だが、その目に睨まれていたわたしは腰が抜けて立てなくなっていた。


「それじゃ、さようなら?」


ミカさんの腕がゆっくりわたしに近付いてくる。自分の死が確定的なことに絶望したわたしは一切動くことが出来なかった。そのとき、わたしに向って伸ばされていた腕が切り飛ばされた。ミカさんは自分の腕が切り飛ばされたというのに慌てること無く後ろに跳んで距離を取った。


「だれだ?」


「この世界を守るものだ。」


「・・・神か。ずいぶんと大きいのが出てきたね。」


ミカさんは肘から先が無くなった腕を横に振った。それだけで切られたはずの腕が再生した。


「どうするんだ?予想通りだが予定外だぞ。もう少し時間がかかる予想じゃ無かったか?」


「そうだね。さらに言うと世界も反抗してきたね。魔王が来た。」


ミカさんがそう言うとミカさんが神と言った人達と反対側に数十人の人が現れた。恐らくあれが魔王なのだろう。


「ありゃ、一緒になったか。」


「どっちやりたい?って聞いても決まってるか。」


ミカさんがそう言うと降りてきた龍が魔王側にミカさんが神側に向き合った。


「初めまして、この世界を壊しに来ました。」


「その手伝いだ。暇つぶしでもある。」


ランドくんとミカさんはそう言うと同時に飛び込んできた。二人とも少し手前の地面にミカさんは拳を、ランドくんは前足をたたきつけた。それだけで魔王側、神側のほとんどが吹き飛ばされていなくなった。わたしも衝撃で吹き飛ばされ壁に背中を打ち付けた。


「ほらほら、早くしないとどんどん世界が壊れていくよ。」


ミカさんが煽るようにそう言った。その言葉に槍を持った人が二人ミカさんに突っ込んでいったが突き出された槍を両手の指先で止めた。かなりの力を込めたはずの攻撃を指先で止められて攻撃した側の人も驚いたいる。


「お返し!」


ミカさんがそう言うと槍が砕けていきやがて人の身体も砕け散った。


「あはは!弱いね!弱いよ!もっとたのしませてよ!」


「嘘でしょ!?なんで効かないの!?」


神側で残っているのはいつのまにか一人だけになっていた。反対側の魔王もランドくんとの圧倒的な差でボロボロになっている。一人残っていた神のそばに五人の人が降り立った。


「お待たせしました。」


その中心に立っている男の人がそう言ってミカさんと距離を置いて向き合った。降り立った五人の背中にはそれぞれ一対の羽が広がられている。


「間に合った!よかった!」


神はそう言って喜んでいる。どうやら神が呼んだ援軍のようだ。降り立った五人はそれぞれが明らかに強者の装いだ。ミカさんも少し警戒しているようでジッとその五人の姿を見つめている。すると中心にいた男の人がミカさんに少しずつ歩み寄っていった。手を伸ばせば触れあうような距離まで近付いたとき、男がミカさんに飛びついた。


「頑張ったんです。撫でてください。」


「はいはい。よく頑張りました。」


ミカさんの胸に抱きつくようにしている男をやさしく抱きしめその頭を撫でている。


「みんなもお疲れ。ごめんね?面倒くさい仕事お願いしちゃって。」


ミカさんはそう言いながら残っていた四人にも顔を向けた。それまで黙っていた四人がミカさんに近付いていった。


「大丈夫ですよ。それも我々の仕事です。」


「そうそう。あなたがきにすることじゃ無いよ。汚れ仕事はわたしたちの仕事でもあるんだし。」


「まぁ、そうは言っても天使三十人の処理は骨が折れましたね。」


「・・・でも楽しかった。」


ミカさんと楽しそうに話している天使達。しかし、その集団を信じられないと言った様子で見ている神が一人いる。


「ちょっと待って・・・。何してるの?・・・それに処理って・・・。」


頭の理解が追いついていないようで呟くようにそう言いながら立ち尽くしてしまっている。


「・・・話してないなら、しっかりとあなたの口から教えてあげたらどう?」


ミカさんはいまだに自らに抱きついている男にそう言った。


「はーい。仕方ありませんね。」


男はミカさんから離れると神に向かい合った。


「お婆様が言わなければあなたに話すことは無かったんですがね。仕方が無いので話してあげます。」


男は面倒くさそうに事の顛末を話し始めた。


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