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神遊び 2

 ランドが跳んだ窓は普通の人なら落ちて死んでしまうような高さだ。だが、そんなこと関係なしにランドは外に跳んだ。近くで見ていた人は窓に駆け寄って下を見ている。


「まったく、少しは待ってよね。」


わたしは鞄を持つとランドと同じように窓から跳んだ。先ほどと同じようにわたしの行動に全員が固まった。窓から跳んだわたしは勢いがなくなり落ちる前に翼を広げ高度を上げた。一度羽ばたくと一瞬で地面が遠くなった。


「お待たせ。」


黒い空に浮かんでいたランドのところまで来るとわたしはそう言ってランドに話しかけた。


「いや、そこまで待ったいないぞ。それに先に出てきたのは俺だしな。」


「まっそう言わないの。行こ。」


わたしがそう言って高度を下げるとランドもそれに続いて高度を下げた。わたしは羽を出しているのでこのまま通りに降りると少し目立つ。と言うことでわたしとランドは路地裏に降りた。


「そういえば、こうやって勝手に出歩いても問題ないのかな。」


ランドの隣に立って歩きながらそう聞いてみた。


「問題あるか無いかで言えば大問題になりそうだな。どうせ今頃俺達が出てったことも伝わってるだろうし、すぐに探しに来るだろう。」


「やっぱりそうだよねー。」


ランドの言葉にそう反応しながら通りを歩いた。すると目的の場所に着いたのかランドは足を止めた。


「ここ?」


「そっ。結構有名なお店らしい。」


お店の中に入ると店員が近付いてきて席まで案内してくれた。品書きを見ながらどれを食べようかと悩んでいるとランドが顔を近づけてきた。


「どうやらここのお店はこれがおすすめの商品らしい。食べてみたらどうだ?」


ランドは自分のもっていた品書きを指さしながらそう教えてくれた。ランドが教えてくれた商品を見てみるとたしかにおいしそうな見た目をしている。丸いパンの上にクリームと果物を綺麗に積まれてある。


「そうするかな。他に食べたいのもないし。」


「俺もそれでいいな。というかこういう店に一人で来にくいからあんたを誘ったんだがな。付き合ってもらって悪いな。」


「気にしない気にしない。さっ、頼んで食べよ。」


わたしは近くを通っていた店員さんに注文を伝えると品書きを机の端に立てた。


「さて、こうしてる間にも必死にわたしたちのこと探してるね。まぁ見つかるわけ無いけど。」


窓際に座ったわたしたちからは通りを走り回る同じような服を着た人達がよく見える。


「そう。さっきから気になってたんだが、どうして気がつかないんだ?これだけ見えてるならすぐ見つかってもおかしくないと思うんだが。」


ランドも外を見ながら不思議そうにそう聞いてきた。


「原因の一つはわたしたちがここにいるとは思っていないってこと。あとはわたしたちの顔をまだしっかり覚えてないんでしょうね。まぁ覚える気が無いわたしたちよりは良いのかも知れないね。」


頬杖をついていまだに走り回る人を見ながら注文した品が来るのを待った。ランドも外の景色を見ている。


「お待たせしました。」


しばらく待っていると店員が注文の品を持ってきてくれた。軽くお礼を言ってから運ばれてきた品に手を付けた。まず上にのった果物とクリームを一口。


「ん~、おいしい!」


「ほんとうだな。これは美味い。」


わたしが二口目を口に運んでいると机に置かれたシロップに気がついた。試しにそれをかけて食べてみると、それまでは甘さの中にほんのり果物の酸味があったが、そこにやさしい匂いが追加されさらにおいしくなった。


「ねぇ!これかけてみなよ。また違った味になっておいしいよ。」


ランドにシロップを勧めた後止まっていた手を動かして目の前のものを無くすのに集中した。しばらく二人とも無言で食べ進めるといつの間にかお皿は綺麗になっていた。


「は~、美味しかった。」


「よかったよ。口に合ったみたいで。」


わたしたちはお金を払って店を出た。ランドはお金を持っていなかったので仕方なくわたしがお金を創りだして払うと言うことになったが置いておく。


「さて、このまま歩いていればどうせすぐに連れ戻されそうだけど、どう思う?」


「分からんとこだよな。お前の話通り顔を覚えていないなら無視されそうだし。」


「まぁね。取りあえず学園に戻ろっか。」


わたしたちはそのまま呼び止められたりすること無く学園まで戻ることが出来た。だが、さすがに学園にはわたしたちの顔を知っている人が門の前で待っていた。その人に連れられわたしたちは城の中に入った。わたしたちが通されたのは応接室のような場所で、そこには昨日いた王女らしき人が一人いた。その女性の前に座るとわたしたちを連れて来た人は部屋を出て行った。


「・・・はぁ、一様こうなるかも知れないからと聞いていましたが本当にこうなるとは思ってませんでしたよ。お婆様。」


少し疲れ切ったような顔をした女性はわたしのことをお婆様と呼んだ。


「いつから入れ替わってた?」


「少し前です。本当の王女は少し自室で眠ってもらってます。・・・出かけるなら一言言って欲しかったです。」


「はいはい。まぁ明日には終わるから良いじゃんか。」


「・・・なぁ俺もここにいるんだが良いのか?」


これまで置いてけぼりだったランドが口を挟んできた。わたしも目の前にいる女性も特に気にしていないがランドは気になったのだろう。


「そういえば明日のことについて話しておいた方が良いか。話したとおり明日のはこの世界を間引くからそれを手伝って欲しいの。こいつも含めてあと四人天使を回収していくからそれだけは覚えておいてほしいかな。まぁ絶対邪魔は入るだろうからそれをどうするかだね。」


「あとどうやって世界を壊すかです。遊ぶんですか?」


「ふむ、大まかにまとめるとその天使が揃うまでは適当に邪魔を排除してそこからは元の世界に戻っても良い感じか。」


「ん、そんな感じ。」


「わかった。」


わたしとランドはそう言うと話を区切って静かに部屋を出た。わたしたちが向ったのは昨日過ごした部屋。ランドに続いて部屋に入るとわたしは二人がけの椅子に寝転がった。


「そういえば、遊ぶってどう遊ぶんだ?」


「それはその時考える。どんな邪魔が入るかも分からないしね。」


わたしとランドがそう話していると部屋の扉が叩かれた。扉を開いて入ってきたのはわたしたちと最初にあった男だった。


「すまないな。少し話だけ良いか。」


男はそう言うとわたしが寝転がっている向かいに置かれた椅子に座った。


「少しだけなら良いが。」


ランドはわたしが寝転がっている椅子の背もたれに両手を乗せて男の方を見た。


「そうか。・・・今回勝手に街に出たらしいな。」


「ああ、そうだな。」


「・・・この話は極秘になっているんだが、お前たちには話しておく。お前たちが来る前に何回も呼び出しをおこなっている。だがな、お前たちのようにあの道具で何も表示されなかった奴全員が姿を消している。」


「ふーん。だからおとなしくしておけってこと?」


「ああ、そういうことだ。」


「・・・はっ、笑わせるなよ。どうせ強い奴を失いたくないだけだろ。」


ランドは男に向ってそう吐き捨てるように言った。それを聞いた男は思わず立ち上がろうとしたが、わたしが男の筋肉を凍らせて立ち上がらせなかった。


「まっ、いなくなった奴の気持ちは分からなくもない。実際わたしたち二人も元の場所に帰る方法もあるし、今すぐ帰ってもいいんだからね。」


いままでわたしたちがどういう存在か理解していなかっただろう男はいまだに一切動かない下半身とわたしの発言で大体理解しただろう。


「ついでに教えてあげる。わたしはやることががあってこの世界に残って"あげてる"の。」


「おい、いいのか?それ教えても。」


「大丈夫でしょ。どうせ手遅れなんだから。」


わたしは凍らせていた男の下半身を解放して頭が追いついていない男を部屋の外まで導いておいた。


「さて、明日は忙しくなるぞ~。」


わたしはそう言うと両手を胸の前で合わせた。ゆっくりと合わせた手をひらいていくと手と手の間に銀色の槍が創り出されていく。そのまま手を開ききるとわたしの慎重と同じくらいの長さがある槍が完成した。槍の形は持ち手部分はシンプルな銀色をしているが先端は二股に分かれ、絡み合うようにして鋭くなっている。そして二股に分かれている部分と絡まり合っている部分に隙間がありその部分には真っ黒い玉が入ったクリスタルが埋め込まれている。


「こんなもんかな~。」


「なんで、急に槍なんて創ったんだ?」


「ん?そりゃ世界を壊すのにいるからに決まってるじゃん。」


創りだした槍を壁に立てかけるとわたしは窓を開けて外に出た。そこからは白い光がたくさん浮かぶ街の景色が一望できる。ランドもわたしの隣で柵に両手を置いて見つめている。


「・・・なぁ、お前はいままでいくつの世界を壊してきたんだ?」


「ん~、数え切れない位壊してきたかな。それこそ、世界を0にするくらいね。」


「そっか。じゃあ、お前が住む世界も壊すことになるのか?」


「そうだよ~。」


「・・・何も感じないのか?壊すことに。」


「・・・はは、やっぱり気になるよね。残念ながら壊すことに抵抗は無いよ。それこそ、わたしという存在が消えることもね。」


わたしがそう言うとランドはわたしの方をジッと見つめた後共通語で一言呟くように言った。


『悲しいな。神は。』


『それが、わたしたちが持たない感情だけどね。』


わたしは眼下に広がる景色を目に焼き付けると部屋の中に戻った。ランドはしばらく外にいた。



翌朝、街に明るい光が灯ると同時に行動を始めた。



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