神遊び 1
時空間の中を通ってしばらく。といってもほんの一瞬だったが自分の身体を引き寄せる力が途切れると同時に足が地面についた。全体を視てみるとわたし含めて四人いる様子。どうやら全員を呼ぶことに成功したみたいだ。四人のうちしっかりと立っているのはわたしともう一人の男だけ。残り二人は腰を抜かしているのか座り込んでしまっている。
「急にこのような場所に連れてこられ困惑しているだろう。そこは申し訳ない。」
少し離れてとこりに男がそう言ってわたしたちに向って頭を下げた。周りを見てみると、どうやらここは地下かどこかの洞窟の中にあるらしく壁や天井は岩で覆われていた。この空間には先ほどわたしたちに頭を下げた男と今し方呼び出されたわたしたちしかいないようす。周りを見渡すとき自分の髪の毛がいつもの色ではなく灰色に近い色に変わっていることに気がついた。自分の手を握ったり開いたりして確認する。そこで気がついたのは今までに白に限りなく近かった肌の色が少し色味が付いた色に変わっていることだった。
「なるほど、少し肉を付けるときにも影響が出るんだな・・・。初知り。」
呟くようにそう言うと身体の確認を終えた。それからわたしたちは男に連れられ移動を始めた。予想通りここは地下にあったらしく階段を上がってその先にあった扉をくぐった。その先は以前見たような気がする王様がいる部屋そのものだった。そしてそこにいる一組の男女。察するに王女と王様といったところか。取りあえず長い話になりそうだし自分の状態でも確認することにした。
(ふむふむ、見た目以外は特に大きな影響はなしか。・・無理矢理肉付けした影響も出てそうだな。と思ったがそれもないとは。色々と調べ直さないといけないな。ふふ、またいい時間つぶしが出来た。)
そう考えていると男の話が終わったようで男に連れられ部屋を出た。移動の間に今いる場所を正確に掴むため視界を半分飛ばしていた。そのため閉じている片方には飛ばした視界から見える景色が。閉じていない目からはわたしの周りの景色が見渡せる。わたしたちには視界に限界がないため普通の状態でも自分の周りはたとえ背中側でもはっきり見ることができる。話がずれたな。そんなふうに周りを見ていると一人の男がわたしに話しかけてきた。
「なぁ、片目閉じて何やってんだ?」
「・・・さて、何だと思います?」
「質問を質問絵返して欲しくなかったがな。まぁ俺と一緒だろ?」
そう言うと男はどこか虚空を見始めた。
「分かってるなら聞かなくてもよかったでしょ。この後どうするって?」
「俺達の力計って終わり。明日からは少し忙しいらしいがな。」
「ふーん。」
そんな話をしてると一つの部屋に付いた。そこでわたしは飛ばしていた視界を戻した。同じことをしていた男もやめたようでしっかりと前を見ている。部屋の中に入るとわたしたち四人は一人ずつ椅子に座らされた。それから腕輪のようなものを一つずつ渡された。ささっと調べてみるとどうやら力を測るための道具らしい。
「その腕輪は各々の力を計るための道具になります。腕輪に触れていただくと三つの項目が現れると思います。」
言われたとおり腕に付けた腕輪を指で触れたすると半透明の画面が映し出され、言った通り三つの項目が表示されている。
「普通の人の場合は上二つには数字が、下の一つには何も書かれていないはずです。」
男の言葉にわたしはもう一度自分の目の前に映し出されているものを見た。そこには男の言った言葉とは逆の表示がされていた。
「・・・表示されてないですね。」
「同じく。」
「・・・そうですか。先ほどいったように普通の人はそうなるというだけです。たまにお二方のような人もいるので問題は無いですよ。」
男はそう言うとわたしたちの腕輪を回収していった。それからわたしたちは男と女に分かれてそれぞれ二人ずつ、部屋に分かれて通された。部屋に入ったわたしはすぐに部屋の中にあった本棚から本を取り出すと窓際に置いてあった椅子に座って本を読み始めた。
「・・・あの。」
わたしが本を読み始めてすぐ。一緒の部屋になった女が話しかけてきた。わたしは本から目を離すことなく返事をする。
「はい。何でしょうか?アリアさん?」
「ど、どうしてわたしの名前を・・・。」
「さて、どうしてでしょうか。っとわたしのことを話し忘れてましたね。今はミカと呼ばれています。」
持っていた本をめくりながら軽く自己紹介をしておいた。ふと気配を感じて本を持ちながら外に出た。わたしたちに部屋には窓に外に広めのベランダが着いている。そこには隣の部屋にいるはずの男が一人立っていた。
「もう気づいたか。早いな。」
「そりゃ気がつくでしょ。・・・それにしても、もうこんなに暗かったんだね。」
「そうだな。それに日が沈んでるのにこんなに白い光が溢れてるとはな。世界が違うとこんなに違うものか。」
今わたしたちがいる場所からは街が一望できる。そこから見えるのは真っ黒な空とは対照的な白く輝く小さな玉が無数に浮かんでいる風景だった。
「どうもこれが普通みたいよ。あの浮かんでる白い玉が光を発しててそれが着いたり消えたりして一日ってするみたい。」
そう言いながら隣にいる男に持っていた本を見せた。それを横目でチラッと見た後再び町の方に目線を戻した。
「早く戻りなよ?怒られはしないだろうけど、何かしらいわれそうだし。」
「分かってるよ。それと明日からは学園に行けってさ。さっき言われた。」
「うぇ、めんどくさ。」
露骨に嫌そうなかおをすると男は「だよな」と言って笑った。それからわたしは先ほど座っていた椅子に座り直した。暇そうに足を組んで頬杖をつきながら来るであろう使いを待った。
「あの、ミカさん起きてください。」
いつの間にか眠ってしまっていたわたしはアリアによって起こされた。どうやら翌日の朝まで眠っていたらしい。退屈なのも面倒くさいなと思いながらアリアから今日の予定を聞いてみた。
「えっと、たしか学園での授業に参加していくそうです。取りあえず学園で学んでから色々とやっていくみたいですよ。」
「そっか。ありがと。それでこれが制服でいい?」
机の上に置かれた2着の服。それを取りながらアリアに聞いてみた。
「そうみたいです。」
「ふーん。」
手に取った服に着替えるようと今着ている服に手をかけた。だがいったんその手を止めて後ろを振り返った。
「なに?」
「あっ、いえ、すみません。」
何故かわたしの方をジッと見ながら固まっていたアリア。わたしが話しかけると慌てたように後ろを向いた。よく分からなかったが気にせずわたしは制服に着替えた。編み込んで一つにまとめてある髪を整え、前髪は色の違う片側の眼を隠すために下ろしておく。身だしなみを整え終え、振り返るとアリアも丁度着替え終えていた。服の隣に置かれていた数冊の本が入った鞄を一つ取ると部屋を出た。わたしの後ろをアリアが付いてくる。廊下を歩いていると後ろから人の気配が二つ近付いてきた。
「早かったな。」
「そんなに時間かからないよ。」
「まっ、そうだな。それにしても・・・。」
わたしの横に来た男はわたしのことをジッと見てきた。
「目立ちそうだな。その姿は。綺麗すぎだろ。」
「そうかな。」
試しにその場でクルッとまわってみた。その動きに合わせて膝上位の丈があるスカートがフワッと動き、スパッツをはいた太ももが少し見える。
「そうだろ。」
「それじゃあ、男避けになってよ。そうすれば問題なしですよ。」
「・・・分かったよ。どうせお前ぐらいしかここじゃ関係持たないだろうし。」
「やった。」
そう言うとわたしは男の腕に抱きついた。そこそこ身長のあるわたしなので男との差はほとんど無い。
「お待たせいたしました。それでは学園の方にご案内します。」
そう言って現れた男がわたしたちの前に立って歩き始めた。その男について歩くと建物を出て移動用の車に乗せられた。その車に揺られてしばらく、学園居着いたようで動きを止めた。
「お待たせしました。ここからは学園の者に引き継ぎます。数日間は学園の寮で過ごさせていただくことになります。」
わたしたちは車から降りるとそこで待っていた人に連れられ学園に入った。
『なぁ、少し気になったんだが俺もお前も元の場所に帰る方法あるよな。なのに何ですぐ帰らなかったんだ?おれは暇つぶしでもあるんだが。』
わたしが腕に抱きついた状態で小さく「世界共通語」で話しかけてきた。
『・・・あんまり大きな声で言えないけど間引きの対象とだけいっておく。』
『なるほど、理解した。いつやるんだ?』
『早ければ明日にでも。』
『それなら今日学園終わってから少し街の方に行かないか?おいしそうな料理があるお店見つけたんだ。』
『それは楽しみ』
そんな話をしていると一つの部屋の前に着いた。その扉を案内人に続いてくぐると、そこには十数人の人がこちらを見ていた。
「さて、ここからはよろしくお願いします。ヘンド先生。」
「分かりました。お任せください。」
ヘンドと呼ばれた女性は案内人の人に一礼するとわたしたちの方に向き直った。一様部屋に入る前に男からは離れている。
「さて、自己紹介お願いしようかな?」
「あっはい。分かりました。」
ヘンドさんに話しかけられた男は部屋にいた人達に向って話し始めた。
「えっと、ハルと言います。よろしくお願いします。」
「アリアですよろしくお願いします。」
二人がそう言って頭を下げた。
「それじゃ、わたしかな。今はミカって呼ばれてるよ。」
「ランドだ。」
「・・・もっと明るくしなよ~。」
そう言いながらランドの頭に手を置く。
「良いだろ別に。こういう性格なんだから。」
「はいはい。」
そう言って目をそらすランドに笑顔でそう言う。それからヘンドさんに言われ席に着いた。わたしとランドは窓際で隣同士で、アリアとハルは一番前の席に座っている。
「さて、新しく加わった子たちもいるし今日は前から言っていた模擬戦をやるよ。準備が出来た子から競技場に行くよ。」
ヘンドさんがそう言うと部屋にいた全員が立ち上がってヘンドさんについて移動を始めた。わたしたちもそれに続いて部屋を出た。移動した先は中庭だった。
「知っての通りみんなの制服には防御の魔導がかけてあるから基本的な攻撃はそれで防げるからね。」
ヘンドさんがそう言った。たしかにこの制服には何かしらが付いているのは気がついていた。
「新しく入った四人はまだ組み合わせが決まってなかったよね。うーん、それじゃあ女は女同士、男は男同士でいこうか。」
「それじゃあわたしはアリアさんとか。それじゃ早速始めて良いの?」
「ええ、と言うより今日は呼び出された子の力を見てみようって言うのが目的だから。」
「そういうことですか。それじゃあ本気でやるのが礼儀かな。」
わたしはそう言うと両腕を胸の前で交差させる。
「戦い慣れているわたしに何処まで持つかな?」
交差させた腕を振り抜くようにしてひらく。すると爪の長さが伸び、頭には獣の耳が。そして四本の尻尾が生える。
「『種族変化』それがこの世界でのわたしの力。」
わたしの姿が変わったことでアリアは少し怖じ気づいた。わたしはそれに関係なく足に力を入れてアリアに向けて飛び込んだ。足下の地面はわたしが蹴った影響で少しえぐれている。勿論そんな勢いで飛び込んでくるわたしに反応できるわけはなく、アリアは立ち尽くしたままわたしに正面から顔を掴まれた。
「・・・はい終わり。」
アリアは顔を掴まれた状態で持ち上げられ、わたしが掴んでいる手を引き剥がそうとしている。
「それじゃ、わたしたちは終わったからランドたちどうぞ~。」
わたしはアリアを掴んだまま歩いて行ってランドたちのために場所を空けた。移動した先で手を離すとアリアがベシャと潰れるように落ちた。そのごランドたちの戦いを見てみようとふりむいたが、驚いたことにすでに決着が付いていた。ランドが手に持った槍をハルの首筋に突き立てている。
「・・・こちらも終わりですね。」
ランドはそう言うと首筋に当てていた槍を砕いた。
「・・・驚きですね。呼び出される人達は力の差があるというものですが、ここまではっきりとしているのは初めて見ましたね。」
「まっそういうものだと思って。」
耳と尻尾をしまうとわたしはランドのそばに歩いて行った。
「さて、予定よりも早く終わったけど部屋に戻りましょう。」
ヘンドさんがそういうと全員が移動し始める。わたしとランドはいまだに腰を抜かしているハルとアリアを担いで部屋に戻った。部屋に戻ったあとヘンドさんが言うにはどうやら今日はこれで終わりらしい。と言うのもここまで早く終わることを想定しなかったらしい。話が終わるとみんなは帰る支度をし始める。わたしもそれに続いて支度をしているとランドが話しかけてきた。
「よし、終わったし行くか。」
「え?早くない?もう支度終わったの?」
ランドの方を見ると鞄を持ってわたしの方を見てた。
「そんなに早くないだろ。・・・もう少しかかるなら先行くな。」
ランドはそう言うと近くにあった窓から外に跳んだ。その行動にわたし以外の全員が驚いた。




