課外授業 1
時空間から飛び出した先は人が横になれるくらい大きい切り株の上だった。そこに二人を寝転がらせると二人とも眼を回して気を失っていた。丁度良い機会だと思い髪型をいじることにした。取りあえず腰辺りまで下ろした髪を首下辺りまで編み込んでいき、前髪は適当に流しておく。それだけ変えていると二人の目が覚めた。
「うぅ・・・ここは・・・?」
「起きたね。見てみなよ、面白いのが見られるから。」
そう言うとわたしは切り株の縁に腰掛けた。足を組んで眼下に広がる光景を見ているとわたしの隣にイルが来た。イルはそこから見える光景に言葉を失っていた。
「これが世界。これが現実。どう?面白いでしょ。」
今わたしたちがいる切り株は少し小高い山の上に位置していて、眼下に広がる惨状はしっかりと見ることができる。眼下には燃えさかる木々、そこから立ち上る黒煙が空を覆っていて日の光も遮られている。少し離れたところには数人の人が地面を掘り返している。
「さっ、ここで見ててもよく分からないでしょ?行くよ。」
そう言って二人の手を掴んで翼を広げる。これだけ世界が混沌としているなら神も天使も下界にいるで堂々と翼を広げても問題ないだろう。土を掘り返している人達の近くに降りるとそのうちの一人がわたしに気がついた。
「あれ?帰ったんじゃなかったんですか?」
そう話しかけてきた。二人の手を離して話しかけてきたやつに近付くとそいつの頭を引っぱたいた。
「痛った!」
「今のわたしと昔のわたしくらい見分けなさい。」
叩かれた頭を抑えながら涙目でこちらを見てくる男。
「そんなの分かるわけないでしょ。イッタイなぁもう。」
目の前で頭をさすっているのはわたしが指導をしていた天使の一人。その後ろにいるのは五大貴族家として名をあげた初代の人達だ。
「仕事の方は?」
「順調ですね。取りあえず四つに土地を分割してそれぞれに分け与えて、指導をするとこまではやりました。今は例のあれを取りに来たところです。」
「あれね。それじゃあ見させてもらおうかな。」
そういうとわたしたちは少しだけ離れた位置に移動した。わたしは空中に浮かんで足を組んだ姿勢で眺めているとイルが先ほど出てきた「あれ」とは何か聞いてきた。
「簡単に言うと一時的な加護だね。今掘り返してる場所にその加護を封じ込めた祭具が埋めてあるの。その祭具を決められた手順で解放すると封じ困られた力が少しずつしみ出していって土地を守るって言うわけ。」
そうこうしていると穴の中から四つの棒が掘り出された。長さは人の腕ぐらいの長さで、その棒を一人一つ受け取ると棒を地面に突き刺した。その突き刺した部分から光が溢れ、そこを中心に大地を光が覆っていく。わたしは二人を抱えると飛び上がった。
「これがこの国の始まり。あの中心をしってるのはここにいる五人だけ。だから絶対他の人に漏らさないでね。」
それだけ言うと天使に向ってクリスタルを放り投げると、時空間を開いてその中に飛び込んだ。ここからはわたしたちがいることで影響が出る可能性があるので、時空間にある屋敷ですることにした。
「また別の場所ですね・・・。」
「ここはわたしの家だよ。ここにいる間は成長の時間も止まるし色々と便利そうだからしばらくはここにいるよ。」
そう言うと目の前の門を押し開いて敷地内に入った。するとすぐにオロチが寄ってきたが、いつもとは違い臨戦態勢になっており突撃のが近いような気がする。
「おかえりなさい、という前に虫ですか?」
オロチの気迫にイルは固まってしまっているし、ヒァリンは腰を抜かして座り込んでしまっている。
「そう脅さないの。今わたしが面倒を見ている子たち。」
「そうでしたか。それならよかったです。」
そういうと今まで出していたものを引っ込めた。その後屋敷のなかに移動したわたしたちはいったん応接室に二人を通した。
「一様紹介しておくね。この子はオロチ。多分イルは知ってるんじゃないかな?」
「オロチです。この屋敷の管理から掃除、食事の用意などをやってます。他にも人手はいますが後々紹介していきます。・・・屋敷を案内しておけば良いですか?」
「そうしておいてくれるかな。シフィアナの様子見てくるから。」
そう言い残すと庭先に出て行った。そこには大きな岩を浮かばせているシフィアナの姿があった。その様子を見ているとだいぶ力の扱い方が上達しているようだ。するとシフィアナがわたしのことに気がついたようで岩をゆっくりと下ろして近寄ってきた。
「お久しぶりです。ティアさん。」
「元気そうだね。力の扱いも順調に上手くなってる。」
「前よりはですね。でもまだまだです。」
シフィアナはそう言いながら小石を自分の指先で浮かしながら笑った。
「それだけ出来ていれば良いと思うんだけどね。そういうところは母親似かな。」
そう話していると庭の方で時空間がひらいて中からチニリエルが出てきた。
「ふぅ、頼まれていたことですがやってきましたよ。どうやら当たりっぽいです。」
チニィはわたしの隣に座ると手に持っていた布から集めてきた物を渡してきた。それを受け取ると一つ一つ確認していく。
「・・・うん、全部そうみたいだね。」
「そうですか。よかったです。」
それからわたしはチニィから受け取った物をクリスタルの結晶で封じ込めると時空の中にしまい込んだ。
「さて、いったん部屋に戻るけどそのまえに少しだけ指導してあげるよ。」
シフィアナは先ほど浮かべていた岩の前に歩いて行くとそれを同じように浮かべた。
「問題なく浮かべてられるね。じゃあ次は地面に着くかつかないかぐらいの高さで維持してみて。」
「分かりました。」
シフィアナは少しずつ岩の高さを落としていき、しばらくして岩の高さは地面に着くぐらいまでになった。
「その状態で維持するのは大丈夫そう?」
「はい。これぐらいなら問題なさそうです。」
「それなら次の段階に行っても大丈夫そうだね。」
いったんシフィアナに岩を下ろさせると、氷塊を生成して岩の横に置いた。
「それじゃ次はこの氷塊を浮かしてみて。多分さっきより長くは持たないと思うからつらくなったらすぐに下ろして。」
そう言うとお手本として氷塊を浮かべて見せた。この氷塊は力を流されるとその力の一部を吸収し続ける特性がある。そのためわたしのように自らの中にある力で浮かべようとしなくても外部にある少しだけの力を集める浮かべることが出来る人はその技術の練習に、外部の力を利用できない人や力の量がすくない者は利用する練習や力を増やす練習になる。
「こんな感じ。いまは分かりやすいようにわたしの中にある力に色を付けて見せたけど岩を持ちあえげる感じで少しずつ高さを上げていくといいよ。」
「分かりました。」
そう言うとシフィアナは氷塊の方に向き直り両手を氷塊の方に伸ばすと意識を集中させて浮かべようとする。氷塊は少しだけだが浮かび上がった。その時シフィアナが一瞬フラついた。倒れそうなシフィアナの身体を背中から支えるとシフィアナの表情を覗いた。
「大丈夫?」
「はい・・・、なんとか。」
「それならよかった。この氷塊は見た目よりも重たいからね。多分岩と同じように浮かべようとすると一気に力が持って行かれるからそれでフラついた感じだね。」
自分の膝を枕のようにしてシフィアナの身体を楽な姿勢にする。しばらくシフィアナの頭を撫でていると昔信愛を撫でていたときのことを思い出した。しばらくその状態でいると回復したようでシフィアナは立ち上がった。
「もう大丈夫?」
「大分回復しました。」
「そっか。それなら今度は氷塊に触れた状態でやってみて。それなら少しやりやすくなると思うから。」
わたしはシフィアナにそう助言を出してから先ほどからこちらを見てきているチニィを連れて自室に向った。




