学園での授業 2
震えっぱなしで顔色も真っ白になっている天使。別に取って食うわけでもないのでそこまで怖がる必要はないと思うのだが。
「ねぇ?なんでそんな怖がってるの?たしかに規則を破ったかも知れないけどわたしはそれを咎めるつもりはないんだけど。」
「え?」
「え?ってそりゃそうでしょ。わたしはこの世界の神というわけじゃないし。」
「そう、なんですか・・・。」
「そうそう。でも、規則を破ったのはあんまり良いことじゃないからね。」
わたしが改めてそう言うと今度は素直に謝ってきた。座り込んでいる天使の横に腰を下ろすとどういう理由で力を貸すことになったのか聞いてみた。すると面白いこと聞くことが出来た。
「わたしは天界で生れたんですが、すぐに下界の方に降ろされてしまってそれからずっと下界で暮らしているんです。わたしが暮らしていた場所には下界生まれの神もいたんです。」
「つまり、天使とか神が暮らしてる町があるってこと?初めて知ったな。」
「当たり前です。人に見つからないように極氷の地の奥地にあるんですから。」
天使が行った街の場所は面白いことにわたしが作った地にあるというのだ。わたしですら気がついていないのだから完全に隠すことに成功している。
「あそこにあったのか・・・。この前行ったのに気がつかなかったな。」
「行ったんですか?あの場所に?」
「そうだよ。元々あそこを作ったのはわたしだしね。」
思い出すようにそう言うと天使は驚いたようなかおをした。あの地が自然に出来たものだと思っていたらしい。
「そうだ。最近生れた神とか天使って知らない?それか行方が分からない奴とか。」
「・・・いますね。最近生れた神なんですが、最初話して以来返答も行方も分からないんです。それで、何でそんなこと聞いたんですか?」
そう聞いてくる天使にいまこの世界で起きていることについて話せるだけ話した。といっても協力者にするつもりなので、わたしがこの世界に来た原因である最高神からの報告とかを話しておいた。
「よし、何か見つかるかもしれないからその街に行ってみるか。良いよね?」
そう言いながら立ち上がるとしょうがなしといった感じで天使も立ち上がった。それから天使はしまっていた羽をひろげる。わたしもしまっていた羽を開いた。
「・・・こうしてみると差がはっきりとしてますね。」
天使は自分の羽とわたしの羽を見比べるようにしてから少しだけ落ち込んだ。正直羽が大きかろうと小さかろうとそこまで大きな差はないと思うが、まぁ攻撃手段の一つとして使う場合は関係するだろう。それに、わたしたちの羽は見た目だけではなく今回みたいに肉体がある時だと何故か肉体内部に力が溜まってしまうので、時々羽を伸ばして置かないと不快感が残ってしまうのだ。まぁこれが起こるのはごく一部の者だけだが。出発しようとしたときふとイルとの約束を思い出した。
「あーそういえば約束があるんだったな。・・・仕方ない代理を寄越すから少し待ってて。」
わたしはそう言い残すと時空間から出た。出た先はみんながいる部屋の二階になる。
「お待たせ。さて始めようか、といいたいところだけど少しだけ待ってて。」
そう言うと神殿にいるはずのチリニエルにつないだ。すると予想通りすぐに繋がった。
『お呼びでしょうか。ご主人様。』
「ええ、少し手伝ってほしいんだけど。時空間入れる?」
『分かりました。すぐ行きます。』
チニィがそう言ったのを確認するとわたしは時空間の中にクリスタルだけを放り込んでチニィがそれを拾うのを待った。
「えっと・・・、何かあったんですか?」
「ん?気にしないで。すこし調べ物があったんだけど、それを他の奴にお願いしてるだけだから。」
イルにそう言っているとクリスタルから声が聞こえてきた。手短に用件だけ伝えるとチニィも理解したようで分かりましたと返答が来た。
「さて、今度こそ始めようか。取りあえず二人はこの国の歴史についてで良いね?それでランリはさっき話したやつ教える感じで良いかな?」
そうきいてみると三人とも大丈夫らしい。
「多分ランリはすぐ終わると思うから先そっちからやるか。二人はこの本読んで待っててほしいな。」
イルたちの前に本棚から取ってきた本を置いてからランリのほうに向き直った。
「さて、まず理解しておいてほしいことがあるからそこから話すね。そもそも召喚体との契約行為自体わたしたちが教えたものじゃないの。契約については教えてあったから、そこから工夫してやったのかもね。」
「なるほど。基礎は教えたけどそこから発展させたのはわたしたちと言うことですか。」
「そういうこと。ここから本題に入るけど、契約のしやすい召喚体と契約のしにくい召喚体がいるのはその人が持つ力の大きさも関係するけど、その他にも関係してくるのが生れた環境が取り巻く力になるかな。あんまり詳しく言えないんだけど、調整がおこなわれてたくらい昔にこの国は色々な天使とか神が力を使いまくった影響で土地自体に力がしみこんでたりするの。その影響をどれくらい受けるかで差がついてるみたいだね。」
「・・・そんなことが関係していたとは。驚きです。」
「これ以上は話せないから。この話を立証するには色々な土地でそこにある力を調べるのが一番早いかな。」
「分かりました。こんど時間が出来たとき調べてみます。」
そう言うとランリは本棚にあった国の地図を引っ張り出してきて、その地図とにらみ合いながら今までの研究と照らし合わしていた。すこしだけ今までの研究を見せてもらうとこれまで学園に通っていた生徒の出身地などがまとめられていた。他にも優秀な成績を持っていた生徒がもつ力の適正の種類などもまとめられていた。これでランリの方は大丈夫だと判断してこんどはイル達の方に移った。
「二人とも、読んでて気がついたことはある?」
そう聞いてみたところ、二人ともよく分からないと言うことだった。反対側からのぞき込むようにして本を見てみると最初から数枚めくった辺りで止まっていた。
「まぁそうなるよね。それじゃ最初から話すよ。それと、わたしの教え方は少し変わってるからしっかりついてきてよ。」
そう言うと二人の手を取って立ち上がらせた。
「ランリ、今から一瞬だけわたしたち消えるから。」
「はーい。」
ランリはそう答えながらも手元の地図と睨み合っていて、こちらを見てこない。そんなランリの姿に少し苦笑いしながら二人の手を掴んだ状態である場所に飛んだ。その場所は時空間にあるもう一つのわたしの空間。わたし以外知らない世界を創り、世界を消すことが出来る唯一の場所。その場所の真ん中にある空中に浮かんでいる半透明な台のようなところに降り立った。
「ここは・・・。」
「全てが生れた場所。世界を形成する惑星が生れる源であり、わたしたちのような存在が生れた場所でもある。」
そう言いながら端の方まで歩いて行く。そこまで行くと広い視界が確保でき、下を見れば遙か先まで続いていて、下の方は光が届いていないようで真っ暗になっているが上の方は光の影響で天井が見えない。
「・・・すごいでしょ。ここにはわたしの知っている全ての世界が集まってるの。といってもわたしが直接管理してるのはほとんどないけどね。」
そういうとずっと立ち尽くしていた二人の手を取り台の上から飛び降りた。真っ逆さまに暗闇野底へ落ちていく。わたしが手を握っている二人は悲鳴を上げながら落ちている。
「さて、授業の始まりだよ。」
そう言って時空間を開くとその中に飛び込んだ。




