学園 イル 17
ミカさんの話に何故か真剣な顔で聞き入っていたお父様。話が一区切りしたところでお父様が話し始めた。
「手がかりになるかは分からんが、少し前に神の力を増幅させる指輪というのを売りに来た男がいたらしい。わたしが対応したわけではないが話し方がこの大陸のものではないとのことだ。」
お父様の話に今度はミカさんが食いついた。
「興味深いね。わたしたちでも難しいことなのにそれを人がやるか。」
するとミカさんがお父様のそばに移動して額に指を当てた。ふれあっている部分がかすかに光った用に見えたが、ミカさんが指を離したので消えてしまった。
「ありがと。参考になったよ。」
ミカさんはそう言い残すと身体を粉々にして消えていった。ミカさんが消えたところにはクリスタルが転がっていた。
「さっきの人とラダールはどういう関係なんだ?」
クリスタルを拾った俺に兄様がそう聞いてきた。
「力の使い方や基本的な技術とかを教えてくれた謂わば師匠のような人です。それと同時にミカさんの目的が達成するまでの期間はわたしのことを守るという契約をしている関係でもあります。」
「守る?それは何処までの範囲で守ってくれるんだ?」
「何処まででもです。」
おれがそう答えると兄様もお父様も驚いたようなかおをした。そこで俺は自殺は範囲外ですけどねと付け加えて置いた。
「それと今のわたしのは前の世界で持っていた加護も受け継いでますね。」
俺はそう言いながら前の世界で言う加護について説明した。前の世界では住んでいた場所が周りを海に囲まれた地だったため人魚族の加護がないと普通に生活が出来なかったのだ。それを説明するとお父様は少し考えるような仕草をした。
「なるほどな。召喚体との契約でまれに得られる能力のようなものか。」
お父様はそう呟くように言った後わたしには理解できんといって笑った。だが、その目にはなぜか満足そうな目をしていた。それから俺と兄様は部屋を後にするとそれぞれ自分の部屋に向った。部屋で待っていたヒァリンはすぐに俺の腕を取るともう離しませんといって俺の顔を見た。するとどこからともなく声が聞こえてきた。
「お取り込み中に申し訳ないね。少し良いかな?」
そう言いながらミカさんが現れた。ミカさんの格好は端から見ればただの一般人のような服装だが、さすがにその容姿は隠しきれていない。
「良いですけど・・・よかったんですか?ここにはわたしだけではないんですが。」
そう言いながら俺の腕にしがみついているヒァリンを見る。
「問題ないでしょ。最悪記憶を調整しちゃえば良いし。それよりも面白いことが分かったよ。」
そう言いながら何処から取り出したのか紙を数枚空中に浮かべて見やすいように広げた。そこに書かれていたのはどうやって調べたのかあの家がしてきた過去の行動や未来の行動などが事細かに書かれていた。それによるとこの国とは敵対関係にある隣国がこの国を攻めようとしているらしく、それを利用して神聖力の力を認めさせようとしているらしい。
「この情報はどこまでの人が知ってるんですか?」
「動きから見て王族の一部は知ってるみたい。協力の動きも見せてたし。」
「なるほど・・・。いつ攻めてくるかは教えてくれないんですか?」
「それを教えたら面白くないでしょ?わたしたちは答えを教える存在じゃないんですもの。」
ミカさんはそう言い残すと消えていった。それまで腕にしがみついていたヒァリンは腰が抜けたのか座り込んでしまった。青い顔をしたヒァリンのそばに屈むと顔をのぞき込んだ。
「何ですかあの人は・・・。」
何故かヒァリンは身体を震わせて自分を抱きしめるようにしている。
「あの人、消える直前笑ってた・・・。信じられないぐらい黒い笑顔でした・・・。」
「大丈夫だよ。あの人はわたしたちの味方です。」
俺はミカさんと長いこと繋がっているので特に気にしていなかったが、ミカさんは神に違いはない。その片鱗ですら見ただけでヒァリンのようになってしまうのだろう。ようやく立ち上がったヒァリンを連れて学園に向う馬車に乗り込んだ。学園についた俺達はさっそく頼んで置いた一つの部屋に向った。学園長室の隣の隣、空いていた部屋に家から必要な本や地図などの持ち出しても問題ないものの複写を部屋に並べて置いたのだ。もちろん足りないものもあるのでそういったものは学園の図書館から借りるつもりだ。
「さて、ここが借りた部屋のはずなんだけど・・・。」
部屋の前には何故か人が集まっていた。何か嫌な予感がした俺はいったん学園長の部屋に転がり込み、扉の影から学園長と一緒に覗いていた。
「あれなんですか?」
「どうやらおぬしらに貸し出した隣の部屋に王子が部屋を借りたらしくてな。その部屋でやっているのが王子とお茶会をしながら勉強するというものらしい。一様勉強するという名目だし、拒否する理由がなくてな。」
よく見ると集まっているのは俺達が借りた部屋の一つ手前で俺達の部屋の前にいるわけではなかった。
「そういうことですか。まぁ邪魔さえなければ問題ないですよ。」
おれはそう言うとヒァリンを連れて集団の脇から自分の借りた部屋に入っていった。ちらっと見えたその部屋には煌びやかに装飾された家具が綺麗に並べられ、勉強が出来るとは思えないような空間だった。
「うるさくされなければいいかな。」
部屋に入ったおれは呟くようにそう言った。改めて部屋の中を見渡してみる。広めの部屋を頼んでおいたが、貸してもらった部屋は二部屋分の広さと二階があり、部屋の半分は吹き抜けになっていてその半分が二階になっている。吹き抜けの壁には天井付近まで本棚が置いてあり、その反対にある一階の壁には黒板がついている。二階にはソファやテーブルを挟んで向かい合わせに置いてある。二階に上がるための階段は部屋の真ん中に螺旋階段として作られている。
「何も言われなかったんでしょうか・・・。」
ヒァリンがそう言いながら部屋の中を見てまわっている。すると本棚の前で立ち止まった。
「この本ってイル様が持ってきたんですか?」
「半分はね。残りはこの学園にあった図書館から借りてきて置かせてもらってるのと・・・。」
ふと俺は本棚の上の方を見上げる。ヒァリンもそれにつられ見上げる。するとそこには何冊も積まれた本を器用に片手で持ちながら空いている本棚に空中で入れていくミカさんの姿だった。
「あとはミカさんが持ってる本から選んでくれたやつだね。」
手で持っていた本を全て本棚にしまい終えると頭を下にしておれとヒァリンに前で留まった。
「わたしが持ってるやつは一冊だけの他にはないやつだけどね。」
ミカさんはそう言うと姿勢を戻して俺達の前に降り立った。今回ミカさんには色々と教えてもらうのに都合が良いという理由で先生をお願いして置いたのだ。空中を部屋中障害物関係なく移動している姿は他の人に見せられないが。
「教えてほしいのはこの国の歴史でいいんだよね?世界の歴史じゃなくて。」
「そうですね。可能ならこの大陸全土の歴史が知りたいですね。」
俺がそう言うとミカさんは少し困ったようなかおをした。再び浮き上がると本棚に置いた本を取って浮きながら話し始めた。
「教えることは出来るけど・・・、時間が足りないかもしれない。出来るだけまとめてあるこれでもこんだけあるんだから。」
そう言って見せてくれたのは鈍器として使っても十分効果を発揮しそうなほど分厚く大きい。たしかにこれでは時間の方が足りないだろう。
「睡眠学習もあんまり効率的とは言えないしね。本当に知りたいならかなり時間取ることになるけど、どうしたい?」
ミカさんがそう聞いてきた。
「・・・可能な限り教えてください。時間が許す限りはここにいるようにします。」
「了解。まかせときな。」
ミカさんはそう言って笑った。




