学園 イル 15
俺達は再び談話室に集まっていた。今回はそれぞれの当主や次期当主に話した結果を報告し合うのが目的だ。といっても学園に関することに家が入るのはあまり良いことではないので俺達で解決するのが一番だろうという話にまとまった。
「予想はしてたけどね。どうするべきか。」
紅茶を飲みながら俺達が話しているとタルイドがふと思いついたように話し始めた。
「いっそのことあいつに近付いちまえば良いんじないか?ヒァリンは婚約者だからあんまりいい気はしないだろうが、情報を手に入れるならこれが一番早いだろ。ついでに王族に関する情報も入りそうだしな。」
タルイドの言葉に驚いたが、たしかに一番早く情報を手に入れることが出来るだろう。だが、それをするためには色々と準備が足りていない。
「それがよさそうかな。ヒァリンは大丈夫なの?もし嫌だったら言ってよね。」
コーリア姉さんがそう聞いたがヒァリンは首を振った
「大丈夫です。ラダールくんからはこれを受け取っているので。」
ヒァリンはそう言うとおれが送った腕輪を見せる。それを見たコーリア姉さんは安心したような顔をした。
「どちらにせよあまり近付きすぎないようにはします。仲のよい友人ぐらいで行けば問題も無いと思いますし。」
そう言いながらヒァリンの頭を優しく撫でる。ヒァリンも俺の方を見て笑顔を浮かべている。
「相変わらず仲の良いこと。それだけ仲良かったら大丈夫そうだね。」
「タルイドさん・・・俺っている意味あったんでしょうか。」
「メリトも近付かれるかもしれないから一様聞いておいてもらった方がよかったんだろう。」
メリトのつぶやきにタルイドさんがそう返していた。すぐに行動を起こすわけにも行かないので学園と平行で準備を進めていった結果いつの間にかかなりの時間が過ぎていた。その間に俺達がやったのはそれぞれの五大貴族家に行動の内容を伝えることとその許可をもらうこと。この辺りは特に問題なく進んだが、それを五大貴族家の家族の説明するのが難しかった。まぁ最終的には納得してもらったが。
「今日は一緒に来られて嬉しいです!」
俺の隣でそう言って笑うのは家紋を持たない五大貴族家のあいつだった。
学園の終年生を除いて一番上の学年になった俺は授業の一環として軽い依頼を受けることになっている。それには数人、別の科から人を集める必要がある。そこで少し前からある程度の関係を持つようになったこいつを誘ったところ何故か王子まで着いてきてしまった。
「まったく、俺が来てやったんだから感謝しろよ?」
何故か上から目線の王子は置いて置いて紹介状を持って目的の建物に入った。そこにある受付で紹介状を渡すとそれを読んだ受付の人が説明してくれた。
「学園の生徒さんが依頼を受けるには他の登録されている方が付き添う必要があります。その方はご自身で見つけていただく必要があるのでご注意ください。この建物内にいる人なら誰でも大丈夫ですので。」
説明を聞き終えた俺達は建物中にいる良さげな人を探し始めた。そこで俺の目に留まった人が一人いた。その人は長い銀髪を自由にさせながら机に突っ伏して眠っている人だった。おれは肩に留まっているガリバルドに頼み氷を生み出してもらった。その氷を突っ伏している人の首に落とす。
「うっひゃぁ!!」
落とされた人はそんな声を上げながら立ち上がった。背中に入った氷が肌に触れないように身体を反らしている。服の下に手を入れ氷を取り出したその人は俺の方をふて腐れたように見てくる。
「もう少しましな起こし方があったんじゃないの?」
そう話したその人、たしかリアルと呼ばれる悪魔だったはずだ。まえは声が少し男らしさが残っていたはずだが今は完全な女のそれになっている。
「声変えられたんですね。」
「こっちのが不自然じゃないからだって。まったく。要件はあれでいいのか?」
もしかしたらミカさんから話を聞いていたのだろう。リアルは服を整えると受付に向っていく。俺もそれに着いていく。ささっと受付で手続きを済ませると早速依頼を受けて出発した。
「今あいつは自分の仕事をやるためにこの世界にはいないからな。その間は俺が守るように言われてる。」
街を出て街道を歩きながらリアルとそんな話をしている。隣にはトタトタとガリバルドが元の大きさで歩いている。その後ろを残りの二人が着いてきている形だ。
「あの!お二人はどういった関係なんですか?」
後ろを歩いていたあいつがそう聞いてきた。
「どういった関係ですか・・・。なんて言えば良いんでしょうか、わたしの・・・師匠?の契約者?ですかね。」
「が一番近いかもな。契約者の契約者が正しいかもしれんが。」
少し考えながらそう言ったがよく分かっていない様子。その時森から矢が飛んできた。飛んできた矢をリアルは手で掴んで止め、俺は腰から抜いた剣で切り落とし、残りは全部ガリバルドが羽を動かしただけで相殺した。
「敵かな?どうするんだ?」
「面倒くさいですが、これも依頼の一部です。片付けるしかないでしょう。」
そう言うと俺はガリバルドの背中に跳び乗った。そのまま空中に飛び上がり森の上から矢を撃ってきたやつの位置をクリスタルでリアルに伝える。それを聞いたリアルさんはすぐに森の中で暴れてくれるので倒すのに苦労はしなかった。
「終わった?」
ガリバルドを降ろすと森から出てきたリアルが手に着いた血を落としながらそう聞いてきた。
「見える範囲は終わりましたね。これで依頼の半分は終わりですね。あとは・・・。」
ガリバルドの背から降りた俺は街道のそばに生えている薬草を見定めながら数株抜いて依頼袋に入れた。
「これで終わりですね。」
依頼袋を腰に提げて帰ろうとしていると後ろから声をかけられた。そこで今回俺達だけで来ているのでないのに気がついた。
「あの・・・どうしてそう動けるんですか?」
「そりゃあ死ぬかもしれないからでしょ。逆にここいらであれに襲われるとはな。」
「そうですね。もしかしたら選ぶ人を間違えたかもしれませんね。」
「どういう意味だ?」
俺とリアルの会話に王子が反応してきた。おれはガリバルドの背中に乗りながら答えた。
「先ほど矢を撃ってきたのはゴブリン種。あいつらは自分より強いやつには攻撃しない。実際飛んできた矢はわたしやリアル、ガリバルドには当たらない軌道でした。その代わり、お二人には確実に当たっていましたね。だからこそわたしたちが遮ったんです。」
その事実に驚いたようなかおをしている二人。俺はリアルに頼んで二人を残し先に街の飛んで戻った。その後リアルの話では落ち込んでいたのか一切会話がなかったそうだ。
翌日俺が食堂で借りてきた本を読んでいたとき、そいつは何事もなかったように俺の前に座った。
「ラダールさんはその師匠さんとは何処で知り合ったんですか?」
相変わらずの人気のある笑顔でそう聞いてきた。
「何処でもないですよ。いつの間にか知り合っていて、いつの間にか教えてもらっていました。」
当たり障りのない答えをしながら目線は開いている本から外していない。
「そうなんだー!わたしも教えてもらえないかな!」
「まず無理でしょう。」
教えてくれないかと聞いてきたそいつに間髪入れずそう答える。
「それならラダールさんが教えてくださいよー。学園で学ぶことは全て終えたんでしょ!」
「仕方ないですね。それじゃあ、この後学園にある塔の上で待ってます。すぐに来ることが出来たら教えてあげますよ。」
おれはそれだけ言うと本を閉じて食堂の外に出た。そこでガリバルドを呼び出してその背に乗って塔のうえに移動した。
「ここまで上がってこれるのか?」
塔の上にある柵から外に足を投げ出して腰掛けていると隣に小さくなって留まったガリバルドが聞いてきた。
「予想が正しければ難しくないでしょう。階段もないここに来るには空を飛しかないですがあいつは空を飛べると思うので。」
しばらく待つと俺の後ろで足音がした。振り向くことなくその足音の本人に聞いた。
「疲れましたか?ここまで上がってくるのは。」
「大丈夫です。飛んできたので!」
そいつは隠すことなくそう言った。空を飛ぶことが出来るのは人間では出来ないと知らないのか。
「そうですか。飛んできたんですね。」
「はい!どうです!?すごいでしょ!」
俺はおもむろにクリスタルをそいつに見せた。
「知っていましたか?普通人間って空を飛べないんですよ。空を飛べるのは翼を持つものだけ。人間が空を飛ぶようになるには禁忌の術を使うしかない。しかも禁忌の術は使用した瞬間即刻捕まるんですよ?」
「え・・・。」
「どういう方法で空を飛んでいるかは知りませんがこの発言は全て録らせてもらいましたから。これがあればあなたの家を落とすことが出来ますよ。邪魔な家をね。」
俺はそれだけ言うと塔から飛び降りた。ガリバルドの足に捕まった俺はそのまま寮にある家に戻った。それから家に手紙を書き数日後五大貴族家の集会を要請した。




