悪魔との旅路 7
リアルの伝言を頼んだわたしは帰ってきたリアルから報告を聞いていた。それによると大きな騒ぎはまだ起こっていないそう。それならばと言うことでリアルを天界に残してイルの住む街に降り立った。今わたしがイルのもとに戻るのはすぐに動けなることを考え、やめている。ティリアによるとこの国にある神の力を持ったものは全て無事だそう。だが、この世界にわたしが来たことで神の力を吸収し、もしかしたら標的になっている可能性を捨てきれないので街人に扮して確認に行くことにした。
「ここかな?」
神の力をたどりながらたどり着いたのはこの国にある一番大きい教会の隣に小さく立っている教会だった。その扉を押し開いて中に入るが、教会の中にはここに来ている人の姿はなく、おじいちゃんぐらいの男が教会の掃除をしていた。
「おやおや、ずいぶんと若い方が来られたものだ。ここは大教会ではありませんぞ。」
おじいちゃんは壁際に置かれた像の足下を拭きながらそう言った。よく見るとおじいちゃんの頭には小さいが獣人種の特徴になる耳が生えている。
「ここが目的ですから、間違っていませんよ。」
わたしはそう言いながら像の近くまで歩いて行った。像は少し見上げるぐらいの高さしかなく、一般的なものと比べてかなり低い。しかし、細かく作られた像はこの世界の最高神を忠実に再現されていた。
「うん、よく再現されてる。」
わたしはそう言いながら像の顔に指先で触れた。その言葉におじいちゃんは驚いたような顔をした。
「再現されているですか。どうしてそう思われたのです?」
像を拭く手を止め、わたしの顔をじっと見ながらそう聞いてきた。わたしはその顔をチラッと見てから像に触れていた指を離し、そのまま歯を見せた。
「外見人間の亜人もかなりいるんだよ。それも年を取ってもほとんど見た目が変わらない種だってね。」
わたしの長い犬歯を見ておじいちゃんは驚いたような表情をしたが、すぐに納得したような表情をした。
「なるほど、亜人種の方でしたか。」
「あなただってそうでしょ?」
「ええ、まぁわしの場合はまだまだ子供の時にあのお方の姿を見ただけなので、記憶に差異はございますがな。いつ見たのかお聞きしても。」
おじいちゃんは手に持っていた布を畳んで教会にある椅子に腰掛けた。わたしもその隣に座ると話し始めた。
「女性にそういう年齢が割れそうな質問はしないのが常識だよ。」
「それもそうですね。失礼しました。」
「まぁ、あいつのこと知ってる時点で相当な年齢だけどね。わたしは調整者の一人だよ。」
そう言いながら笑いかけるとおじいちゃんはこれまでで一番驚いたようなかおをした。
「調整者ですか・・・本当に存在したんですね。」
「今では幻だもんね。こうやって人前に来るのもいつぶりか。」
そう言いながら両手を組んで上に伸ばし、思いっきり身体を伸ばした。それから立ち上がるとおじいちゃんの方に向き直り真剣な声で話し始めた。
「少し前に神の力を持つ物が同時に盗まれたらしいの。もしかしたらここにあるのも盗まれるかもしれないから注意しておいて。それと、わたしが来たことは秘密にしておいて。」
「承知いたしました。命に代えてでも守り抜きましょう。」
おじいちゃんがそう答えてくれた。わたしは最後に像の胸に埋め込まれた白い半透明な宝石に触れると教会をあとにした。それからわたしは宿屋に寄って宿泊の手続きをしておくと、近くにあった酒屋に向かった。酒屋の中には色々な人が集まっており、丁度仕事終わりの時間と重なったらしく仕事の服で飲みに来ている人もいた。その人達の脇を通り、机を挟んで向かい合うように椅子が置かれた二人がけの席に座った。やってきた店員に手早く注文を済ませると腰に提げたポ-チからクリスタルを取り出し見つめていた。
「お前はいったい何処の誰なんだ?何が目的で力を与えた?」
意味の無いことだがクリスタルに語りかかけるように小さく呟いた。丁度店員が頼んでいたお酒を持ってきたのでクリスタルをしまい運ばれてきたお酒をゆっくり飲みながら周りで話している言葉に耳を向けた。ここならそれらしい情報が手に入るかと思ったが少し考えが甘かったようだ。酒屋で話し合っているのはただの日常会話。そのままお酒を飲んで帰ろうと考えていたときわたしの前に一人の男が座った。
「一人か?」
「見れば分かるでしょ。それと、口説くんだったら別を当たって。わたしにはもういるから。」
それだけ言うとささっとお酒を飲み干して席を立った。お金を払ってから酒屋を出たが、宿屋までの帰り道に数人の男達に囲まれた。
「何か用ですか?」
「そうだな、用があるのはお前の身体だな。そんな服で誘惑しといて、手を出さずには入られないだろ。」
今のわたしの格好はコ-トを脱いで両肩の素肌が見えている状態。なので、わたしが誘惑していると思ったのだろう。男達は少しずつわたしのほうに近付いてきたが、面倒くさいので男達全員に幻覚を見せてこの場を離れた。その後こいつらがどうなったかは知らないし興味もない。宿に着いたわたしは借りた部屋に入ってすぐに眠った。さすがに半分肉体があると疲労も溜まるので時々こうして寝ないといざというとき動けなくなる。この日はぐっすり眠ってたまっていた疲労も全て吹き飛んだ。それから宿代を払って宿を出る。
「さてと、これからどうするかな-。」
街の通りを歩きながらそう呟いた。そこで思い出したのはたしか旅人の証があれば依頼を受けられることだった。早速わたしはその依頼が受けられる場所に向かった。大通りに面した場所に建物があったのですぐに分かった。
「依頼を受けたいんだが。」
わたしは建物の中にある受付で旅人の証を取り出しながらそう言った。旅人の証を受け取った受付の人はその旅人の証を確認するとどんな依頼を受けたいか聞いてきた。今回わたしは特に目的があるわけではないので適当で良いというと丁度出発するグループでの依頼が一人だけ空きがあるらしい。そこに入れてもらうことになり、出発にために急いで準備をした。といっても必要な物は全て収納してあるのでコートを着て武器を手にしただけだが。準備を終えたわたしはそのグループの元に向かった。街の出口近くにいるらしいのでその辺りで探すとすぐに見つかった。
「お、あんたがさっき言われた参加者だな。よろしくな。」
近付くわたしに気がついた男がそういって笑いかけてきた。集まっていたのは合計五人。男性二人女性三人のグループで見たとこ20歳位だろうか。
「急な参加、受け入れてくれてありがとね。」
「気にすんなよ。俺達は今日が初めてだからな。少しでも知識がある人がいた方がこっちとしてもありがてぇからよ。」
そう言った男達のグループの構成員の中に一羽の鳥が含まれていることに気づいた。その連れている鳥を見たわたしは思わ口から出てしまった
「死神鳥か・・・。」
と。そのつぶやきを聞いた男が首をかしげた様子でどういうことかと聞いてきた。どうやら死神鳥じたいを知らない様子だった。それに驚いたが知らないなら死神鳥を連れていることに説明がつく。
「まぁいいや。何でも無いよ。それより行くよ。」
わたしはそう言って森の中に入っていった。依頼の内容は簡単な採取依頼なのですぐに終わるだろう。だが、この依頼を受けたとき受付の男が抱いていた感情が濁っていたこととわたしが建物を出た後に何やら賭け事をし始めたので何かしら裏があるだろう。
「みんなは何処の出身なの?」
森の中を進んでいる途中わたしは腰の後ろに手を回し、後ろ向きで歩きながらそう聞いた。
「さっき出発した街からほんの少し行った場所にある村です。」
「そっかー。わたしは白の極地っていう場所出身だからね。まぁこっち来たばかりは熱くて仕方なかったね。」
そんな意味の無い会話をしているときふと森の中から血のにおいがすることに気がついた。それを伝え血のにおいをたどる。たどった先にあったのは三つの肉塊が転がっていた。その光景を初めて見たのであろう奴らが思わず目をそらした。さらに女二人は吐いてしまっている。吐かれると肉塊にした奴らに匂いで気づかれるのでやめてほしかったが仕方ない。
「えーっと・・・何処にあるかな・・・。」
肉塊に手を突っ込み生々しい音を立てながら証を引き抜いた。赤くなった証を振ってついている血を落とし、手についた血は舐めとる。残った肉塊は狼の姿になって私の腹に収めた。
「これからこの仕事を続けていくなら覚えておきな。死んでも丁重に扱われることなんて無いから。証さえとってしまえばあとは自由だしね」
口についた血を拭いながらそう言った。それから再び森の中を進み依頼物を集め終えると帰路についた。その途中わたしたちはゴブリン種に襲われることになった。




