島 イル 11
学園を出てしばらく、俺達は草原の上を飛んでいた。この頃になるとランリ先生も慣れてきて周りの景色を楽しめるぐらいにはなっている。ふと下を流れる草原に目を向けるとその草原を走る大きな三つの影があった。一番先頭は翼を広げた姿で超低空を白い線を引きながら飛んでいる鳥で、その後ろを
身体の倍はある尻尾を揺らしながら二本足で走る動物。最後を走っているのはメリトのサラマンダーだった。
「ランリ先生、あれって多分うちのクラスの奴らだと思うんですけど。」
「ん?どれどれ?」
ランリ先生はそう言いながら俺が指さす方をのぞき込む。
「多分そうだね。そうだ、少しあの子達に近づくことって出来るかな?」
「出来ますよ。」
ランリ先生にそう言われ、俺はガリバルドに指示を出す。すると、ゆっくりと高度を下げながら近づいていく。次第に大きくなる走っている三体。その背に乗る三人も俺に気がついたようでこちらを見ている人や手を振っている人などがいる。
「おーい。」
後ろを走るメリトがそう言って手を振っている。そちらに近づいてメリト達の少し上を併走する形で飛ぶ。
「やっぱり空飛べるっていいな。もう追いついてきたのか。」
そう言いながらガリバルドの方を見る。すると俺の後ろに座っていたランリ先生が身を乗り出してメリト達に話しかけた。
「ねぇ、もう少し向こうに行くと街があるんだけどそこに寄らない?他の生徒達の中継地点になってるから休憩がてら寄ってもいいと思うの。それにイニット先生にも伝えたいことがあるから。もちろん食事も出来るからそのお代はわたしが払うからさ。」
ランリ先生はそう言うと前方を指さした。その方には確かに街が見えている。俺達としてはどちらでもいいが、休憩がてらならいいかと言うことでその街に向かうことにした。メリト達と同じ速度で飛んでいればすぐに街の入り口が見えてきた。街の入り口前には数台の大きな馬車が街の中に向かって進んでいたが、俺と先頭を飛んでいた子はそのうえを飛び超し街の中へ。メリト達は馬車の横を走り抜け俺達が着地した場所に来た。
「さて、わたしはイニット先生と話してくるからちょっと待ってて。」
ガリバルドの背から降りたランリ先生はそう言って先ほどの馬車がいたほうに走って行く。その間俺達は召喚体の身体を撫でたり用意していた食事を与えたりして待つことにした。
「そういえば、メリト達はどうしてあんな一列で走ってたんだ?」
「ん?ああ、俺とイゲイルは偶然一緒になってそこから一緒に向かうことになったんだ。そしたら前を飛んでたのがクレオで、その後ろを俺達が付いて走ってたわけ。クレオの召喚体が飛ぶところは俺達にとって走りやすい地形だからな。結果あんな一列で走るような感じになったわけ。」
イゲイルとクレオと呼ばれた二人の男生徒。イゲイルは顔が鳥種に近い顔をした二本の太い足と小さな前足を持ち、その身体より長い尻尾が特徴のリアリンス種を召喚体として契約した子で、たしか小さいながらも貴族家出身の子だ。対してクレオは庶民家出身だが、灰色の大きな羽と二股に分かれた指を持つ二本の足そして特徴的な筒状の尾羽が後ろに伸びているエプクラン種と契約している子だ。エプクラン種はその特徴的な尾羽から胸にある吸気口から取り入れた空気を力を練り込んで勢いよく噴射することで鳥なのに羽ばたかず飛ぶことができ、超低空を進む珍しい種族だ。ただ、高度が上がると風の影響で体勢を崩しやすい。なので、平坦な場所を本能的に探し出して飛ぶ習性がある。平らな場所はメリトのサラマンダーやリアリンスといった地上を駆ける子達にとっても走りやすい地形なのでそういったことが起きたのだろう。
「なるほどね。まぁ、仲が良さそうでよかったよ。」
「ラダールくん一直線で飛んできたんでしょ?やっぱり空飛べる子がいれば便利なことには違いないじゃん。」
イゲイルはリアリンスにお肉を与えながらそう言った。クレオもエプクランの羽を整えながら頷いている。
「あはは、まぁ否定はしないかな。」
そんな話をしているとランリ先生が戻ってきた。その後ろにはイニット先生と他の生徒達が付いてきている。
「お待たせ、じゃあなに食べよっか。」
「お任せしますよ。」
俺が四人の代表としてそう言うとランリ先生は笑って付いてきてと言い歩いて行く。俺達もそれに付いていくとイニット先生も一緒に付いてきた。
「お前らってここによる予定あったか?」
「いや、無いな。ランリ先生が寄っていこうって言ったから来ただけだ。」
「多分他の子達はもう目的地近くまで言ってるかもしれませんね。」
イニット先生が聞いてきたことにメリトが答えた。
「やっぱはえーな。いつ出てきたんだ?お前ら。」
その質問に少し考えているとクレオが答えた。かなり正確な時間だったことに驚いたが、昔から家の手伝いをしていたら大体の時間を把握できるようになったらしい。
「そういえば、お前ら島にはどうやって渡るんだ?さすがに海は渡れんだろ?」
イニット先生の質問に俺達四人全員が首を振った。
「たぶん、うちのクラスで海を渡れない人はいないかと。ラダールくんやクレオくんは飛んでいるから関係ないですし、わたしやメリトくんなら海ぐらいなら走って渡れると思いますよ?後の子達は大体が空を飛べる子とか、海を泳げる子ですし。」
イニット先生にそう言うと驚いたようなかおをした。それから少し考えるようなかおをしてから一つ質問をしてきた。
「ホーンハンプはどうなんだ?たしか二人ぐらいいたよな。」
ホーンハンプは人が乗れるぐらいの大型の動物で、二本の角とふわふわの体毛で騎乗用に調教できるほど人になれることがある。ただ、契約した場合とは違い本来持つ力を出すことが出来ないように制限を掛ける必要がある。うちのクラスにはホーンハンプと契約している子が二人いて、たしか出発も二人で一緒に出て行っていた。
「どうでしたっけ。ラダールくん分かる?」
イゲイルはそう言いながら俺の方を見た。思い出そうとしているとランリ先生が目的地に着いたのか立ち止まった。それから後ろを振り返って声を上げる。
「それじゃあ、今日のご飯はここで取るから。お代は学園が持つからこの建物の中にある飲食店ならどれでも食べていいよ。」
後ろを見ると他の生徒達が付いてきていて、その声を聞いてからどんどんと建物に入っていく。全員が入ったのを見てから俺達の方を向いて先ほど生徒達の入った店の向かいにあるお店に入った。お店の中で席に着いた俺は先ほどに質問に答える。
「ホーンハンプでしたね。たしか、あの子は足の先から空気を凍らせるぐらいの冷たい冷気を放っていて、それを足場にして移動しているらしいんです。なので海ぐらいなら渡れると思いますよ。それに隣の国だとホーンハンプの渡りって言われておめでたいこととしてるみたいですし。」
昔、父様の付き添いで港がある隣の国に行ったときその行事を見せてもらったことがある。その時説明されたのが今のことだった。俺がそう話すと、イニット先生が何のようで言ったのか聞いてきた。
「商談ですよ。まぁ、その商談は成立しませんでしたが。剣を売りたいって話だったんですが、さすがに十本五金貨は安すぎて信用できなかったみたいですね。わたしでも分かるぐらいです。」
そういいながら机に置かれたお水を飲む。机に座った人達はメリト意外が何故か驚いたような顔をして固まっている。
「十本五金貨って高すぎねぇか!?」
イニット先生はそう言って驚いた顔を続けている。
「そんなことねぇだろ。うちの家が指揮してる騎士団で使ってる剣なんて色々特殊な加工と製造で創られてるから一本十金貨ぐらいはするんじゃねぇか?それぐらいだよな。」
「ええ、やすくても八金貨はしますね。この前書類に載ってたのだと十一金貨で作られたものが送られたはず。」
俺とメリトとの会話に頭が追いついていない様子の四人。しばらくして復活した四人からほとんど同じような言葉が漏れた。
「「「「常識が違いすぎる(な)(だろ)」」」」




