表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/77

悪魔との旅路 4

 久しぶりの場所にわたしの足は自然と進んでいた。後ろではわたしの雰囲気が変わったことを察したリアルが女性の肩に手を置いてわたしの邪魔にならないようにしてくれた。階段を一段ずつ登っていき大きな扉の前にたどり着く。両開きの扉には片翼の翼と一本の槍の装飾がそれぞれの扉に施されている。翼の装飾が施された扉の前に立ったわたしは指先で扉に軽く触れた。すると、扉が何の抵抗もなく内側に開いていく。


「え!?」


わたしの後ろで女性が驚いたような声が聞こえる。その声に振り返ることなくわたしは神殿の中に入っていく。神殿の中は簡素な作りになっているが、神殿の中心には一つのクリスタルが浮かんでおり、そこから何本も白い鎖が出ている。その鎖は神殿のあちこちに伸びており、二本だけが床近くまでぶら下がっている。


「あぁ・・・残ってたんだ・・・よかった。」


わたしは浮かんでいるクリスタルに向けてゆっくりと飛んで行く。今のわたしの中にはリアル意外にもう一人の人間がいることなど頭の中から抜け落ちてしまっていた。我が子を愛でるようにクリスタルにふれたわたしは、そこから流れる力を感じていた。しばらく力を感じていたわたしは満足して地面に降り立った。そこでようやく女性がいることを思い出す。


「えっと・・・話した方がいいかな。ここはね、わたしが建てた場所なの。今からどれぐらいになるかな。この世界が生れてすぐの頃だったと思うけど、その時に建てた場所なの。」


そう言って笑いかけると、女性は恐る恐ると言った形でわたしの方に近づいてくる。わたしの隣まで来た女性に笑いかけながら口を開いた。


「ありがとね、この場所を守り続けてきてくれた。おかげで戻ってこられたよ。」


そう言いながら隣の立つ女性を抱きしめる。


「あなたがここを守りたいっている思いはしっかりと届いていると思うよ。だから・・・お願いしてみよ。」


わたしは女性を抱きかかえながらクリスタルの前に飛び上がった。そして女性の手をクリスタルに触れさせる。女性の耳元で自分の思いと願いを口に出してクリスタルにお願いしてみてと言うと女性は絞り出すように言う。


「この場所を、母様達が守ってきた場所を失いたくない。だから・・・だから!わたしは、この場所を守る力がほしい!」


その言葉に応えるようにクリスタルが光り始めた。女性を抱いてクリスタルから離れた位置に降り立つと、光に照らされた神殿の床に幾何学模様がいくつも浮かび始めた。


「来たね。」


わたしが呟くようにそういう。浮かび上がったいくつもの模様の中心に光が集まり始め、瞬く間に人の形を取り始める。そして光が収まったとき、模様の数だけ人が立っていた。


「あの・・・この方達は・・・。」


「あなたの思いに共感して力を貸してくれる人達だよ。まぁ人じゃなくて天使だけど。」


その言葉に驚いたのか女性はわたしの顔と現れた天使達の顔を交互に見た。すると、天使の中から一人が歩み出てきた。


「わたしたちはこの神殿をあなた方が必死に守ろうとしてきていたことを知っています。しかし、わたしたちにはわたしたちからこちらの世界に干渉する程の権限を持っていません。そこにいられるお師匠様とは違って。」


そう言いながらわたしの方を見た。しかし、そこにわたしは疑問を抱いた。たしかにティリアの師匠ではあるが、わたしのことを師匠と言った天使達には何かを教えたことなど一度も無いはずだ。


「師匠?わたしが?あなたたちに何かを教えたことなんて一回も無いよ?」


わたしがそう言うと天使は首を振って答えた。


「いいえ、確かにお師匠様から教わったことは一つもありません。しかし、ティリア様に教わったものはお師匠様がティリアさまに教えたもの。それを学んだわたしたちはティリア様も師匠であり、お師匠様もお師匠様なのです。それに・・・お師匠様の名を知らないのでお師匠様と呼ぶしかないのです。」


天使は真っ直ぐわたしの方を見ながらそう言った。たしかにわたしはティリアからは師匠と呼ばれていたので、この世界ではわたしの名前を名乗っていない。だからお師匠様と呼んでいたと言うことか。


「まぁ呼び方はいいや。それにしても・・・。」


そう言いながらわたしは現れた天使達を見回した。天使達のどれもが圧倒的な力を持っているが、正直力だけで他の影響力はほとんど無いように感じる。


「なんか、物足りないな・・・。」


わたしがそう言うと、天使達もそれは理解しているようで申し訳ないと言った。今ここにいる天使達はわたしがティリアに付くようにお願いした子やティリアが生み出した生み出した子などで持つ力は全く問題ない。が、その影響で元々干渉しにくい天使がもっと干渉しにくくなりその結果あまりその姿を人間達に見せることが出来ていないため、その天使が守っているという事実が信じられない可能性がある。


「仕方ない、すこし手助けするかな。」


そう言うとわたしは天使達の頭の上を跳び越えてクリスタルから垂れる鎖二本を腕に絡ませた。すると鎖が伸びていきわたしの身体全体を鎖が絡んでいく。この鎖は力の流れを潤滑にすることが出来、力を使ったことを絶対に察知されないと言う利点がある。鎖の持ち上げられクリスタルの前に移動したわたしは両手を横に広げ鎖から流れる力を目の前に集める。すると、時空間が開いた。鎖がわたしの身体から解かれ着地する。


「さて、こいつならこの世界で暮らしていた奴なら絶対に知ってるだろうから適任だろう。」


開いた時空間をここにいる全員が見つめていると時空間から人が叫びながら飛び出てきた。


「御・主・人・様ーーー!会いたかったですよーーー!」


そう叫びながら飛び込んでくる女、わたしの守護天使であるチニリエルだ。勢いそのまま飛び込んでくるチ二リエルの頭を鷲づかみにして神殿の床にたたきつける。かなりの勢いでたたきつけたはずだが床には傷一つ付いていないうえ、チ二リエルも一切傷ついていない。


「ねぇチニィ?前も言ったよね。急に飛びついてきたら危ないって。まさか忘れていたって訳じゃないよね?」


わたしはチ二リエルの頭を掴んでいた手を離し、その代わりに床に寝転がるチ二リエルの頭を足で踏む。わたしに踏まれたチニィは何故か気持ちよさそうな声を漏らしている。その状況に理解が追いついていない様子の天使達やリアル達。


「こうなるかもしれないから呼びたくなかったんだけどね。」


そう言いながら困惑している天使達に笑いかけた。


「あの・・・その方ってチ二リエル様ですよね?六天天使長のお一人の。」


「そうだよ。六天天使長って呼ばれてるのは初めて知ったけど、チニリエルであることは間違いないよ。」


そう言うとわたしの足下にいるチニィの方をみた。


「・・・正直理解できません、どうしてこうなってしまったのでしょう・・・。」


天使は見てはいけないものを見るように両手で隠してしまっている。


「最初はね、ただ必死にわたしのことが大好きでわたしに付いたんだって。でも、あんまりにもくっついてこようとするから少し避け続けてたらね。いつの間にこうなってたの。」


そう説明しているとリアルが口を挟んできた。


「でも今のそいつを完成させたのはお前だろ?」


その言葉にどういうことかと天使は聞いてきた。たしかに最初は片鱗を見せていただけだったが、チニィは創造に自らの身体の改造をお願いしていたのだ。さすがに創造もわたしに相談してきたが、そこで吹っ切れたわたしは勢いのままチニィが要望していたものに加えていった。その結果大変なことになり今のチニィが完成することになる。そう言っていると足下でチニィが訴えた。


「ご主人様ぁ~もっとぉ~強く踏んでくだしゃぁ~い。」


その言葉にこの場にいる全員が凍り付き、チニィに対して冷ややかな目を向けたことは言うまでもない。しかし、チニィにとってその冷たい視線ですら気持ちよいのか身体をビクつかせている。


「ほんとに・・・実力はあるんだけどな-・・・どうしてこうなった。」


わたしはチニィを踏む足をグリグリさせながらそう呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ