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学園 イル 10

 しばらくタルイドさんを叩いて落ち着いたのかコーリア姉さんは息を吐いて俺の方に向き直った。


「まぁ、この話は置いておいて。丁度よく家紋を持つ五大貴族家が四人も揃ったんだからあの子について話しておかないとね。」


そう言ってコーリア姉さんは真剣な口調に変わった。俺達も姿勢を直して聴ける体勢になった。


「たしか同じ歳だったよね。どこの科に入ったかって分かるかな。こっちでも調べてみたけどさすがに分からなくて。」


俺は少し考える。そこで思い出したのはその子の家がうちの商会で対外間接力クェラゥエァの教材を買っていったと報告を聞いていたことだ。丁度俺の教材を買ったときに着ていた担当の人が言っていた。


「・・・多分対外間接力クェラゥエァじゃないでしょうか。うちの商会でそこの教材を買っていったらしいので。」


俺がそう言うとコーリア姉さんは紙を一枚持ってきて俺が言ったことを書き始めた。そこにコーリア姉さんが持っている情報を書き込んで俺達が見やすいように紙を置いた。


「取りあえずこんな感じかな。タルイドは加える情報は持ってる?メリトも知ってたら書き加えてもいいよ。」


コーリア姉さんがそう言うとタルイドさんが書き込み始めた。そこには普通知ることが出来ないそれぞれの力の数値が書かれていく。それを横からのぞき込むようにして視ている。


「俺が分かるのはこれぐらいだ。さすがにこれ以上だと気づかれかねない。それと、これは俺の予想になるがあいつは何かを隠していると思う。」


そう言ってタルイドさんは書かれた数値の一番下を指さした。そこには他の数値に比べて低く書かれた数値がある。その位置が表す力の種類を知っている俺達全員が同じ疑問を持った。


「これはどういうことだ?あの家はわたしたちとは違い賛成派だっただろう?」


「そうだよな・・・。もしタルイドさんの予想が正しいとしても隠す必要は無いよな。むしろ一部の王族からは喜ばれそうなものだが。」


「それを隠す理由があるということですか・・・。今はどうにも言えませんね。」


俺達が話しているのは五大貴族家の中で唯一家紋を持たない家のことについてだ。あの家はほんの数十年前に五大貴族家になったばかりの新しい貴族家だ。元々五大貴族家と言う制度は俺達を含めた四つの貴族家のみが分類されていた制度で、五大といいながら四つしかいなかったのだ。その空いた一つに入ったのがその家ということになる。五大と付けられた理由はそれどれの家が一以上の力を持っており四つの貴族家の力は五を超えるという意味で創られたものだ。

 すると、談話室のドアが叩かれた。コーリア姉さんがドアに手を置くとドアの向こうから声が聞こえてきた。


「五大貴族家の子と名乗る方が来ているのですが家紋を持っていない様子でして・・・どういたしましょうか。」


ドアの向こうでそう言ったのは談話室の前の部屋にいるコーリア姉さんの執事の方だろう。


「家紋を持っていないなら通さなくていいよ。それに今はいってこられると面倒だから。」


扉の向こうから了解いたしましたと声が聞こえてきた。それいこう声が聞こえることはなくコーリア姉さんも元の位置に座り直した。


「どうしてここに来たんだか。」


コーリア姉様は息を吐きながらそう言った。おそらく今この部屋に入ろうとしたのは今話している貴族家の子だろう。確かに五大貴族家に認められただけはあって他と比べても強い力を持っている。が、リーネル家がもつ商業力やデーキカウト家のもつ武の力、クォリオン家がもつ病院の力、ハリヴァン家がまつ教育の力と比べたらその力は極々小さいものとしか言えない。


「まだ、自覚していないのでしょうね。王族に媚びを売って入れてもらった五大貴族という場所がどれだけの力を持った貴族家が所属しているか。」


俺はそう言いながら手元に置かれた紙を見た。時間も遅くなってきたので今日はここまでにすることにし、情報が書かれた紙は暖炉の中に入れて燃やす。燃え尽きたことを確認してから四人で部屋を出てそれぞれの寮に向かった。メリトと別れた俺は寮の部屋で楽な格好に着替えベッドに寝転がった。隣にあるテーブルにはキオーナがいれてくれた紅茶が置いてある。


「これからは慎重に調べないとな。」


俺は自分にそう言い聞かせるように呟いて入れられた紅茶を飲み干して眠った。翌日からは召喚体との信頼関係を築く練習が続いていき、俺達は期限までに全員が騎乗できるようになっていた。ついでに俺は攻勢力テァッキルの授業を平行して受けていた。そのおかげで俺はこれから使う武器についてある程度目星を付けることが出来た。ただ、一様ミカさんにも相談してみようと考えている。


「さて、全員が見事課題を通過できたみたいでよかったよ。二人も教えてくれてありがとね。おかげで助かったよ。」


島に出発する日、俺達はいつもよりも少し早く学園の教室に来ていた。他の生徒達はもうすでに島に向けて出発しているらしい。と言うのも騎乗が出来る召喚体と契約している俺達とは違い馬車で行くしかないのでどうしても時間がかかるそう。その点俺達は空を飛べる子もいるし、それ以外の子もどんな道でも突き進んでいける子達なのでそんなに時間はかからないだろうとのこと。ふと、気になってランリ先生はどうするのか聞いてみたところ馬車でゆっくり行くとのこと。さすがにそれは申し訳ないのでガリバルドに乗っていくことを提案してみた。


「それは・・・嬉しいんだけど、大丈夫なの?」


「恐らく問題ないかと。荷物はメリトが載せていってくれるらしいので、人一人ぐらいなら余裕で運べると思いますよ。」


そう言いながら机の上にいるガリバルドを見ると任せろととでも言うように胸を張っている。


「そっか、じゃあお願いしようかな。」


それからランリ先生は注意事項などを話してから俺達は校庭にでた。そこでガリバルドに元の大きさに戻ってもらった。あの進化した以降ガリバルドの身体は少しずつ成長していて、今ではあの時よりも大きくなっている。その背中には少し前に頼んでおいた騎乗用の装備が乗っている。小さな荷物はガリバルドの足に結びつけ、ガリバルドの背中に跳び乗った。


「ラダールの荷物はこれだけでいいのか?」


メリトがサラマンダーの背に載せた荷物を指さしながらそう聞いてきた。


「一様な。ランリ先生の分は載せたのか?」


「置いてあった分は全部載せたぞ。確認したから忘れ物はないはずだ。」


「じゃあ、大丈夫だと思う。」


そう話しているとランリ先生がやってきた。小さな荷物を背負って少し緊張した様子でこちらを見ている。


「いつでも行けますよ。」


おれが周りを見渡して大体の準備が完了していることを確認し、ランリ先生にそう言った。


「そっか。じゃあ準備が出来た子から出発していいよ。場所は渡した地図を見ながら気をつけていってね。」


ランリ先生がそう言うと準備を完了していた子達が次々と出て行く。空を飛んで行く子や空を駆けて行く子、街道に出て目的地を目指す子などがいる。


「じゃあ、先行くぞ。向こうで合流になるな。」


メリトもそう言ってサラマンダーを操って出発していく。ランリ先生が乗ったのを確認してガリバルドに合図をした。ガリバルドは大きな羽を動かし軽やかに空を飛ぶ。おれは慣れているがランリ先生はそういうわけにもいかないようで俺の腰に手を回してしがみついている。


「いい機会なので、景色を見ておくといいですよ。そうすれば怖さもなくなるでしょうし。」


ランリ先生のそう言うとランリ先生は恐る恐るといった感じで顔を上げた。すると、今まで緊張していた顔が緩んだ。


「・・・綺麗。」


思わずといった感じで声を漏らした。


「しばらくはこのまま進んで行くので短い時間ですが、空の旅をお楽しみください。」


おれは少し冗談らしく笑いながらそう言った。

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