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学園 イル 9

 教室に戻った俺はメリトと相談し同じ教室の子達と食事に行くことにし、クラスの中で行ける人を集めた。その結果八人の生徒が集まった。


「さてと、何か食べたいものとかある?無いならこっちで決めちゃうけど。」


そう聞いてみると、全員が何でもいいとのこと。そこで俺は鞄から一つの箱を取り出した。片手で握れるくらいの大きさのこの箱は登録されている箱を通して遠くの人と話すことが出来るというものだ。


「・・・商会長聞こえますか?」


「はいはい、聞こえておりますよ。どういったご用でございましょうか?」


「今から十人で予約を取れる食事処を探してるんだけど探せる?」


「お任せください。では少々お待ちを。」


そう言うと箱の向こうから紙をめくるような音と何かを叩くような音が聞こえる。その音が止まるとすぐに商会長の声が聞こえてきた。


「お待たせしました。今からだとヨーサウル堂が良さそうですが、予約しておきますか?」


「お願いできるかな?」


「承知しました。こちらから連絡しておきます。」


最後にお礼だけ言って会話を終わった。それからメリトに行く場所を伝えて八人を連れての合計十人で商会長に教えられたヨーサウス堂に向かった。ヨーサウス堂は大通りから貴族街に入る道の入り口に店を構える大きなお店だ。歩いてそこに向かう道中でお互いの自己紹介をした。中にはすでに名前を聞いている子もいたがここで一回全員の名前を覚えようということでやった。


「さてと、ここだね。」


ヨーサウス堂の前に着いた俺たちは店の扉を開いた。店の中は四階建てで一、二階は庶民家の人達が利用するところで、今回商会長が予約してくれたのは三階の大部屋で店に入った俺はその事を店にいた人に言って案内してもらった。


「久しぶりに来たなー。ラダールはよく来るのか?」


「そんなにかな。普段は料理長が毎回気合い入れて作ってくれるから外に食べに行くこと自体が少ないからね。」


「そういえば、お前のうちの料理はめっちゃ美味かった覚えがあるな。そっか、羨ましいな。」


そんな話をしていると大部屋の扉が雑に開かれた。入ってきたのは貴族らしい服を着ている親子だった。俺たちを見つけたのか両親と一緒にいた一人の子が俺たちの方に近づいてくる。


「おい、どうしてここに学園の生徒がいるんだ?ここは貴族しか使えないんだぞ?」


俺たちを見下すようにそう言った。今俺達は学園の帰り道にそのままここのよったので服装も学園指定の制服を着ている。取り合えず俺とメリトは無視していたが、他の子達はそういうわけにもいかない様子。今日来ている子達の中には貴族の子もいるが無視できていないところを見るにそこそこの地位を持っているのだろう。


「こらこら、そう言っては失礼だろう?一様予約を取って使っているみたいなのだから。すまないね急に騒がしくしてしまって。どうかな、君たちにはこの場所よりもふさわしい場があると思うのだが。」


そう言いながら一人の男が近づいてきた。遠回しに邪魔だから出て行けということか。最初は子供のわがままを謝るふりをしながらそう言うとはそれも俺達に向かって。


「はー・・・分かりましたよ。つまりわたしたちがこの場を使うにふさわしいと証明できればいいんですね?」


おれは男に向き直り椅子を立ち上がった。メリトも続くようにして立ち上がる。少し見上げるような形で男を見ながらポケットから懐中時計を取り出し男の目の前に懐中時計に付いた鎖を持ってぶら下げた。


「五大貴族家、水の家紋リーネル家次男リーネル・ラダールと申します。以後お見知りおきを。」


そう言いながら威圧をする。続くようにしてメリトも指輪を見せながら口を開いた。


「同じく五大貴族家、風の家紋デーキカウト家三男のメリトだ。あまり俺達の機嫌を損なわせない方が身のためだぞ。」


俺達の威圧を受けた三人は青白い顔をしながら一目散に逃げていった。丁度店の人が部屋に入って来ていたが、上手く避けるようにして出て行った。


「・・・どうする?多分あいつらは戻ってこないだろうが、すぐに同じようなことをするだろう?」


「まぁそうだね。取り合えずリーネル商会に所属するお店への出入り禁止は相談してみるかな。」


「そっか・・・じゃあ父上にそれとなく伝えておくよ。」


「そうしてくれるかな?丁度いいところに店長も来たしね。」


そう言いながらこちらに苦笑いで近づいてくる若い男。このヨーサウス堂の店長だ。


「いやはや、助かりました。こちらも対応に困っていたところでして。勿論ラダール様のためなら協力は惜しみませんよ。」


そこでこの話は終わりにして椅子に座った。それから他の店の人が持ってくる料理を店長自ら説明してくれた。どれもが高級料理と言うこともあり庶民家の子は緊張しまくっている。それでも料理を食べ出したらすぐにその緊張も消え去った。


「メリトくんとラダールくんがさっき使ってたのって何だったんですか?」


しばらく料理を楽しんでいたとき女の子がそう言ってきた。おそらく先ほど俺達があいつらに向けた威圧のことだろう。


「あぁ、あれね。簡単に言うと威圧みたいなものだね。五大貴族家の家紋持ちだけが教えられるものらしい。でもこれを教えられるのはその家で生れた子だけで、私の母様や御爺様は使えないみたいです。」


「へぇーそんなものもあるんですね。その力ってどこまで効くんですか?」


気になったのかさらに聞いてきた。俺もそこまでは知らないので少し考えてから試しにメリトに聞いてみた。するとメリトは知っているようで俺の話を引き継ぐようにして話し始めた。


「たしかこの国の王族には効かないらしいけどそれ以外の人には大体効くらしいぞ。他の国はどうか知らんが、隣国だと王族までこの力が効くらしいんだ。まぁ、一様戦いで負けた国だしその辺りで効くんじゃねぇか。」


それだけ話すと再び料理に手を付け始めた。さすがに十人もいるとたくさん用意された料理もすぐに消えていき俺達は満足して店をあとにした。代金を払うときは出来るだけ見えないように金貨を四枚ほど払った。合計代金としては少し多いが迷惑料として受け取ってもらった。帰り道に料理の代金を聞かれたが適当にごまかしておいた。さすがに庶民家の平均月収二時日分もかかったと聞いたら驚いて気絶しかねない。


「それじゃあまた明日ね。出来れば今度はみんながよく行くお店にも行ってみたいな。勿論全員で。」


俺達はそう言ってみんなと別れた。その後部屋に戻った俺はキオーナにてつだってもらって身だしなみを整えていた。


「変じゃないかな。」


そう言って姿見の前で自分の格好を見ている。今俺が着ているのは普段会などで着るような服装だが、その服を少しアレンジしてお茶会などで着るように堅苦しい雰囲気を取り払ったものだ。


「大丈夫です。自信を持ってくださいまし。」


キオーナにそう言われその言葉に押されるようにして部屋を出た。メリトと合流して俺達は一つの談話室に向かった。談話室の前で息を整えてからその扉を開けて中に入る。


「ようこそ、家紋を持つ同志よ。」


部屋に入った俺達に凜とした声が降りかかった。その声の主を見るとそこには肩ぐらいで切りそろえられた赤色の髪をしている女性が机の上で口元を隠す様に両手を組んでいる。その隣にはソファに仰向けで寝転がり顎を上にした状態で俺達を見つめる男がいる。


「本日はお招きいただきありがとうございます。」


俺とメリトがそう言って軽く頭を下げる。そして顔を上げながら口を開いた。


「・・・もういいですかね。」


俺の言葉にじっと見つめていた赤髪の女性は我慢できなかったように笑い始めた。同じように寝転がっていた男も笑顔でソファに座り直している。


「いやーやっぱりこの役つらいね。よくもまぁラダールはその微笑を崩さずにいられるよ。」


今まで組んでいた手を崩して顎を片手に乗せながらそう言ってきた。


「仕方ないじゃないですか。うちはこの国で一番商業に精通しているんですから。他の国から何回も招待されていたら自然とこうもなります。」


そう言いながら近くにあった椅子に座った。柔らかいクッションが沈み込んで非常に座りやすい。


「それもそうだな。だからこそ着こなせてるんだろうがメリトの方は慣れねぇか?」


座り直した男がそう言いながらメリトの方を見る。メリトは自分でも似合って無いのは分かってるといいながら机を挟んで男の向かいに置いてあるソファに腰掛けた。


「久方ぶりの再会がまさかここになるとは思わなかったな。」


先ほどまで腰掛けていた椅子から立ち上がり俺の近くの椅子に座り直した赤毛の女性は五大貴族家のクォリオン家の次期当主候補、クォリオン・コーリアだ。もう一人のメリトと話している男は同じく五大貴族家ハリヴァン家の次男ハリヴァン・タルイドという。二人とも学園の生徒でコーリア姉さんが終年生、クリオドさんは中年生だ。この学園は六年制で学園に初めて入った子を初年生と呼び、卒業する最高学年の子を終年生と呼ぶ。


「学園はどんな感じ?二人とも同じ科だったよね。」


「そうですね。今のところ特に問題なく楽しく過ごさせてもらっていますよ。」


「そうか、それはよかった。わたしたちは二人とも科が別だからね。ここなら誰にも訊かれる心配は無いだろうから困ったらいつでも相談してくれていいよ。」


コーリア姉さんはそう言ってわらった。


「コーリア姉さんはもう卒業でしたよね。卒業後はどうするつもり何ですか?」


おれは少し気になったことを聞いてみた。このまま行けば次期当主になることは決まっているが、結婚などはするのかという意味も含めての質問だ。


「今のところは未定だね。結婚とかでしょ?相手もいないしね。」


コーリア姉さんはそう言いながら笑った。


「・・・姉さん?」


メリトとタルイドは俺が姉さん呼びしていることに疑問を持った様子。そこでおれは二人に姉さん呼びしている理由を話した。元々五大貴族家の中で一番信頼し合っているのがクォリオン家になる。その関係で小さい頃にコーリア姉さんがうちに泊まりに来たことがあった。その時にコーリア姉さんが昔から弟がほしかったと漏らしていたので少しでも喜んでもらえるならと姉さん呼びするようになったのだ。


「なるほど・・・そういえばクォリオン家は男がいなかったな。それでか・・・かわいいとこあるな。」


タルイドがそう言うとコーリア姉さんは真っ赤になって無言でタルイドを叩いている。コーリア姉さんは攻勢力テァッキルで学んでいるので力が強いのか叩かれる度に少し痛がっているがタルイドさんは忍耐力ジフィジアのなのでそれだけですんでいるのだろう。

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