悪魔との旅路 2
突然声を掛けられたわたしたちは最初わたしたちに声を掛けたとは思わず、周りを見渡しててしまった。
「お前ら事だよ。というか他にいないだろうが。」
わたしたちの方を指さしながら男はそう言った。
「わたしたちですか?と言うよりどこでわたしたちが亜人って知ったんです?少なくとも外見だけでは絶対に判断できないと思いますが。」
少し警戒しているような雰囲気を出しながら男にそう聞くと、男は後ろにいた一人の亜人女性を指さした。
「うちには耳がいい奴がいてな。お前達の会話は聞かせてもらったぞ。」
よく見るとその女性には獣の耳が付いている。どうやら動物系の亜人のようだ。わたしたちは何をされるか分からないのでいつでも刀を抜けるように刀に手を掛けた。リアルもいつでも飛びかかれるような体勢になっている。
「それで?何か用でも?」
「そう警戒するな。別に襲ったりしねぇから。それで俺たちの用は一つ、俺たちと一緒に行かねぇか?お前達には悪くない話だと思うぞ?」
男はそう言いながら笑った。しかし、その笑顔には裏があることは男の感情からも見通せる。そう言った感情をリアルも感じ取ったのだろう警戒を強めている。
「なるほど・・・確かに襲われたりはしないようですね。それと申し訳ないが一緒に行く話は断らせてもらうよ。弱い奴はいらないんでね。」
男に向かってそう言うと、男は顔に笑顔を貼り付けたまま固まった。断られると思っていなかったのだろう。
「そうか?少なくともここいらでは強い方なのだがな。」
「そうかもしれないね。でもいらない。わたしたちの目的を達成するには邪魔でしかないから。そんなに一緒に行かせたいならわたしたちに勝って見せてよ。それぐらいなら付き合ってあげるよ。負けるわけないけどね。」
男を見下すようにそう言うと男に怒りの感情が芽生えた。だが、それを顔に出さないのはさすがといったところか。
「いいだろう。」
「決まりだね。勝敗の判断はどちらかのうち一人が気絶したら。直接殺さなかったら何でもありね。」
わたしが勝負の内容を簡単に決めて男に言うといいだろうと言い剣を抜いた。いつの間にか建物中ではわたしたちの勝負を見ようとわたしたちを囲むように人混みが出来ている。
「リアル。」
わたしはそう言って手を出した。それだけでわたしが何をしたいか理解したのだろうリアルが出した手を握った。
「どれだ?正直どれでも致命傷だろうが。」
「出血でお願い。それなら直接は死なないから。」
リアルはわたしの手に出血の呪いを流した。その呪いを纏で身体に纏わせ、人狼の能力で発達させた牙に集中させた。
「お待たせ。準備はいいかな。」
「ああ、いつでもいいぞ。」
「そっか・・・じゃあ遠慮なく。」
そう言った瞬間わたしは男の右肩にかみついていた。発達した牙は男の方を粉砕し、あふれ出る血の味がわたしの口に広がった。男は突然走った激痛に理解が追いつかず少し空いたから痛みに声を上げた。牙が刺さった事で呪いが浸食し、一生止まることがない出血が始まる。そのまま男の右腕を肩から食い千切ったわたしはちぎれた腕を咥えたままリアルの元に戻った。
「まずいね。・・・食べる?」
「腹の足しにはなるか・・・。いっただきまーす。」
リアルに腕を渡すと指の方からむさぼり始めた。口の周りに付いた血を拭いながら男の方を向くと男はすでに気絶していた。痛みで気絶したか出血で気絶したかは分からないが。
「勝負ありかな。ほら早く手当てしないと死んじゃうよ?出血での死は勝負に関係ないからね。それともそのまま見殺しにする?あなたたちを縛ってたものはもうないよ。」
そういいながらリアルがむさぼっている腕の方をチラッとみた。そこにはすでに肘辺りまでを咥えながら食べているリアルの姿があった。
「・・・どうして。」
亜人の子達のうちの一人がそう聞いてきた。
「うーん・・・人狼の勘かな?なんか嫌な感じがしたって言う言葉にはしづらい感じかな。」
わたしたちの勝負を見守っていた人達もすでにバラバラと自分のことに戻っている。どうやら日常的にこういうことが起こっているのだろう。
「ふー、食べた食べた。どうするんだ?こいつは?」
腕を食べ終えたリアルは未だに出血し続けている男を片手で掴みあげてわたしに聞いてきた。使い道もないので捨てておいてと言うと男を掴んだまま建物の端にある大きな箱に近づいていった。男の身体をその箱の中に投げ入れると手に付いた血を舐め取って戻ってきた。
「腹の足しにもならんかったは。また腹空いたら頼むな。」
「はいはい。」
わたしたちは未だに固まってしまっている亜人達を残して建物を出た。しかし、すぐにわたしたちは呼び止められることになった。
「あの!」
その声に振り替えると先ほどまで固まっていた亜人のことたちだった。
「あの!さっきはありがと。それで・・・お礼がしたいからご飯でも!」
すこし緊張気味にそう言ってきた。チラッとリアルの方を見るとわたしの方を見て軽く頷いた。
「いいよ。色々と聞いておきたいしね。あなたたちも聞きたいこともあるでしょ?」
それからわたしたちは亜人の子達に連れられて一つのお店に入っていた。一つに個室に入ったわたしたちは机を囲むようにおかれた椅子に座る。
「さてと、何から話そうか。」
そういいながら腕を組む。そのままじっと亜人達を見つめているとそのうちの一人が声を発した。
「どうしてわたしたちがあいつに拘束されているって気がついたんですか?少なくとも勘だけでは説明できません。」
わたしの方をじっと見ながらそう聞いてきた。わたしはそう聞いてきた子を見つめながら様子を観察した。その子は純粋に気になったことを聞いているだけのようだ。
「やっぱりだませないか。確かにわたしはあいつがあなたたちを拘束してるって気づいてた。でもどういう方法で拘束してるかまでは知らなかったよ。」
そういうと亜人の子達は驚いたようなかおをした。
「まぁでも分かりやすかったけどね。あなたたちの視線が右腕に動いてたからね。そこになにかあるっていうのは明白だったし。それにリアルもわたしもある程度感情は読めるからね。あいつの下心に溢れた感情は見やすかったよ。」
丁度店員が食事を運んできたので話を区切った。運ばれてきたのは野菜の上に軽く焼いたお肉が盛られた料理だった。
「俺の場合は読めるのは悪意のある感情だけだけどな。お前は食うのか?」
リアルは自分の分を取りながらそう聞いてきた。リアルに皿を渡すとすぐにわたしの分を取って渡してくれた。
「ありがと。さて、わたしたちがあれに気づいた訳はこれぐらいかな。わたしたちに聞きたいことはある?」
料理を食べながらそう聞いてみた。前に座る子達も料理に手を出している。
「えっと・・・お二方の種族って何なんですか?外見的な特徴がないように見えるんですが。」
そう聞いてきたのは耳が普通の人よりも尖っているエルフ種の子だった。
「わたしは人狼だね。完全な人型と狼の姿をとれて、狼の力を自由に使える種族。こいつはあまり詳しくは言えないけど食肉種の一つだと思って。」
簡単にわたしの種族を話した後料理を食べ続けているリアルを指しながらそう言った。食肉種とはその呼び名の通り肉を食べることで存在を保っている種族のことで、その代表が悪魔になる。ただ、悪魔以外の食肉種は肉を食べなくても普通に生きていける鬼種になるので実質的に食肉種は悪魔のことを指す。ただ、これはあまり知られていないことなので結びつける奴はいないだろう。
「そうですか・・・わたしたちは見ての通り獣種が二人とエルフ種です。三人とも上手く乗せられてあいつに拘束されることになってしまったんです。」
そう言ったエルフ種の子は少しつらそうなかおをした。
「そっか・・・まぁ強くなるのが一番早く身を守る術になるからね。頑張りなよ。」
「そうだぞ。じゃないと今の俺みたいになるからな。」
リアルはいつの間にか料理を全て腹に収め亜人達の方を見ながらそう言った。亜人達はどういう意味か理解できないようで疑問の顔をしている。
「今はこんな姿してるが俺は元々男の姿だったからな。こいつを含めた奴らに喧嘩を売ったらこんな姿にされちまったんだからな。」
リアルはそう言いながら笑った。驚いたような顔をしている亜人達を見ながらわたしも料理を食べ終えた。
「さて、わたしたちは行くけどこれからは気をつけなよ。それと、多分これからは三人で行動した方が動きやすいと思うからそっちを進めるよ。」
それだけいうと腰に提げたバックから金貨をすうまい取り出して机においた。すぐに亜人達は何か言おうとしたがリアルと一緒に店を出る。
「少し寄り道したが問題ないのか?」
「まぁ大丈夫でしょ。特に力の流れに変わりはないしね。」
再び通りを歩きながら力を感じる方に向かうと、広場のようなところにたどり着いた。広場の中心にはよく分からない謎の建造物が建っている。というより突き刺さっている。
「これのことでいいのか?」
「たぶん・・・反応もここから出てるしまず間違いはないと思う。」
そこには表面に凹凸一つない綺麗な白色をした物体。正方形の一つの頂点を地面に刺して姿勢を保っいてる。
「でっけーな・・・。」
「多分これは内部に埋め込まれてる感じかな。」
そう言いながら正方形に近づいていく。周りにはこの正方形を見に来た人達が何人もいる。その人達に混じって正方形に手を置くと力の流れを確認した。
「どうだ?なんか分かったか?」
リアルがわたしの隣でそう聞いてくる。
「・・・予想通りここは外れだね。この力じゃない。」
手を離しながら隣に立つリアルにそう言った。それからわたしたちはすぐに次の目的地に向かうための準備を始めた。必要な物を買いそろえたわたしたちはその日のうちに街を出た。
「次の目的地は何処なんだ?」
「次はここから少し離れてるからね。取り合えずわたしに乗っていくしかないかな。」
街を出て少し行ったところで狼の姿になるとリアルにそう言ってリアルを乗せた。すでに日が傾いて空も暗くなってきていた。その闇に紛れるようにわたしはリアルを乗せて駆けた。




