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神話 Ⅰ 愛する主と愛する姉

 目の前で敬愛する主が消えた。もう少し早く駆けつけていれば助けられたかもしれない。だが主はわたしにあの言葉とクリスタルを残していった。つまり、非常事態ではあるが消滅することはない珍しい問題が発生したと言うだけだろう。ここは冷静に他の神に知らせたほうがよい。すぐに他の神に繋ぐために部屋にある通信機を起動した。


「始祖神様、創造神様、終末神様、契約神様、信愛神様。突然のご無礼申し訳ありません。ティアナメイドでございます。緊急を要する事態が生じたためご連絡させていただきました。」


すると、どこからともなく声が響いてきた。わたしが連絡することはほとんどないので、対応してくれるかが心配だったが。


『珍しいな。其方が通信してくるとは。』


『確かに。どうした?なんかあった。』


『何かがあったから通信を飛ばしたんでしょうが。終末の。』


『まぁまぁ。そういう性格なんだから創造もそう言わないで。』


『契約は甘すぎるのでは?さていきなりの通信だ何があった?まさか時空に何か!?』


通信を飛ばしてすぐに始祖、終末、創造、契約、信愛の順に返答があった。

しかし、信愛神様はほんとに主様のことが気になっているようで。まぁ二人ともほとんど同じ時期に神としての意識を持ったそうなので、一番仲がよい神だってお互い言っていましたからね。妹みたいにかわいいと言っていたこともありましたね。本人の前では恥ずかしくて言えないそうですが。


「まずは謝罪申し上げます。お忙しい中申し訳ありません。」


『それは良い。まず何があった?』


「はい。単刀直入に申し上げます。主が時空間に巻き込まれました。」


『そうか。』


『なるほどな。』


そう言ったのは始祖の神と信愛の神の二柱だった。二柱とも特に驚いた様子もなくそれ以上何も言ってこなかったが、他の神はそうもいかない。


『ちょっと二人とも!?落ち着きすぎじゃない!?』


『そうだそうだ!特に信愛おまえ時空が消えてんだぞ!?』


『始祖はまだしも何で信愛がそんなに落ち着いてるの!?姉妹みたいに仲良かったのに!』


『姉妹みたいではない。姉妹なのだ。ではなくて、わたしだって混乱してはいる。しかし、メイがこれだけ落ち着いているのだ。つまりはそういうことであろう。』


お互いのことをよく知っているからこそ逆に冷静でいられたのだろう。驚くべき事に信愛の神は大きな問題ではないという結論にたどり着いていた。


「さすがは信愛神様ですね。確かにその通りです。主とのつながりも未だに切れていませんし、主が最後に投げて寄越したクリスタルも消えずに残っています。なので、最悪の事にはなっていないでしょう。」


わたしの説明により納得した様で安堵の息を漏らしていた。当たり前だ。もしかしたら力に飲み込まれてしまったのか、と思ってもおかしくないからだ。


『わたしが姉様をよく知っているように、メイも姉様のことをよく知っている。そのうえ姉様が直接自分の名前を教えるぐらいには信頼されているのだ。メイ自身も姉様を信頼し愛している。そのメイが落ち着いているからこそわたしも冷静になれたのだ。』


信愛の神がそう話すと他の神も冷静になったのか、この後どうするかという話に移った。と言っても時空についてはほとんど知識がないらしく、わたしも全てを理解するのは不可能に近い。それでも動こうとしているのは主の友として、そして六神という全ての神の頂点に立つ神だからでしょう。


『時空については巻き込まれたとしても自分の力で帰ってこれるのか?』


「恐らく可能かと思われます。ただ、今回の場合は時空間の通路を形成することが出来ていないので、無理矢理帰ろうとすると他の世界に影響が出てしまうかと。なので、主が自ら帰ると言うことはしないでしょう。」


わたしは自分の知る範囲で出来るだけ話し合いを続け、色々な案が出た。しかし、そのどれもが何かしらに影響を与える可能性があったり、不可能なものばかりだった。


『クリスタルがあるといったな。』


そんな中始祖の神がそう口にした。


「はい。主が消える直前にわたしに投げて寄越したものです。ただ、どういう意味があるのか分かりませんが。」


『そういえば、姉様は世界に通じる入り口をクリスタルとして保管していたよな。もしかしてそれもそうなのでは?』


思い出したように信愛の神が呟くようにして聞いてきた。わたしもその可能性を考え、主から教わった世界を覗く方法で視てみたが何も見ることができなかった。


「そう思ってやってみましたが何も見えませんでした。」


『そうか、もしかしたらと思ったのだが。』


ふとクリスタルに視線を戻すとクリスタルの色が変わっていることに気がついた。慌ててクリスタルを覗くようにして視てみると、クリスタルの中に風景のようなものが映し出されている。そのクリスタルを視て、ある一つの可能性が見えてきた。


「・・・もしかしたら、写し絵のクリスタルかもしれません。」


『写し絵のクリスタル?なんだそれ。』


「わたしも詳しくは知らないのですが、このクリスタルと対になるクリスタルを持ったものが印象深く感じたり記憶に深く刻み込まれた景色や風景をこのクリスタルに映し出すというものです。クリスタル同士がどれだけ離れていても映し出すことが出来るけど、景色や風景は一カ所しか映し出せないというものだったはずです。」


『なるほど。でもそれだけじゃどこにいるか分からないんじゃない?その風景だって似たような場所はたくさんあるんでしょ?それを一々探していたら私たちが手伝ってもかなりかかりますよね。』


契約の神がそう聞いてきた。確かに普通の神が探す場合はこれだけでは手がかりと言えるほどではない。だが、わたしだからこそ主はこのクリスタルを投げて寄越したのだろう。


「恐らく、それはないとおもわれます。主はわたしが知識の神だからこそこのクリスタルを渡したのでしょう。」


わたしがそう言うとそれで理解した神は、始祖、信愛、創造の三柱で他の二柱は未だに理解ができにようだった。


『つまり、知識の神として記録してある世界の中からその風景に会う世界を探し出せばそこに時空がいるだろうって考えか。』


「はい。それに主はより絞りやすいものを一緒に写してくれていました。多分これは信愛神様が詳しいと思われます。」


『わたしか?と言ってもあまり記憶力には自信がないんだが。』


信愛の神はそう呟くと通信を切った。それからすぐに信愛の神はわたしがいる部屋に跳んできたようで、何もない空間から出てきた。


「何が映っていたんだ?」


近づいてきた信愛の神にクリスタルを渡すと、それをのぞき込んだ。すぐに目に入った物を理解したのだろうクリスタルを返してきた。


「なるほどな。確かにこれはわたしの方が詳しいかもしれないな。」


『それで、どうなの?時空は探しに行けるの?』


「多分な。この移っているものが本物ならすぐにでも飛んでいけるだろう。」


そう信愛の神がいったことで他の神も安心したようだ。信愛の神は六神の全員から信頼を置かれている。その理由は手伝いを頼んだりすると必ず手伝ってくれるからだ。主も時々手伝ってもらっている。


『信愛がそう言うなら大丈夫かな。じゃあ、時空のことは任せるよ。どうせ暇してるだろうし。』


『そうだな。あいつのことだ、久しぶりの休みだーとか思ってそうだな。』


「そうですね。ただ、主ほど正確に素早く繋げることは不可能ですので繋がり次第向かいましょう。」


「了解した。繋がるまではここで待っているから、慌てずにな。」


信愛の神はそういうと雲のような白いふわふわしたものを生み出し、そのうえで横になって寝転がった。するとすぐに寝息を立てて寝始めてしまった。相変わらず寝顔は美人という言葉で表せないくらい綺麗で、主がおとなしいときの信愛の神は普通に惚れると真顔でいっていたのを思い出す。しばらくその寝顔を観察してから早速作業に取り掛かる。


「待っていてください???様」



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