記憶と魂
パーティーがあった日の翌日、わたしとイルは学園での初授業を受けていた。イルのクラスは最初にいた人数の倍ぐらいに増えていて、それぞれ個性的な召喚体を連れている。ただ、大きい召喚体の場合はそういうわけにはいかないので連れていない。最初の授業はこの科で学べることや、召喚体と仲良くなるための方法、他に適性がある人にはそれらの科の授業も受けられることなどを説明していた。その説明が終わると、早速召喚体を呼び出す練習をすることになりクラス全員で外に出た。
外に出て行くイルにもしかしたら一気に力を使うことで目眩とかがあったら後で教えてと伝え、イルと離れた。わたしがイルと離れたわけは先ほどから気配を感じていたやつと接触するためだ。そいつは予想通りわたしが記憶を入れ込んだ生徒だった。
「ラダールに何か用か?」
姿を違和感の無いように護衛のような格好で変装し、威圧するように声を少し低くしてそいつに話しかけた。話しかけられたそいつはビクッと体を震わせて振り向いた。
「あなたは・・・?」
「ラダールに近い者とだけ言っておく。で、何か用か?用があるならわたしが聞こう。」
「・・・分かりました。じゃあ、あちらで話します。」
そう言って向かったのは学園の中にある林で、林の中にはベンチが数脚置いてある。その中の一つに腰掛けると話し始めた。
「わたしがラダールくんを見ていたのは召喚体を譲ってもらうためです。」
「なぜ、譲ってもらおうと思ったんだ?」
「あの召喚体にはわたしが見ても分かるぐらい強い力を持っています。あの力が有効に使えるのは私たちの科だけだからです。」
正直、こいつは何を言っているんだと思わずにはいられなかった。人間が有効に使えるほど単純な力な訳無いのに。
「なるほどな。答えは決まってるだろうが、その話は断らせてもらおう。」
「どうしてですか?力は有効に使える人が持つべきではないですか。」
「・・・中身なしが分かったような口をきくな。」
「え?」
「前世の記憶があるのがお前だけだと思うな。」
わたしはそいつの目を見て赤い目の力を使った。これでこいつは幻想を見ている状態に入ったので、耳元でささやくように言葉をつないだ。
「お前がどういう意図でラダールに近づこうとしたかはどうでもいい。ただ、今回は残念だったな。おとなしくしておけば記憶を消されずに済んだのに。さようなら、愚かな人間さん?」
そう言ったのを最後にわたしは、わたしと合ったという記憶と前世に関係する記憶を消し、ねつ造した記憶を入れ込んだ。一度記憶をすり込んでしまえば今回の場合は契約が完了している。前世の記憶を振りかざすような行動をしなければ消すことはなかったが、今回はどう見ても前世の記憶から発言していることは明白だった。それに貴族のものを上から目線で寄越せというのは無礼すぎるだろう。いくら庶民とはいえさすがに無知が過ぎる。
「さてと、これで面倒くさいことは片づいたし戻るか。」
未だに幻想を見ているやつを放置してイルの元に戻った。イルにも記憶を消したことを伝えておいたのでこれからは普通の学園生活を送ることが出来る。
最初の授業があった日の夜。イルとわたしは寝室にいた。寮の部屋は二つの部屋に分かれていて、イルと私は奥にある部屋に、メイドはもう一つの部屋にいる。
「それで、何で記憶を消すと言うことになったんですか?」
「まずあいつとの契約についてから話すね。といっても契約したのはわたしじゃないんだけど・・・。今回の契約は記憶を引き継ぐって言うものなの。イルの場合は魂ごと持ってきてるから前世の記憶を持って新しい生を持ったって言う感じかな。だけど、あいつは記憶だけ持ってきただけだから時間がたつにつれて記憶が薄れていって最終的には前世の記憶は綺麗さっぱりなくなっちゃうの。それが魂を持つものと持たないものの違いかな。それで、記憶を消した原因は前世の記憶を元に行動してたのが大きいね。基本的に前世に記憶を持つことは異常なことだからそれを使う場合は世界を変える原因になりかねないのは分かる?だからそういう人は意図的に記憶を消すことになってるの。その結果あいつは記憶が消えることのなったって言うこと。」
「・・・分かったような、分からないような。」
「まぁ、簡単に言うと制限を超えたから消したってことだね。」
わたしがそう言うと納得したのかそれ以上は聞いてこなかった。イルにわたしがいない間どんなことをやったのか聞いてみると、先生が言っていた召喚体を呼び出す方法しか教わっていないそう。試しにその方法を聞いてみたのだが、そこで気になったのはわたしが読んだ悪魔の本に書いてあった召喚方法と呼び出す方法が似ていたのだ。そこで少し検証がてらイルを連れて外に行くことにした。
「大丈夫なんですか?抜け出してしまって。」
「大丈夫でしょ。夜の遅い時間だし、最悪ばれても問題ないように幻影を置いてきたから。」
夜の空を翼を広げ飛んでいた。腕にはイルを抱えるようにして運んでいる。
「それにしても、こうやって触れていると作り物とは思えないですね。」
「・・・その発言、わたしだからまだ許すけど他の神に言ったら速攻で殺されるから気をつけなよ。」
「あんなことがあったんですから、いいじゃないですか。」
そんな会話をしながら街から少し離れた森の中に着地した。周りにはなんの気配もないことは索敵したので分かっている。イルを下ろすと準備のために少し離れさせた。一様危険が無いようにわたしの後ろに移動させ、召喚の準備をした。
「多分、召喚される悪魔はわたしが抑えられると思うけど、警戒はしておいて。」
そう言って本に書かれていた方法で悪魔を召喚した。すると、どこからともなく陣が現れ光り始めた。その中心から黒い人影が飛び出てきた。
「俺を召喚したのはどいつだ?何でもかなえ、てや・・・・・・。」
飛び出てきたのは長い銀の髪を持ち、綺麗な顔を持った小柄な美女と表現できる悪魔だった。その悪魔はわたしの方を見て固まってしまっている。
「やっぱり、あなたが出てくるよね。待ってたよ、じゃあじっくりお話ようか。」
わたしが威圧しながらそう言うと悪魔は絶望したように膝をついて、真っ白な顔をしている。イルも状況が飲み込めていないようで、固まってしまっている。膝をついてしまっている悪魔の首根っこをつかんで逃げないようにしてからイルに話した。
「この悪魔は昔わたしともう一柱の神に挑んできて、瞬殺されたアホな悪魔なの。それからは私たちの言いなりだからそんなに怖がらなくても大丈夫だよ。見た目は完全に女なんだけど中身は男でね、この見た目はわたしじゃない方の神がいじりまくった結果だから。・・・少し待ってて。」
そう言うと、時空間を開いて悪魔と一緒に入った。時空間の中で正座させた悪魔を見下ろしながら易しく声をかけた。悪魔はそれだけで体を大きく震わせてわたしの顔を見つめてきた。その目は今にも泣きそうな目をしている。




