確認
イルの屋敷まで飛んできたわたしはすぐに中に忍び込もうと思った。しかし、こちらの世界では何年経っているか分からないので、まず先にイルと合流することにした。屋敷の周りを周回するように飛行していると、敷地内にある林の中にイルを見つけた。わたしはそこに向かって着地すると、イルが近寄ってきた。
「お帰りなさい。ずいぶんと長い間いなかったけどどこ行ってたの?」
「それは言えないかな。家に戻ってたとだけ言っておく。」
逆にイルがどうしてここにいるか聞いてみたところ、気分転換に外に出ていたらしい。それでわたしの姿を偶然見つけて、林の中に移動したとのこと。恐らく見られないようにと考えてだろうが、見える人がいないのに見つかるわけないだろう。
「取りあえず、どうします?これから家族でお茶会だそうですけど。」
「そうだね・・・。イルの家族もじっくり観察したことないしこっそり見させてもらうよ。」
イルにそう言うと、了解の返事とわたしはいない体で動くと返答された。わたしが見えているイルが怪しまれないようにするためだろう。わたしにとってもそちらの方がありがたいので了承した。イルは林の中を歩いて抜ける。すると、そこには綺麗に整えられた花が植えられた花壇広がっていた。その真ん中に机と椅子が並べられており、そこには四人の人が座っていた。
「お帰り、ラダール。見つかった?」
林から出て、椅子に座ったイルにそう聞いたのは、わたしがこの世界に来た時にイルを抱えていた女性だ。恐らくイルの母親なのだろう。そしてその隣で紙を読みながらカップを傾けている男性は父親な。それからお茶菓子を食べている男性はイルの兄。さっきから何か見られているように感じる女性はイルの姉だろう。
その後、お茶会は進んでいき家族団らんの時間が過ぎていく。その間わたしは邪魔をしないように少し離れた空中で本を読みながら時間が過ぎるのを待った。時々お茶会をしている方を見るとイルのお姉さんと目が合うが気のせいだろう。
しばらく時間を潰していると、お茶会が終わったのか屋敷に向かっていった。わたしもそれに続いて屋敷の中に入っていった。屋敷に入ったわたしはイルについて行くようにして部屋に入っていった。部屋に入るとわたしはスーッと奥まで移動した。イルは部屋の扉に鍵をかけるとこちらに振り返った。
「あらためてお帰りなさい。」
「それで?何年経ったの?」
「大体十一年ですね。もうすぐ学園の入学試験らしいです。丁度よいタイミングだったと思います。あと、入学試験って何するんでしょう。何も勉強してないんですが・・・。」
驚くべきことにこちらでは十一年物月日が流れていた。少なくとも数年は流れているだろうと思っていたが、予想よりも時間の経過が早いようだ。少し向こうにいすぎたな。
「そっか、十一年も・・・。えっと、入学試験だっけ。ちょっと待ってて。」
そう言うと本を開いて調べた。それによると、入学試験といっても試験をするわけでは無く力の有無を調べるための試験らしい。力を持つもの全員が入れるわけではなくある程度力がないと入れないらしい。これはわたしも初めて知った。イルのこれらのことを伝えると心配していたことが解決してホッとしている。
「そういえば、この前同年代の子達と会う機会があったんですが、わたしって他の子達より身体能力が高いんでしょうか。」
「そうだね・・・。もしかしたら高いかもしれないね。イルの場合魂ごと持ってきてるから、魂に記憶された能力は受け継ぐの。」
わたしの世界には人族とその他の種族が共存している場合が多い。そして、人族以外の種族は総じて妖気を纏っている。その妖気は人族に少なからず影響を与える。さらに言うとその妖気も種族ごとに違う。イルが前の世界で共存していた人魚族は、たしか人族の水中活動能力の向上と足の早さの向上が有ったはず。それをいるに聞いてみたところ、他の子よりも足が速かったらしい。といってもこの世界には妖気がないので年齢に比べて早いと言うだけだろう。その事をイルに伝えると納得したよう。
「なるほど、そういうことだったんですね・・・。もしかして、遺伝もするんでしょうか。」
「じゃあ、試してみる?」
イルをからかうように服を脱ぐと、イルは慌てたように後ろを向いた。
「ちょ、いきなり何やってるんですか!服着てください!」
いきなりわたしが服を脱いだことに相当驚いたのだろう、耳まで真っ赤なのが分かる。わたしは少しいたずらしたくなったのでイルを後ろから抱えるようにして抱き上げた。イルは驚きすぎて固まって石像みたいになっている。抱きかかえたままベッドまで移動するとイルを仰向けにして寝かせ、覆い被さるようにイルの顔を挟むように手をついた。イルは必死に顔を手で覆い隠して見ないようにしている。
「イル、そんなに我慢しなくてもいいよ。見たければ見ればいいじゃん。」
そう言うと、必死に顔を横に振っている。もどかしくなったわたしは片手でイルの手をつかむと顔から剥がした。そのままイルの顔を見つめていると少し目を開けた。そのままわたしの体の方を見たイルは驚いたように目を開いた。
「ほら、これなら見てもなんも思わないでしょ?」
今のわたしの体は氷の体に色を反映しているだけなので、その色を抜けばただの氷の彫刻のような半透明の体になる。そして今はその状態なのでイルからは半透明のわたしの体が目に入っただろう。
「その体は・・・。どういうことですか?」
「わたしたち神は基本、生殖機能が必要ないし肉体も持たないからね。この体は下界で動くための体だからね。いつでも代えが効くの。まぁ、イルが望むなら行為の出来る体にするけどしないでしょ?」
そう言いながらイルから離れたわたしは、肉体を霧散させた。これで、またイルにしか見えないようになる。イルは未だに顔を赤くしたままベッドから立ち上がった。恐らく今は恥ずかしさが勝っているのかな。そんな状態のイルを見つめていると、部屋のドアがたたかれた。




