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転生

わたしが次に目を開けたとき飛び込んできた景色は、見慣れた部屋ではなく初めて見る景色だった。私たちが暮らす空間とは違うということはすぐに分かった。尚且つわたしが来たことがない世界だと言うことも分かる。状況や知っていることから考えて他の世界から誰かを呼び寄せるために世界を繋げ、その誰かを呼び出したとき偶然その通り道にわたしがいて、巻き込まれるようにこの世界に呼び出されたという感じかな。


(どこの世界からもそう言った報告が上がってきていなかったよな。つまり、神が報告を忘れたって言うこと?)


他の世界から呼び出す場合は神が相手の世界の神に報告をし、その報告を受けた神は時空神であるわたしに報告するという約束が神の中ではある。その報告は呼び出された後でも問題はないが、少なくともまだわたしがこの世界に来る前にはそう言った報告が上がっていない。もしかしたらまだ来ていないだけかもしれないが、時間の流れから考えても報告が来ていてもおかしくない。結論としては報告が出来ない状況だったのではないかと言うことだ。

 色々と考えている間に周りでは何やら慌ただしく動き回っている。呼び出された対象であろう三人の女の子は呼び出されたことによる反動で気を失っている。並の人間ではそうなって当然だろう。


「はー、面倒くさい。何でわたしがこんなことに巻き込まれないといけないのか。誰か説明してくださらない?」


あからさまにいらついているような表情をしながら大きい声でそう言うと、周りで動いていた人達は全員が動きを止めた。わたしはついでに威嚇がてら一瞬だけ力を解放していたので、それを感じ取ったのだろう。


「それで?説明してくれるのですか?」


もう一度聞いてみるとわたしの前方にある椅子に座った男が口を開いた。男は見るからに高そうな服を着ている。


「その前に一つ聞きたい。お前はいったい誰なんだ?少なくともそこで気を失っている三人とは別だろう?」


男がそう言ったのは先ほどの力についてだろう。勿論話すつもりもないが、弱いとみられるのは少し不愉快だ。そこで自分の上司をバカにされれば誰かしらが刃向かってくるだろうと思い軽く小馬鹿にしてみた。


「それは言えませんね。強いて言うなら頭の悪い誰かさんのせいで不機嫌な一人の女かな?」


予想通り男の近くに立っていた鎧を着けている男がわたしに近づいてきた。近づきながら男はすぐに今の発言を取り消すように言っている。無論取り消すつもりはないので、そのまま男を見ながらフッと鼻で笑ってやった。それに怒ったのか腰に差していた剣を抜いてわたしに振りかざしてきた。


「先ほど言いましたよね?わたしは今不機嫌なんです。」


そう言いながら振りかざしてきた剣を腕でへし折りながら顔を正面から掴み、そのまま握りつぶすと、それにより飛び散った血がわたしの顔に飛んだ。血はすぐに消え去り元の状態に戻った。


「それで?説明はしてくれるんですか?」


手についた血が消えるのを確認しながらそう聞いた。さすがに今のを見たことで話す気になったのか男は少しずつ話し始めた。男が言うにはわたしがいることに関しては分からないらしい。まぁそこはわたしが理解しているので問題ない。続けて話したのは呼び出した理由についてだ。男が話していた内容をざっくりとまとめると、今の持っている力では攻めてくる敵に勝てないから補うために呼びだしたと言うことらしい。実にありふれた理由だ。それによって起こる影響を一切考えていない愚かな行為とも言える。


「そういうこと。で、わたしはどうするんですか?少なくともあなた方に協力する気は全くありませんが。」


「そうか。それなら俺たちは何も言わん。」


驚いたことに男はわたしが協力しないと言ったことに何も言ってこなかった。てっきり力を求めているからこそ余計ほしがると思ったのだが。


「あら、よろしいの?」


「強すぎる力を持った奴は味方にとっても脅威になる。今お前が殺した男はこの国で一番強いと認められている奴だった。それを殺せる奴を置いておくほうが怖いからな。」


どうやら裏切られたりしたときの脅威を警戒しているのだろう。警戒心の高い男だ。まぁ、こちらとしてはありがたいので、わたしからはそれ以上言うつもりはない。


「それではわたしはこの辺りで失礼しますね。あぁ、そういえばあなた方が戦っている敵ですが・・・いえ、これ以上は話さない方が面白そうですね。」


わたしが思い出したようにそう口を開くと、周りの空気が変わった。あるものは固まったように動きを止め、またあるものは信じられないようなことを聞いたような顔をしている。わたしがこの世界に来た時それに気がついた神が先ほど情報を送ってきたのだ。それによると人間が神に反乱を起こしていて、それの対処をしていたらしい。戦っている相手が神というのを知らないと思い話そうと思ったが、それだとわたしが楽しめないことに気がついて言うのをやめたが、反応を見るに知っている人は知っているようだ。


「お前、その情報をどこで・・・。」


「さぁ?それはいずれ分かることになるのでは?」


男が何か言おうとしたがわたしはそれに答えるつもりもないので体を霧散させて姿を消した。と言っても本体は残っているので、少し留まって状態を見守ることにした。この状態では基本的に神かそれに限りなく近い存在しか見ることができず、気配を感じることも不可能に近い。


「消えた・・・。どういうことだ、何故奴は知っているような発言をしたんだ。本当に知っているのか?それとも・・・。」


男が独り言のように呟いた。恐らく自分たちがどういう相手と戦っていて、それによる影響がどれだけあるかを知っているからこその発言なのだろう。神に反乱した時点でそれまで調整してきた事が全てなくなるのだ。それによる影響は相当大きいだろう。だからこそ止めることができなくなって焦って他の世界から呼び出すと言う行動にまで出たのだろう。


「陛下、今はそちらは置いておきましょう。それよりも呼び出しには成功したのです。先ほどの奴はとても強い力を持っていました。もしかしたらそれに近い力を持っているかもしれません。」


陛下と呼ばれた男の横に立っていた奴がそう言った。椅子に座った男は頷いて姿勢を正すと、丁度よく気を失っていた女の子三人が目を覚ました。女の子が目を覚ましたのに気がついたのか、数人が近づいていって介抱している様子。その甲斐あってか女の子達は話せるぐらいに回復している。

 恐らくここにいる人達はこの子達に大きな期待を持っているのだろうが、正直に言って切り札になるような力は一切持っていないように感じるし、実際そうなのだろう。この子達がどうなろうが今回の場合わたしには何の責任もないのでわたしは窓から外に出ると、空中を飛んでそこから離れた。


「さて、偶然とはいえわたしを巻き込んだんだから、楽しませてよ。」


誰にも聞こえていないと分かっていながらそう呟いた。

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