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閑話  意味

 わたしは今日もここに来る者達を相手にしていた。面白い人もいないので相変わらず上辺だけ取り繕ってやっていた。そんなある日六神が集まるお茶会でこんな話が出た。


「ねぇ、時空に提案なんだけど選択できる条件もう少し厳しくしてもいいんじゃない?」


「珍しいですね。契約がそんなこと言うなんて。何かあったの?」


「いや、特に何かって訳じゃないんだけど、少し厳しくしてもいいんじゃないかって思っただけ。」


「まぁ、わたしとしてはどちらでもいいけど・・・。みんなは?」


話を聞いていたであろう六神とその守護神に聞いてみた。すると半数から厳しくした方がいいという意見が出た。詳しく聞いてみると世界が不安定になる原因に転生者が絡んでいることが多くなったらしい。


「なるほどね。じゃあ試験的に厳しくしてみるよ。そんで次来た選択者に着いていって世界の行動について確認して、それから決めるてみるか。」


ささっと選別される条件を変更すると、丁度お茶会も終わりの時間になり、それぞれが自分の場所に戻っていく。わたしもメイドと一緒にわたしの場所に戻った。


「そういえば、わたしが帰ってきてから下界行ってないよね。久しぶりに行こうよ。」


「えっと・・・、よろしいのですか?」


「いいよ。あの時いけなかったんだもん。それにもうすぐあなたの生まれた日でしょ?」


そう言いながらメイドに近づいて、正面から抱きしめた。


「今ぐらい、わたしに見せてよ。本当の気持ちをさ。」


わたしの腕の中で聞いているメイドに語りかけるように話しかけた。すると、我慢していたのだろう隠していた感情があふれ出てきた。


「良かった、です。無事に、帰ってきて、くれて。心配で心配で、おかしく、なりそうでした。」


震えながら絞り出すようにそう発すると、わたしのことをギュッと抱きしめ胸に顔を埋めてきた。守護神としての立場からわたしのことで不安でも顔に出すことなく普通を装っていたのだ。わたしは何も言わずメイドを抱きしめ続けた。どれくらい経った分からないがメイドが抱きしめられた状態で顔を上げた。メイドの目は真っ赤になっているが、気にしていないようだ。


「主様。わたし新しい手帳がほしいです。」


「さすがだね。いいよ。一緒に探そ。下界ならたくさんあるでしょう。」


メイドはその返答を聞くとわたしから離れて、下界に行く格好に変身した。


「さっ、行きますよ。」


「はいはい。変わらないね~メイドは。」


「いいじゃないですか。それに主様だって楽しみなんでしょ?」


みるからにはしゃいでいるメイドを見ながら、久しぶりの下界で何を買おうか考えながら扉を開いた。扉からでた先は建物の中だった。この建物はわたしがこの世界を生み出したときこちらでの世界での生活拠点として建てた。時間が経つにつれ、まわりには人が集まり一つの街が形成されている。私たちはそこで必要な物を買う。


「ここも変わらないね。まぁそりゃそうか。」


そう呟いて建物の扉を開いて外に出る。外は日が差していて、気持ちのいい買い物日よりの日だ。


「はー、久しぶりの外はいいねー。落ち着くはー。」


「そうですね。こうやって外に出るのも気持ちいいものですね。」


二人で思いっきり体を伸ばしていると、後ろから声をかけられた。


「あ、あの。も、もしかして神様ですか?」


後ろを振り返ると、一人の女の子が立っていた。


「そうだけど、あなたは?初めて会うよね。」


わたしがそう聞いてみた。メイは恐らく無意識だろうが、わたしと女の子の間に立つように移動した。さらに警戒心むき出しにしているので、女の子は一瞬体を震わせて言葉を続けた。


「い、いえ、怪しいものではありません!こ、今代の式守です!」


式守はわたしが神ということが分かった人間達がわたしが建てた建物を掃除したり、妖怪から守る役割として人間達が置いている人のことだ。この役割は正直私たちには関係ないし危害もないので特に気にしていない。それに数十年から数百年ごとに下界に行くのでその式守に会うこともほとんどない。


「あー。うん。そうなんだ。」


「やっぱり、知らないですよね。いいんです。私たち人間と神様とは、全く違うと知ってますから。」


わたしがどう反応すればいいか悩んでいるとメイが女の子に近づいて目線を合わせるような態勢になった。


「確かに私たちは頼んだわけでもない式守の子は知りません。ですが式守の子のおかげで綺麗に保てていることは、わたし達も知っています。」


そう言って、笑いかけていた。それを聞いた女の子もうれしかったのか笑顔になっている。わたしはその横を気づかれないように気配を消して通り過ぎた。敷地の出入り口付近で待っていると、少し女の子と話していたメイが帰ってきた。


「ありがとね。わたしどうにも苦手で。」


「ええ。分かってますよ。だからこそ、わたしがついてきたんです。」


私たちは敷地から出て、街に繰り出した。こちらにでてしまえば、気づかれることはほとんどない。逆に気づいていても、わたしが神ということを知っているので、話しかけたりはしてこない。


「さてと、食料品と必要な物を買うかな。手帳は後でもいい?」


「はい。大丈夫です。あと個人的に行きたいところが有るから、行ってもいいかな。」


「いいよ。一人で行く?わたしもついて行った方がいい?」


「いえ、大丈夫だと思います。すぐそこなので。」


「わかった。じゃあ終わったら神社集合ね。」


そういってメイと別れた。わたしが必要な食料品や雑貨を買いそろえて、神社の前でメイを待っていた。


「遅いな。すぐ戻ってくるって話だったけど。」


メイドを探しに行こうか迷っていると、声をかけられた。


「すみません。遅くなりました。」


顔を上げるとメイドが紙袋を提げて立っていた。


「あぁ、良かった。探しに行こうか迷ってたところだよ。何かあった?」


「いえ、少し前に頼んだものだったので、それを探してもらうのに時間がかかっただけです。それでこれ主に渡したかったんです。」


そう言うと、メイは紙袋から一つの箱を取り出した。メイは箱の中身を見せるように開いた。中には氷に結晶のデザインが施されたブレスレットが入っていた。


「これは?」


「特に大きな意味はないんですけどね。今まで主からもらったことはあっても、わたしからあげることはなかったので、以前降りてきたときに頼んでおいたんです。」


「そうなんだ。そっか、これがうれしいってことなのかな?やっぱり感情があるメイドはうらやましいな。」


私たち六神のほとんどが、どれかの感情が欠落している。わたしと信愛神の場合うれしいという感情と悲しいという感情が欠落している。これは私たちが生まれる前に持った感情によって影響されるの。なので、最初に生まれた始祖はすべての感情がない。


「良かったです。喜んでもらえたようで。さっわたしのほしい手帳は決めているので行きましょう。」


メイは贈り物が喜んでもらえてうれしかったのか、見て分かるぐらい楽しんでいる。その姿を見ているとわたしも温かく感じる。やっぱりメイドが来てからわたしは変わったと思う。そう思いながら雲一つない空を見上げる。


「わたしにはわたしのできることをやる。それがわたしのいる意味だ。でしょ?」


この言葉は誰に向けたものでもない。わたしの中にある言葉が自然と口から漏れた意味のない言葉だとこの時はそう思っていた。

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