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帰還

 今まで感じていた二つの生体反応が消えたのを確認したわたしは、枝から飛び降りて地面に降り立った。地面には赤い血の中に倒れる二つの死体が転がっている。そのうちの一つにはまだ魂が引っかかっていたので、ささっと回収しておく。井理とシフィアナの方に近づいていくと突然井理が膝から崩れ落ちた。そして、声を出して泣き始めた。井理の目からは涙があふれ出ている。


「ど、どうしました!?急に泣き始めて!?」


すぐ隣に立っているシフィアナは井理が急に泣き始めた理由が分からずオロオロしてしまっている。井理の中にある感情は恐らく自分の手で親友を殺してしまったことによるものだろう。わたしは井理に近寄っていき優しくその震える身体を抱きしめる。


「大丈夫、大丈夫だから。」


そう言いながら優しく井理の背中を撫でてあげる。どんなに強い覚悟を持っていても人間が出来る覚悟はたかがしれている。それに今回みたいに人を殺したことがない人が初めて、しかも今まで親友と呼べるほど仲がよかった者を殺したのだ。なにも感じない人はいないだろう。


「大丈夫。井理はあの子達のことを殺したかもしれない。でも、井理はそれを悲しんではいるけど、後悔はしてない。なら今は前を向いて。殺したことを乗り越えるんじゃない、絶対に忘れない。これが人を殺してしまった者達の使命だから。」


井理は嘔吐きながらわたしの身体にしがみついている。シフィアナはオロチがどこかへ連れて行く。オロチにはこれが終わったらすぐに戻ることになると伝えておいた。そのための準備に言ったのだろう。


「井理の中にはあの二人との記憶が残ってる。その記憶は絶対に忘れないで。それが生きた証だから。」


それだけ話したところで、井理は泣き疲れたのかわたしに身体を預け眠ってしまった。井理の身体を抱きかかえるとわたしは立ち上がった。


「いいよ、もう出てきても。」


そう言うと、なにもない空間に突然穴が開きそこからメイドと信愛が出てきた。


「やっぱりバレていましたか。相変わらず察知能力が高いですね。


「本当に。まったくこちらはどれだけ焦ったか。姉様ようやく見つけましたよ。」


穴から出てきたメイド達は安心半分呆れ半分というようななんとも言えない顔をしている。


「以外と早かったね。もう少しかかるかと思ったのに。」


わたしがそう言うとメイドがスタスタと近づいてきてわたしのすぐ前に来て止まった。


「主様、仕事が溜まっていますのでお休みはここまでです。早く帰りますよ。それと、その子は誰です?」


「久しぶりの再開でもそれか・・・。お姉さん悲しくなっちゃう・・・。」


少し悲しそうにそう言ってみたものの、メイドにはサラッと流されてしまった。


「姉様が抱えてる子は何だ?もしや姉様を巻き込んだ奴か?それならここで殺させてもらう。」


信愛はそう言う井理の頭に手を当てた。今回のことで相当怒っているのだろう。


「別に殺すことを止めたりはしないけど、一様この子も被害者だからね。やるならこの子を含めこの世界に召喚して、さらにはわたしを巻き込んだ奴らの方を殺してほしいかな?」


そう呟くように言うと、信愛はすぐに井理に触れていた手を離しどこかへ飛んでいった。それを見上げているとメイドが横に来てわたしの耳元で聞いてきた。と言ってもメイドとわたしでは少し背が違うので、メイドは背伸びをしてわたしに話しかけてくる。


「よろしかったのですか?主様のことになると止まりませんよ?」


「大丈夫でしょう。信愛が直接するんじゃないしね。それに、ここの最高神は信愛の弟子だから。」


そう言って笑うとメイドはなるほどと言った表情をした。どうやら、ここに来るのにわたしが写したものが役に立ったようだ。それからしばらくして信愛が戻ってきた。その顔はやりきったという満足したような顔をしている。


「それじゃ帰りますか。」


そういうと、今わたしたちがいる空間を全て折りたたむ。段々と小さくなっていく空間からわたしたちは飛び出して、森の中に降り立った。足下には手に平ぐらいの大きさになっても未だに折りたたまれている空間だったものがある。その大きさもやがて見えないくらい小さくなり空間は消滅した。


「帰るのはいいですけど、先ほどわたしたちが使った空間はもうないですよ?」


メイドがそう聞いてきたが大丈夫と言って笑い、おもむろに手を突き出した。すると突き出された手は途中で空間を突き破るようにしてめり込む。そこからグイッと空間を広げてやるとすぐに時空間への入り口が開いた。


「ほら、これで帰れる。」


そう言って振り返ると、メイド達は呆れたようなかおをして息を吐くと時空間に入っていった。それに続いてわたしも時空間に入りその入り口を閉めた。この世界でわたしを巻き込んだ国はそれからしばらくして滅んだそうだ。原因は民衆の革命。王族は全員処刑されたそうだが、わたしには関係のない話だ。


「さて、帰ってきたわけだけど、わたしはやることがあるから少しだけまた行くね。」


「分かりました。他の神にはわたしが伝えておくのでご安心を。ですが、出来るだけ早く帰ってきてくれるとありがたいです。」


そういうメイドの目はすこし悲しそうなめをしている。再びわたしがどこかに行ってしまうのではないかと心配しているのだろう。


「ふふ、大丈夫今回はここからやるから。それにすぐに終わるだろうしね。」


そう言うと、わたしの周りを氷で覆った。隙間がないように張り巡らせた氷の中から井理の肉体を元の世界の元の場所、元の時間に戻した。それが出来ると、井理の手にクリスタルを装飾にした指輪を握らせる。時空間を閉じると、その指輪を通して話しかけた。


「井理、聞こえる?聞こえてたら目を開けてみて。」


目を閉じれば指輪を通して井理の周りの風景が全て見える。すると、井理がゆっくりと目を開けた。それから驚いたように周りを見渡して、自分の身体を確認するように動かしている。それから自分が指輪を握っていることに気がついたようだ。


「どう?元の世界に戻れた気分は?井理が召喚されたときとほとんど変わらない時間に送ったから特に問題はないはずだよ。」


『これは・・・どういう・・・。』


「ああ、あと井理が考えてることは全部こっちに伝わってるから。」


わたしがそう言うと、視界に映し出された風景の中で井理がビクッと身体を震わせた。


「取り合えず今の状況について説明するね。まず、今は井理だけが元の場所に戻った状況で、他の二人は行方が分からないって事になるかな。それと、今井理はそっちの世界の加護から外れてるからその指輪が加護の代わりになるから出来るだけ肌身離さず持っておいてほしいかな。」


そういうと、井理は自分の持っていた指輪を手にはめた。


『それで、これからどうなるんでしょうか・・・。』


「多分あの二人のことについて色々聞かれると思うけど、分からないって言って逃げるしかないね。そうしないと誘拐の犯人にされてもおかしくないからね。」


『分かりました。これからもこうやって話せるんですか?』


「残念ながら話せるのは今回だけ。ただ、指輪から見える景色はわたしも見えるから井理の事はずっと見られるの。」


『そうですか・・・。分かりました。じゃあ、最後に・・・わたしのお願いを叶えてくれてありがとうございました。』


「・・・ふふ。」


そこで指輪の効力がきれた。それを確認するとわたしは覆っていた氷を解除した。これからは向こうの声は聞こえるが、こちらの声は聞こえないという状況になる。それから井理は何事がなかったように自分の家に帰っていた。翌日あの二人がいないと言うことで井理の学校はかなり騒ぎになっている。それから井理には警察?と名乗る人達が話を聞いていたが、井理は知らない、分からないと続けていた。


「終わりましたか?」


メイドが椅子に座って本を読んで待っていた。信愛の姿は何処にもないから自分のところに帰ったのかな。


「うん。一様ね・・・。そうだ、すこし家に戻るね。」


それだけ言うとわたしは時空間に逃げるように飛び込んだ。そして、時空間を抜けたさきは自分の空間にあるわたしの屋敷だった。


「取りあえずここでいいんですよね?」


わたしが門をくぐるとすぐにオロチが近寄ってきてそう聞いてきた。オロチにはここの管理を任してもいるので、シフィアナが育つまではここで練習してと言っておいたのだ。


「そうだね。しばらくはここで暮らすことになると思うし、ここなら邪魔にはならないでしょ?それと、わたしも出来るだけ来るようにはするけど今からは難しいからお願いね。」


それだけ言うとわたしは慌ただしくメイドのところに帰った。メイドのところに戻ると先ほどまで座っていた椅子は全て片付け、わたしのことを立って待っていた。


「主様・・・もう逃がしませんよ。」


そう言うメイドの目にすこしおどろいたわたしは飛びついてきたメイドに反応することが出来ず、体勢を崩してメイドが飛びついてきた勢いで後ろに倒れた。飛びついてきたメイドはそのままわたしの胸に顔を埋めている。


「ようやく捕まえました。主様、絶対に離しませんから。」


そう言ってわたしの谷間に顎を挟んでわたしの顔をじっと見つめてくる。その頭を優しく撫でながら笑いかけると、メイドもいつも通りの笑顔を向けてきた。


「はいはい。じゃあ、わたしは何をすればいいかな?可能な範囲で叶えてあげるよ。」


「本当ですね?じゃあ・・・口づけをお願いします。」


メイドがそう言ったのを確認した瞬間メイドの顔がわたしの目の前に来るようにメイドの身体を移動させると、メイドの口にわたしの口を押しつけた。メイドは何が起こっているのか理解が追いつかず、完全に固まってしまっていたがしばらくしてわたしの目の前で真っ赤になった。それから離れようとモゾモゾしていたが、わたしが舌をメイドの舌と絡ませるように動かすとそれも止まった。わたしが口を離すとメイドはトロッとした顔でわたしを見つめていたが、急に我に返りわたしの胸に顔を埋めてもだえ始めた。


「むきゅっ・・・」


「はは、わたしのその願いを言ったのは間違いだったね。今度は勝てると思った?」


それからわたしとメイドは寝室に移動して二人だけの夜を楽しんだ。

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