戦場に咲く桜
シフィアナはしっかりと井理を連れてきてくれた。この場所はわたしが世界に干渉して創り出した場所で、この場所のみわたしが最大の力を使っても何の影響が無い場所になっている。
「桜ですか・・・」
井理はわたしの目の前に生える大木を見ながらそう呟いた。
「正確には少し違うかな。あなたたちの世界にある桜?だっけ。それの元になってる木だけどこの木はわたしの拠り所でもあるの。」
「桜じゃ無いんですか?そういえばどうしてこの世界の言葉をわたしたちが理解できるのでしょうか・・・。」
「そこは難しい質問だね。」
世界は樹形図のように枝分かれしながら先に行くほどどんどん数が増えていくが、その枝をたどると全ての世界が六つの世界にたどり着くことになる。井理達が住んでいた世界や今わたし達がいる世界はわたしの管理する世界と信愛の管理する世界を重ね合わせた世界から派生した先にあるので、言葉も似ることになるのだ。勿論通じない言葉もあるが派生が同じで時空間軸もそれほど変わりが無い場合大体の言葉は通じる。井理にそう教えるとなるほどという感じになった。
「まぁ簡単に言えばどの世界でも全てが何かしらで繋がってるって事だね。あとそうだ、シフィアナ。」
わたしは少し離れたところでオロチと作業をしていたシフィアナを呼んだ。作業の手を止めたシフィアナはわたしの近くに来る。シフィアナに井理を紹介するとお互い手を握るように言った。その言葉にお互いえっ、となったがシフィアナが手を出すと井理もその手を握った。それを確認するとシフィアナと井理を仮契約で縛った。
「あのティアさん何したんですか?なんかこの子と深い繋がりみたいなのを感じるんですけど。」
「簡単なこと。あなたたちを契約で縛っただけ。」
それからわたしは仮契約のメリットを話した。そもそも仮契約をするのはお互いを世界の理から外すと言う目的もある。井理の場合仮契約でこの世界の魔法が使えなくなるが、その代わりシフィアナの力、つまり風の力を使えるようになる。シフィアナの場合異世界出身の井理と契約することで存在がこの世界と井理の世界の二つに渡ることになる。その場合はその契約を主導した者によってどちらかの世界に付けるかそれともどちらの世界にも付けないかを選ぶことが出来る。それを話すと渋々と言った感じて納得してくれた。
「仮契約だからいつでも破棄できるしさ。取りあえず井理は元の世界に帰るまではその状態でいてよ。戻れたら破棄してあげるからさ。」
「了解です。」
シフィアナはそう言うとオロチの元に向かっていった。それからすぐオロチから連絡があり、どうやらあいつらの船が近づいてきたとのこと。
「そっか。じゃあ丁重にお迎えしてあげないとね。」
そういうと、わたしは一つのクリスタルを取り出し握り壊した。手からこぼれ落ちた破片は空中を舞っていきやがてこの空間を隔離するように白い霧を生み出した。
「さて、井理には大切な役割があるからよく聞いててね。」
そう言うと、井理の目を見て話し始めた。召喚者達の心を折る作戦を。
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わたしたちがあの人を止めるのに失敗した日の夜、井理は姿を消した。部屋にあったはずのこたつや服なども全てが無くなっていた。そんな中ベットの上には一通の手紙が置かれていて、そこには短く一文だけ「元の場所に帰る」という文字が井理の文字で書かれていた。それを見たわたしたちはすぐさまあの人が言った神の里に向かいたいと言った。その意見もすぐに通って、わたしたちは全速力で神の里があるとされる場所に向かった。特に妨害などを受けること無く広大な海を渡ることが出来たわたしたちは、すぐさま森の中を進んだ。
「井理がいきなりいなくなったのはあの人が関係してるはず。」
自分に言い聞かせるようにそう呟きながら出来るだけ急いで森の中を進んでいると、突然白い霧が立ちこめ、わたしたちを覆った。その霧はなにか小さい破片が一緒に漂っているようで時々顔に当たってくる。しばらく進むと次第に霧が晴れていき、完全に霧を抜けた先には驚いたことに一面の草原が広がっていた。その青々とした草原の真ん中には信じられないぐらいの高さを誇る桜の木が生えている。木に導かれるようにしてその根元まで来た。ふと手を伸ばし木に触ろうとしたとき上の方から声が振ってきた。
「その木には触らない方がいいよ。」
その声のした方を見ると、わたしたちからすこし離れた枝の上にあの人が座っていた。しかし、その人の姿はこの前見たときとは明らかに違っていた。着ている服も空色に近い蒼をして、膝下ぐらいまでの細いスカートと和服のように前で重ね合わせて着る服だ。さらに1番目を引くのは背中から生える六枚の大きな羽だ。羽の大きさは一枚が一の背丈ほどある。
「よくここまでたどり着けましたね。褒めてあげます。」
その人は枝から下りるとゆっくりとゆっくりと降りてくる。その姿は非常に美しい光景だった。
「さて・・・少し数が多いですね。」
呟くようにそう言うとその人の背後に立つ木が揺れ、綺麗な花吹雪が起きた。すると、木の上の方から太い幹に巻き付きながら降りてくる一匹の巨大な蛇が現れた。しかもその蛇の頭は八つに分かれている。
「や、八岐大蛇・・・」
華菜がそう言いながら息を呑む。わたしたちを一六の目が見下ろしている。それだけで足がすくんで動かなくなる。八岐大蛇の口からはシューッと言う音か絶え間なく鳴っている。
「オロチ、やるなら後ろにいる雑魚共ね。それ以外はわたしたちがやる。」
その言葉が言われたと認識したときにはわたしたちの後ろで悲鳴が上がった。振り返るとそこには純白の鱗を真っ赤に染めている大蛇の姿があった。恐らくあの巨体でわたしたちの目に見えないほどの速さで跳んだのだろう。わたしたちはすぐに止めようと動いたが、それを防ぐようにわたしたちの前で何かが音を立てて地面に突き刺さり煙を上げる。
「あらあら、何処に行こうというのです?あなたたちの相手はわたしですよ。」
振り返ると空中で笑いながらこちらを見るその人。そしてその人の周りを先ほど木が揺れたとき落ちたはずの花びらが流れるように渦巻いている。
「そうだ!あなたたちと話したいって子がいるんでした。」
思い出したようにそう言うと地面に降りて大きな翼で自身の身体を覆う。翼を開いたときそこには二人の女性が立っていた。そのうちの一人はわたしたちが捜していた井理だった。
「どうして・・・」
「ちゃんと理由は手紙に書きましたよ。元の場所に戻ると。この人はその願いを叶えてくれると信じました。だから・・・それを止めるならあなたたちはわたしの敵です。」
井理はそう言うと持っていた杖を振った。すると、わたしたちの目の前の地面に大きな亀裂が入った。それをしたのが井理だとは信じたくなかったが、その時わたしたちに攻撃の意思を持っていたのは井理だけだった。
「ふふ、やっぱりその顔は興奮しますね~。シフィアナ、井理連れて避難してて。」
シフィアナにそう言うとすぐに井理を抱えて木の上に跳んで避難した。今はまだ羽を出せないシフィアナは風の力を使って空を飛んでいる。
「行かせると思いますか?」
わたしの後ろからそう聞こえたと同時に数本の弓矢が飛んでいった。しかし、その弓矢も花びらに打ち落とされ届くことは無い。
「くそ、やはり無駄か。」
先ほど指示を出した男は悔しそうにそう言った。後ろでは未だに大蛇が暴れ回っていて、悲鳴が止まること無く上がっている。
書き直してたら話が足りん!




