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神の楽園にて

 男を世界に送り込んだわたしは男が先ほどまでいた場所を見つめながらクリスタルに戻った世界絵の破片を浮かべていた。浮かべたクリスタルをつついたり空中を動かして遊んでいる。


「あそこまで条件に当てはまった奴なんてほとんどいなかったよな・・・。まぁ、この世界なら問題もないだろう。」


クリスタルを掴んで透かすようにして見ているとどこからともなく声をかけられた。声が聞こえた方にはメイドが一人立っていて、手にはカップやポットが乗っているお盆を持っている。


「仕事は終わりましたか?」


「問題なく。後は向こうの神に丸投げかな?」


そう言ってクリスタルをしまうと、立ち上がってメイドの方に向かった。メイドの近くに行くとテーブルと椅子を取り出して、取り出した椅子に座るとメイドがわたしの前にカップを置いて飲み物を注いでくれた。


「そうですか。今日の予定は先ほどのものだけでしたので仕事は終わりですかね。」


メイドが自分も椅子に座りながらそう聞いてきた。わたしは首を振ってあと一つ別にやることが残っていると話した。飲みながらそう話すとメイドが自分の手伝いがいるかどうか聞いてきた。


「あぁ、面倒くさいけど一人で出来ると思うから大丈夫だよ。それに、時間もかからないと思うから。」


わたしがそう答えると、メイドがじっと見つめてきた。何か言いたいことがあるように見えたので聞いてみると、メイドは話し始めた。


「一つ気になったのですが・・・。簡単にできるのに面倒くさがるのは何故なんですか?昔から一緒にいますが口では面倒くさいと言っていても一瞬で終わらせるじゃないですか。それもわたしですらかなり時間がかかることを。」


メイドはわたしの方をじっと見つめたままそういった。確かに今回わたしが面倒くさいと言ったことも一瞬で片づくようなことだ。そんなことでも面倒くさいという理由は自分でも分かっている。


「そうね、確かに一瞬で片づくことだよ。多分乗り気にになっていないだけだよ。だから面倒くさいって言うんだと思う。」


わたしがそう言うとメイドは目をつむってから椅子を立ち上がりわたしの目の前に来た。椅子に座った状態のわたしに目線を合わせるようにかがむと、メイドは口を開いた。


「主様が面倒くさいと表現する理由は分かりました。ですが、言わせていただきます。主様は時空神という立場なのですからそこはしっかりしていただかなくてはなりません。でなければ世界は大混乱に陥ってしまうでしょう。」


メイドはわたしが仕事をしなければ世界が大変なことになってしまうと思っているようだ。確かにわたしが放棄すれば世界は大混乱になるだろう。ただ、わたしが干渉しすぎることも世界の混乱に陥る原因にもなる。わたしはカップに少しだけ残っていたのをすべて飲むと、立ち上がってメイドと向かい合った。


「あなたがそういうのも分かるよ。力を持つものはその力を有効に使う必要がある。でもね、強すぎる力は有効に使おうとすればするほど自然と他に影響が出るようになるの。わたしよりも長く生きてないからまだ分からないと思うけどね。」


「どういうことですか?」


メイドを抱きしめるようすると、わたしの力をメイドに流した。これでメイドの神の力によってすべてが理解できただろう。メイドはいきなりわたしが抱きついたことで慌てていたが、今は力の方が気になっているのかおとなしくなっている。しばらくするとメイドの方からギュッと抱きついてきた。


「ずるいです。いきなりあんなことするなんて。でも、そういうことだったんですね。」


「分かってくれたならいいよ。私たちの面倒くさいっている発言は簡単に出来すぎて力の入れ方が難しいのに、私たち位の力がないと出来ないからなの。」


メイドを抱いていた手を離したが、メイドが離れないので肩をたたいてやると余計顔をこすりつけてきた。何をしてるのか分からないわたしはそのままの状態でじっとしているとメイドはわたしの体から離れた。


「すみません、久しぶりの主の匂いにうれしくなってしまって。」


メイドの顔を覗くと少し赤くなっている。この子を見ているとここまで感情を表現できることがとても羨ましく思ってしまう。


「まぁいいや。じゃあ先にやることだけやってから、久しぶりに下界にでも行く?最近行ってなかったし。」


わたしがそう言うとメイドは顔を上げた。その目はとても嬉しそうな目をしており、みるからに楽しみなようだ。わたしのやることが終わるまでに準備しておくように言うとカップとポットを片づけて部屋を出て行った。椅子とテーブルを片付けたわたしは早速取り掛かった。


「さてと、どうして世界と世界がつながってるんだ?そんなこと今までなかったのに。」


今回わたしが感じた違和感は本来特別なことがないと繋がるはずのない世界同士が繋がってしまっているのだ。そのつながり方もわたしやそれに似た力を持った神がやるようなつながり方ではなく、片方の世界が捕まえるようにもう片方の世界と繋がっていて、この異常は片方の世界の最高神から届いた情報だ。


「無理矢理繋げたって言う感じでもないし、偶然って言うわけでもなし。」


わたしは一つの結論に至った。つまり、捕まえている方の世界がわたしたち神を通さずに何らかの方法を使ってもう一方の世界と繋げたのだろう。この場合捕まえている方の世界を切り離せばいいだけなので工程としてはかなり楽な部類だ。

 繋がっている空間を切り離そうとしたとき、突然空間に異常が発生した。捕まえている世界から引き込むような力がもう一方の世界に向けて発生したのだ。丁度その空間に手をかけていたわたしも巻き込まれるような形で引き込まれ始めた。


「どうかなさいましたか!?」


メイドが扉を勢いよく開け飛び込んできた恐らく力と空間の歪みから、何かがあったと思い駆けつけてきたのだろう。だが、今メイドが近づけば巻き込まれるのは絶対。そこでわたしは一つのクリスタルを取り出すとメイドに向けて放り投げた。ある一言を添えて。



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