天界
夜空に青白い光を残しながら空を駆けたわたしは天界への扉を見つけその扉を叩いた。扉はゆっくりと開いていくが、少しの隙間が出来たところで身体を霧散させ扉をくぐった。今は先を急ぐことにし、霧散させた身体を形成しながら最高神の元に急いだ。途中見張りのような天使に追いかけられたが、わたしに追いつく事なく見えなくなった。身体が形成しきることには最高神がいる場所に着くことが出来た。
最高神の元に行くには一つの大きな扉をくぐらなければいけないが、その扉はわたしの目の前で固く閉ざされている。試しに扉を叩いてみたが勿論反応はない。押し開こうとしても簡単に開くようなものではないので、仕方なしに扉に手を触れる。扉の先にある空間を視ながら時空間を通ると、そこには数十の天使が武装した状態で待機していた。
「何者かは知りませんが、ここで排除させていただきます。」
一番先頭にいた天使が槍を構えながらそう言った。
「まぁこうなることは理解してたよ。いいでしょう、やってみなさい。」
今のわたしはただの侵入者。天界の門も本来は証明する必要があるがそれを短縮して無理矢理通ったものだ。いくら神とはいえあまりいいことではないだろう。なのでここでは反撃はしない。
「ずいぶんと余裕なのですね。その余裕たたき壊してあげます。」
槍を持った天使はそう言うと一瞬でわたしの胸の位置を貫いた。槍は寸分違わずわたしの胸の中心を貫いている。しかし、槍を刺した天使は驚きの表情で固まっている。その時わたしの後ろで扉が開いた。
「間に・・・合ってないか・・・。」
入ってきた一人の女は大きなため息をはきながらわたしの方に近づいてくる。
「一様連絡入れてくれるとありがたいんだけど・・・。」
「わたしの今後に関わるからすぐに聞きたかった、って言えば許してくれる?」
「それでも一本連絡入れてよ。いきなり来られると心臓に悪いからさ。」
もう一度大きくため息をはくと諦めたように聞いてきた。
「それで?何か用ですか?時空神様?」
女がそういったことで部屋の中は大混乱になった。その混乱が収まるのにしばらくかかり、取り合えず女はわたしを刺した天使を残し他の天使は全て部屋から出すことで一時的に混乱を鎮めた。
「大混乱でしたね。」
「元凶が何言ってるんだか。」
わたしが笑いながらそう言うと女は、椅子に座っている最高神は苦笑いをしながらそう帰してきた。わたしは最高神の隣で青ざめている天使に話しかけた。
「べつに何かするつもりは無いから心配しなくてもいいよ。あの時のわたしは完全に侵入者だったからあなたの対応は間違ってないよ。」
そう言ったものの青い顔が元に戻ることはない。いくらわたしが気にしていないと言っても本人は自分の主より上の者に攻撃したという事実はそれだけ恐怖を与えるのだろう。
「それで?何かあったの?特に用なく突撃してくるような人じゃないでしょ。」
「まぁね。あの子について聞いておきたいことがあってね。ちなみにそこにいる天使長さんは知ってるのかな?」
「隠してるみたい。」
そう言いながら最高神は隣に立つ天使長を見た。わたしも天使長の方を見てみると今は恐怖よりも驚きが勝ってしまっているようだ。それでも必死に隠そうとしている辺り天使長らしいが。
「い、いったい何のことでしょうか。わたしは隠し事などしておりません。」
そう言いながらも天使長の目は泳ぎまくっていた。取りあえず一番確認したかったことは分かった。最高神の方に目線を戻すとお互い目が合った。
「はぁ、もうバレてるからごまかしても意味ないよ。それに今までやってたことも全部バレてるしね。」
「え!?」
最高神が足を組みながらそう言うと天使長は驚いたようなかおをして最高神の方を見た。最高神も天使長の方を見ながら言葉を続けた。
「知っているけど聞かなかっただけ。あなたが話したがらない理由も分からないしね。」
天使長は耳まで真っ赤にしながら顔を両手で覆っている。しばらく経って諦めたように話し始めた。手は外せないようだが。
「だ、だって恥ずかしいじゃないですか。下界の人間に一目惚れして子を授かったなんて。」
「あはは・・そうなんだ。」
わたしが予想していたのは天使長本人ではなく世界の調整や監視に出していた分体の方が恋に落ちたのではないかと思っていたが、本人だったとは考えていなかった。
「まさか、天使長自身だったとはね。」
「恥ずかしい限りです。」
「恥ずかしがるようなものではないでしょう。その気持ちは大切ですよ。」
わたしが優しく言うと天使長は驚いたようなかおをした。てっきり何かしら言われるのかと思ったのだろう。
「やっぱり羨ましいと思うの?そういう感情は。」
「感情が豊かなのは羨ましいですね。わたしたちはもっていないものですから。」
軽く笑いながらそんな話をしていると天使長がどういうことかと聞いてきた。そういえば長い付き合いだがわたしたちのことを話した事はなかったと思い、説明することにした。
「わたしを含めて六神と呼ばれる者達は何かしら感情が欠落してるの。わたしと信愛は人を愛するって感情と嬉しいって感情、悲しいって感情が欠落してるの。」
「それは・・・。」
「あぁ、別にいいですよ。どうせ悲しいと思えないですしね。」
半ば自虐的な話をすると最高神も笑って、よく自分でそんなこと言えるな。と言われる。すると、天使長が疑問に思ったのか聞いてきた。信愛の神が愛するという感情を持っていないのにどうして信愛と言う名が付いているのか。というものだ。
「うーん、あんまり詳しいことはわたしも知らないの。ただ、わたしたち六神が付けた名前でもないしね。あと六神って呼び名もね。」
「そういえばそうだね。いつの間にか六神って名前が付いてて、それぞれの呼び名も生まれてたような。」
「始祖が言うにはわたしたちのことに最初に気がついた世界の住人が付けたらしいの。それがいつの間にか定着したみたい。それまではお互いが付けた名前で呼び合ってたしね。最高神はしてるんじゃない?」
腕を組みながらそう聞いてみると最高神は少し考えるような仕草をした。
「えっと・・・下の名前なら全部分かるかな。ただ、今代の上の名前は分からないな。前代なら分かるけど。」
「あんまり変わってないけどね。」
「あの・・・。」
わたしと最高神が話していると天使長が話しかけてきた。天使長はわたしたちの話が理解できていない様子で、顔に疑問の顔を浮かべている。
「ああ、ごめんね。取り合えずだけどこの世界ではあの子のことはあなたに任せるけど、それからだね。正直面倒くさい位置だよね。」
「面倒くさいですか・・・。」
天使長はいまいち理解が出来ていない様子。そこで、まずわたしたちの存在について説明する。最高神も一様聞いておくと言って聞く態勢になった。
「まずわたしや最高神は世界の神っていうことは分かるでしょ?世界よりも先に生まれて世界を管理するために動いている。天使長もその神のしたで生まれたから世界の神になるね。だけど、世界には自然に生まれる神とか人の思いから生まれる神とかもいる。そういう神のことを人の神って呼ばれるの。つまり、世界の神と下界の人の神に守られる人との間に生まれたあの子はどちらでもありどちらでもないっていうことになるわけ。」
「それで問題になるのは力を使いこなせるようになったときどちらにつくかが問題になるわけ。」
わたしの言葉に続けるように最高神が話した。単純にどちら側に付いたとしても争いになるかもしれない。また、どちらに付かなかったとしても後ろ盾のない天使が出来ることは無いに等しい。
「そんな・・・。」
「そこで、一つだけ提案。まぁ、これが一番問題なさそうだっていう判断だけどね。」
わたしがそう言うと、二人がこちらを向いた。最高神としては自分の世界の神と争いたくは無いだろうし、天使長は自分の孫が心配なのだろう。
「あの子のことわたしがもらっていっていい?」
わたしの発言に二人は固まってしまった。




