旅路6
空を飛んでオロチやシフィアナ達がいる場所に戻ったわたしは男がオロチ達を泊めている屋敷に降り立った。すると、屋敷の扉が開いて男が出てきた。
「お帰りなさいませ。どうでしたか?」
男に招かれ屋敷の中に入りながら話した。
「手応えはありかな。多分いけたとは思う。」
「そうですか。では何日追加しますか?」
男と話しながら一つの部屋に入った。そこには向かい合ってソファが置いてあり、応接が出来るようになっている。わたしがソファに座ると向かいに男が座った。
「あくまでわたしの意見ですが、オロチ様も頑張って教えておられるので大分制御が出来てきていると思われます。ただ、最大限引き出すまではもう少しかかるかと。」
男が行っているのはシフィアナの中にある力について。強大な力を制御する方法はオロチが一番精通している。だからこそこの数日で男が制御できていると認めるぐらいまで成長できたのだろう。それでもまだまだ時間はかかる。
「まぁ、当たり前でしょう。いくらオロチが分かりやすく教えても感覚的なものは最終的に自分でやってみないと分からないしね。ここまで来られたなら早いほうじゃない?ねぇオウストリント。」
目の前の男、オウストリントは苦笑いでわたしの方を見てきた。
「それを言われると何も言い返せないのですが。」
「ふふ、ごめんなさい。でもあの光景を一緒に見ていたんだもんね。あれからずいぶんと経ったね。」
「そうですね。わたしがここに街を建てると行ったとき本当に反対されましたよね。懐かしいです。」
オウストリントはわたしと最高神がこの世界を調整しているときに生まれた神で、わたしと一緒に彼岸の花園を整備した神の一人だ。その頃はまだ成長途中で今のシフィアナよりも力だけなら弱かった。それでも必死に成長したとき最高神にこの場所に街を建てると宣言したのだ。最初は最高神は猛烈に反対した。理由は簡単。あの悲惨な光景を思い出したくないのだろう。出来るならわたしも思い出したくはないが、わたしはそれよりも悲惨な景色をいくつも見てきた。それを乗り越えない限り神として存在することは不可能。その点においてオウストリントは乗り越えることが出来たからこそ街を作るといった。
「あいつも理解はしてるからね。だからこそ最終的には認めてくれたんだからよかったよ。」
「では、4日ほどでよろしいですかね?」
「それぐらいがいいかな。一様アドバイスもお願いね。そこら辺はわたしじゃ出来ないからね。」
「最初から全てが出来るというのも考え物ですね。羨ましいですが。」
わたしとオウストリントは応接室を出ると庭の方に出た。そこにはオロチとシフィアナが練習をしていた。シフィアナが司る風の力を使い数枚の紙を同じ位置に浮かばせ続けるというものだ。力が強すぎると紙は浮き上がり、弱いと落ちる。それを何枚もやることが出来れば、力を均等に分けるという能力と自分の力の限界が分かる。今は三枚の紙を必死に同じ位置にとどめようとしている。
「おつかれ、今は三枚が限界かな?」
「限界で言うなら二枚ですね。それ以上になると一切他のことが出来なくなります。」
すると、集中が切れたのか一枚の紙が落ちた。落ちた紙を持ち上げようと力を強めると、他の紙に掛けていた力が弱まり二枚共が落ち始めた。そこからは力が安定することはなく全ての紙が地面に落ちた。
「またですね。バランスが崩れた紙には過度に力を流さず、力の加え方を変えると言いましたよ。今は力を入れなかったのでそこは成長ですね。」
オロチはそう言いながら地面に落ちた紙を拾いながらシフィアナに話しかけた。
「うう、あと少しだったのに・・・。」
シフィアナは悔しそうにそう言った。
「これだけの期間でそれだけ力を調整できるなら十分成長したけどね。」
そう言いながらシフィアナの頭に手を乗せた。それで、シフィアナはわたしがいることに気がついた様子。
「あ、お帰りなさい。」
「ただいま。シフィアナは力の加え方については理解してるの。」
そう聞いてみると、シフィアナは理解はしているが感覚的にはまだ分からないことがあるとのこと。力は目に見えないので、教えることが難しい。ただ、力を可視化することが出来れば多少分かりやすく教えられるだろう。
「じゃあ、わたしが見せた方が分かりやすいかな?」
「そうですね。その方がいいかもしれません。実際流れが見えるのは大分理解しやすいですしね。」
そうと決まればわたしはシフィアナの近くに立つとオロチに紙を一枚おいてもらった。力を発動し、無数の氷の破片を操る。紙の下に破片を滑り込ませると均等に力を加えて持ち上げる。それから破片の流れを作り出し、シフィアナが司る風に近づけた。
「こうしっかりと力を伝えれば紙は浮き上がるし動かすことも出来るってとこまでは出来るのかな?」
力を操りながらシフィアナに聞いてみる。オロチが教えたことと合致はするだろう。
「浮かべたりすることは出来るんですが、紙を動かすとなると自由に動かせないんです。」
シフィアナが行っていることは分かる。恐らく紙を動かすために力を強めたり弱めたりしているから安定しないのだろう。
「オロチからは何か言われてないの?」
「力で動かそうと考えない方がいいとだけ。ただ、その意味が理解できなくて。」
もっと簡単に伝える方法もあっただろうが、オロチはそれをしなかった。恐らく自分で考え、答えを出させることを優先させたのだろう。
「なるほどね。じゃあ、今からやってみるから考えてみて。」
そう言うとわたしは空中に浮かんだ紙を動かし始めた。紙はわたしの意思通りに上下左右色々な方向に動く。シフィアナはじっとその動きと氷の破片が作る流れを見ている。
「こんな感じ。取りあえず見てほしいのは紙の周りの流れかな。」
そう言いながら手元に紙を持ってくると紙を手で取りオロチに渡した。
「あと4日はここにいるから自分なりにやってみるといいよ。多分これが理解できれば大分力を扱いやすくなるから。」
「ご安心ください。お婆様も最初はほとんど力を扱えていませんでしたから。わたしだって教えてもらいながら少しずつ身につけていったものです。」
「お前の場合は力の種類が違うんじゃない?」
シフィアナに話しかけるオウストリントにそう語りかけた。シフィアナは風を司るが、オウストリントは成長や成育を司る神なので伸ばす力が違うのだ。
「まぁそうですね。そう言われると何も言えないのですが。」
オウストリントはそう言って笑った。シフィアナの目を見ながら優しく今すぐにやらなくてもいい、時間はかかるものだ。と言った。
「それに主様やオウストリントさんとは違いシフィアナは元々人間です。そこから力を引き出すことは普通に考えてかなり難しいでしょう。取りあえず今日はこれくらいにして戻りましょうか。」
オロチがそう言うとシフィアナも頷いて屋敷の中に戻っていく。わたしも戻ろうと思ったときそういえばとオウストリントが話しかけてきた。
「天使長は彼女のこと知ってるんでしょうか。天使長自身ではないとは言え直系の孫なんですよね?」
わたしもそこで気がついたのはシフィアナを預かるとき最高神から頼まれたと言うことだ。もしシフィアナのことを知っていた放っておくような性格ではないだろう。
「もしかしたら知らないかも・・・。ちょっと確認してくる。」
「その方がいいでしょう。」
オウストリントに天界に言ってくるとだけ残し、すぐに空に飛び出した。日は完全に沈んで真っ暗な空に飛び出したわたしは青白い光を発しながら天界に急いだ。オウストリントが流星かなと言っていたが今は聞かないことにしよう。




