旅路5
街の入り口近くの降りた私たちはレンモに別れを言って街の入り口に向かった。街の前には川が流れており、そこには跳ね上がり式の橋が架けられている。その橋を渡った先で門番に止められた。
「やぁようこそ。今日はどういう目的かな?」
「山脈を越えるためかな。ここのが簡単でしょ?」
そう言いながら胸の下で腕を組んで門番の顔を見つめた。門番はフッと笑ってから道を空けた。
「ようこそ、花園の街へ。歓迎しますよ。」
私たちは街の中を進んで行くと真っ直ぐある建物に向かっていった。途中でシフィアナにどこに向かっているか聞かれたが着けば分かると言って歩く続けた。わたしが歩を止めたのは大きな門の前だった。門を見上げる二人をおいて近づいたわたしは門に手を触れた。すると門には無数の紋が現れた。
「良かった。まだ機能してた。」
それを確認したわたしは門から手を離した。今の一瞬でこの街の人達は何が起きたのか理解したようで、私たちの方を見ている。
「な、なんかすごい見られてるんですけど。」
「そりゃそうでしょ。この街は神が基礎を作った街で、この門はその頃からあるものだもん。まぁわたしが置いたんだけどね。」
そう言いながら隠していた手の甲の紋を見えるように掲げた。すると、紋が光り出し一瞬大きな光を発した。光が収まるとわたしの前に一人の男が膝をついていた。
「お久しぶりでございます。」
「相変わらず、元気そうだな。」
わたしがそう言うと男は立ち上がってシフィアナの方を見つめた。男はしばらくシフィアナを見つめた後笑いかけた。
「本当にお婆様そっくりですね。」
「だからこそ託されたんだけどね。それでなんだけど今日から三日ぐらい滞在すると思うんだけどいい?」
男にそう聞いてみると笑って「断る理由がない」と了承してくれた。シフィアナとオロチにもその事を伝えてから男について行くように言った。
「ティアさんは来ないんですか?」
「少し行きたい場所があるからね。そこに行ってからだね。」
後のことは男に任せてわたしは空を飛んでわたしを召喚に巻き込んだ奴がいる場所に向かった。
歩いて二ヶ月ほどかかった距離も空を飛べば半日で飛抜き、戻ってくる頃には空も暗くなっていた。今回は体を極小の結晶化させての飛行なので速さが出ない。それでも早いことに変わりないが。
「さて、どうしましょうかね。」
戻ってきたはいいけど目的があるわけではないのでどうしようか考えていると大きな城のバルコニーに一人の侍女がいるのを見つけた。丁度いいと思いその侍女の体を乗っ取った。それと同時に記憶も覗いておいて違和感のないように行動できるように準備したが、どうやらこの侍女は召喚者をお世話する係のものだったようで意図せず有益な情報を多く手に入れることが出来た。いったん体から得たわたしは侍女の体をベッドに寝かせ考えた。
このままこいつの体を乗っ取ってもいいけどそれだと制約が大きいな。でも、誰かしら死なないと本気でわたしを殺しに来てくれないだろうし・・・。どうするのがいいのか・・・、最悪そこにいた奴を殺すか。などと普通の人が聞いたら気絶しそうな事を考えているといつの間にか外は明るくなっていた。それに気がついたのは城の中が慌ただしくなってからだ。城の中を移動していると、丁度いいことに陛下と呼ばれていた男達や召喚者がわたしが最初に見た部屋に集まっていた。今は体も霧散させているのでばれることもないだろうとその部屋に入り込んだ。
「急に済まないな。お前達には伝えていないことがあったのだが、さすがに隠し通すことが出来なくなった。」
陛下と呼ばれた男が低い声でそう話し始めた。その声で部屋の空気が緊迫したのが分かった。
「召喚に際して本来は三人だけだったのだが実はお前達が気を失っている間に行方が分からなくなった奴が一人いるんだ。」
召喚者達はその言葉に驚いたような顔を浮かべている。恐らくだが導き手の情報が入ってきてそれで隠すことが出来なくなったのだろう。
「それはいったい・・・」
「ここにいる者全員が確信を持って言えるわけではないが、今城下で騒がれている導き手と呼ばれる存在恐らくそれこそ行方が分からない奴だろう。」
男がそういったことで召喚者達はさらに驚いた顔をした。わたしは手を叩きながら体を足からゆっくり形成していった。
「大正解。おめでとうございます。」
わたしの拍手の音に部屋にいた全員がわたしの方を見ている。そんな中完全に体が形成しきると拍手をやめた。
「お久しぶりですね。愚かな国王さん?」
わたしが笑顔でそう言うと男は真っ直ぐわたしの方を見ながら口を開いた。
「何が目的だ。まさかここで消すか?」
「あら、それがお望みで?」
そう言いながら指先に力を集め男に向けた。男を守るように盾を持った騎士のような人が間に入ったが、男は騎士の肩を叩いて下がらせた。
「そのようなつもりなどないのだろう?それでは其方が楽しめないからな。」
男はそう言うとわたしの方をじっと見つめてきた。わたしは笑うと手を下げた。
「ええ、ええ。その通りですよ。よく分かっていらっしゃる。」
一見すると穏やかに会話を交わしているだけだが普通の人が見ればわたしと男の雰囲気に臆して口を挟む勇気もないだろう。
「改めて始めまして。召喚に巻き込まれた者です。以後お見知りおきを。」
そう言いながら軽くお辞儀をした。この部屋でまともに動けているのは陛下と呼ばれた男とそれを守ろうと動いた騎士の二人だけで他の人は固まってしまって動けずにいる。
「あの時で聞けなかった質問をもう一度する。お前はいったい何者だ?」
「・・・そうですね、少なくとも人間ではありませんよ。」
そう言いながらわたしは男の方に近づいていった。召喚者の脇を通り、男の近くまで移動した。
「それと今日は一つあなた方にお知らせしに来たんです。」
「ほう、さぞかし重要なのだろうな。其方自身が来る位なのだからな。」
「ええ、あなた方にとっては重要ですね。勿論召喚者のあなた方にもね。」
そう言いながら振り返ると召喚者の三人がビクッと体を震わせた。すると、召喚者達はゆっくりとだがわたしから離れるように動いた。何故離れたかは分からないが。
「あなた方が起こした反乱、その相手がむやみに手を出すことが出来ないのを利用して起こしたんでしょ?でもね、皮肉なことにあなたが呼び出したわたしという存在が立ちはだかるなんてね。」
「どういう意味だ。」
「簡単なことです。わたしはあなた方全員に敵対するんですよ。本当に反乱をするならわたしを倒してからにしなさい。これはあなた方が偽物と評す者からの伝言とわたしからの挑戦です。」
「そうか。ならば我々が信じる者のために戦うしかあるまいな。それともう一つ、相手を濁して話してくれたことには礼を言おう。」
男がそう言うとどこからともなく剣を持った男が三人現れた。わたしを囲うように立っている男達を見回しながら
「こうなることは予想できていましたし、わたしは殺せませんよ。」
と言った。手を一人の男に向け先ほどから指先に溜めておいた力放った。放たれた力は小さい氷の弾丸となって男の頭を貫いた。貫かれた男はそのまま崩れるように倒れ、血の池を作った。仲間が死んだにもかかわらず、残りの二人は全く気にしていないように襲いかかってきた取りあえず一人のお腹に回し蹴りを当てて壁に吹き飛ばした。残りの一人は顔を掴んで地面にたたきつけた。その衝撃で顔は潰れ、脳が飛び出た。
「こんなのでわたしを倒せるとでも?」
そう言ったわたしの体に一本の剣が背中から突き刺された。後ろを見ると先ほど吹き飛ばした男が剣を刺している。男の体は普通なら死んでいてもおかしくないような損傷を負っている。
「なるほど、ずいぶんと残酷なことをなさる。」
「その状態で言われても怖くはないぞ?その剣はお前のような奴を消すための剣だ。」
「そうですか。」
わたしは剣が突き刺さったまま無理矢理体を回し男の手から剣をひねり取った。そのまま顔を殴り飛ばすと、首から上が風船のようにはじけた。
「言いましたよね。わたしは殺せないと。」
突き刺さった剣を引き抜くとすぐに再生が開始し、破れた服もすぐに元通りに戻った。




