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旅路4

 テントを片付け、私たちは森の中を進んでいた。と言っても日中に進んで夜は停止というのを繰り返していただけで、特に大きな事は起きなかった。正確に言うとシフィアナを教えながら進んでいたとき熊みたいな奴が襲いかかってきたが、邪魔になると思い頭から尻尾に掛けて横一線に斬り殺してやりましたが。その時若干オロチが残された肉塊を見つめて動かなかったので、必要なら持っていってもいいというとすぐさま肉を切り出していましたが。

 そんなこんなで予定していた一ヶ月よりも少し過ぎたぐらいで森を抜けることが出来た。森を出た先は広大な草原になっていて、遙か遠くに雲を貫く山脈が見えている。


「んーっ、ようやく抜けたー。」


わたしが伸びをしながらそう言うとオロチも隣で深呼吸をしている。


「それにしてもすごい広い草原ですね。わたしも初めて見ました。」


オロチがそう言いながら隣でしゃがんで地面を見ている。シフィアナもそれにつられるようにしてオロチの横でしゃがんだ。シフィアナの手にはこの一ヶ月の練習で出来るようになった力の結晶化によって出来た緑が入った結晶を持っている。


「主様、この草原っていったい何なんですか?少なくとも普通の草原ではないですよね。」


オロチが地面からはえる草を触りながら聞いてきた。シフィアナは草に触ろうとしていたが何かを感じたのだろう手を引っ込めた。


「さすがにオロチは気がつくか。そうだよ。この草原は普通の草原じゃない。それに元々は向こうに見える山脈まで森が続いてたの。でもこの世界が誕生してから少しだけねあることが起こったの。」


そう言いながらオロチとシフィアナから離れるようにして歩くとクルッとまわって二人に向き直った。


「この草原の名前はね『死を運ぶ草原』これだけ言えばオロチにはある程度伝わったんじゃない?」


オロチは理解したのだろう思わず後ずさりしていた。シフィアナは思い当たることがないのだろう疑問を浮かべた顔をしている。


「見せてあげる。この草原の本当の姿を。」


そう言うと時空間から一つの指一本程の大きさのガラス瓶を取り出した。ガラス瓶の中には赤い液体が半分ほど入っている。そのガラス瓶をポイッと投げた。投げられたガラス瓶はわたしとシフィアナ達の真ん中に落ち、音を立てて砕け散った。破片と一緒に飛び散った赤い液体は周辺の草を赤く染めた。


「しっかり見てて。これはこの世界の最高神が世界に残した唯一の爪痕だから。」


そう誰かに言ったというわけではない言葉に反応するように、赤く染まった草木から真っ赤の花が咲き始めた。それは円上に広がるように草から次々と花が咲き始めた。それは草原全体に広がっていく。シフィアナは自分の目が信じられないような顔をしている。


「この草原はね最高神が調整の最後にたどり着いた地でね。世界がまだ荒れていたときに多くの人々が最期を遂げた場所なの。最高神がここについたときには数え切れないぐらいの人が死に絶えていたの。わたしもこの目で見ていたから覚えてる。」


「あなたはいったい何者なんですか・・・。」


わたしが広がっていく赤い絨毯を見ながら思い出しているとシフィアナがそう聞いてきた。


「わたしは世界を司る六柱の一柱ですよ。シフィアナをわたしに託したのは最高神ですから。」


そう言いながら笑いかけた。オロチも驚いたように周りを見渡しながら近づいてきた。


「先ほど感じた違和感はこれですか。この草原はどこから持ってきたんですか?」


「そう聞いてる時点で大体分かってるでしょ?それにこの花がこれだけ咲いている場所も限られるでしょうし。」


「ええ、まさか彼岸の花園を持ってくるとは思い切ったことをしましたね。」


オロチが呆れたようにそう言った。


「正確には彼岸の花園を再現した地だけどね。」


オロチの言葉を訂正しつつ、わたしの目の前に広がった赤い花の絨毯を眺めた。シフィアナも同じようにして並んで見ている。


「この花園はね最高神があの悲劇を繰り返さないって言う覚悟を表している場所なの。多分最高神は相当ショックだったんだろうね。」


「この草原のことは昔聞いたことがありましたが、なんて言うか・・・綺麗ですね。」


シフィアナはこの光景を見て綺麗と評した。その事に驚いたのはわたしだけではなくオロチも一緒だった。


「・・・驚いた。この花園を綺麗って言うなんて。」


呟くようにそう言うとシフィアナがわたしの顔を見て理由を聞いてきた。

 普通この光景を初めて見た場合大抵は不気味やいやな感じがするなど基本的に良い印象を持つことはない。だけでシフィアナはそれを綺麗と言った。この光景を初めて見て綺麗と言ったのはわたしとオロチ、他にはメイドとこの彼岸の花園を管理する神ぐらいしか知らない。


「じゃあ、ティアさんはどうして綺麗と思ったんですか?」


私たちが花園の中を進みながらシフィアナはそう聞いてきた。


「大きな理由としては魂とか記憶についてわたしもオロチも深いところまで理解してるからかな。でもシフィアナがそう感じたのは違うでしょ?」


そう問いかけると、シフィアナは少し考えるような仕草をしてから頷いた。シフィアナが語るにはこの花園の中に流れる空気が穏やかに感じたそう。これはわたしですら感じないことだ。


「もしかしたらシフィアナには天使よりも神の方が合うかもしれないね。」


私たちは丘のようになっている頂上に登った。そこから先は緩やかな斜面になっていて、かなり先の方まで見える。


「今日の目標はあそこにある街だね。」


そう言いながらまだまだ距離があり小さく見える街を見ながら言った。オロチはその遠くに見える街を見ながら息を吐いている。


「遠いですね・・・」


「まぁ歩いて行ったらね。」


わたしは含みのある言い方をすると指を口にくわえ指笛を吹いた。指笛の音は草原に広がっていく。すると、その音に反応するように何かの鳴き声が聞こえてきた。ヒュィーと言う風を切るような鳴き声が次第に近づいてくる。


「来たね・・・」


鳴き声のする方の空を見上げると何かの影が近づいてきているのがわかる。影の形がはっきりしてくると、その形は大型の鳥の形をしている。それが分かったのだろうオロチが「げっ!」という声を発していたが気にしないことにしよう。鳥は私たちの前に音もなく着地した。改めてみると鳥の羽毛は白と黄色が混じっており、目は綺麗な緑色をしている。


「最近見ないと思ったらこんなところにいたんですね。レンモ。」


オロチはこの鳥、レンモとは少なからず面識がある。と言ってもまだ子供で蛇としての姿しか出来なかったときかなり遊ばれていたのでオロチにとっては苦手意識があるのだろう。今でも露骨に嫌そうなかおをしているが、別に仲が悪いわけではない。実際オロチの目にもレンモの目にも懐かしい者を見たような目をしている。


「さて、早速だけどあそこまでの街までお願いできる?」


レンモの目を見てそう言うと、レンモは頭を下げてわたしと目線を合わした。そのくちばしを撫でてやると気持ちよさそうに目を細めた。その後私たちを乗せて街まで飛んでくれた。シフィアナが乗るときに珍しくレンモが体を押して手伝っていた。それだけ気に入ってくれたならいいことだろう。


「主様、このまま街に行ったらかなり騒ぎになるんじゃないですか?」


オロチがそう言ったのは街まであと少しというところまで来たところだった。


「大丈夫だと思うよ。この街はね。」


わたしの中にはそう確信があった。

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