旅路3
シフィアナが振るった剣は見事に紙を捉えた。しかし、結果は先ほど同じように紙が剣と一緒になっている。オロチがすぐにシフィアナの近くに走っていき、剣から紙を取るとわたしが見やすいように紙を見せてきた。その紙は少し離れた位置から分かるぐらい切れていた。綺麗に真っ二つとまでは行かないが、半分以上綺麗切れている。これに関しては入刀の角度によって変わってくるだろうが一回目と二回目では大きな差だ。シフィアナの方に半分ほど切れている紙を見せていたオロチは何かシフィアナに言っているようだ。
「それにしても柄にもなく時空神が出てきちゃったな。今ので肉体が崩壊しなくて良かった。」
オロチとシフィアナが一緒に近づいてきたことで、シフィアナの表情がよく分かるようになった。シフィアナは自分の両手を見つめながらオロチに連れられている。
「どうだった?シフィアナ自身の中を流れる天使長の力は。今ならしっかりと感じられてるでしょ?」
「・・・これがそうなんですね。何だか懐かしいような感じがするのは何ででしょうか・・・。」
シフィアナの手には外から分かるぐらい力が集まっているのが分かる。それでもその力は集まっているだけで恐らくシフィアナ自身の意思ではないだろう。
「それが分かっただけでも良かったかな。じゃあ、これからはオロチに教えてもらいな。わたしの役目はシフィアナの中にある力を引き出すまでだからね。それ以外になるとわたしが教えるよりオロチの方が教えるのが上手だしね。」
わたしがオロチの方を見ながらそう言うとオロチも頷いている。シフィアナの方を見ると何故かわたしの方をじっと見つめていることに気がついた。
[どうしました?わたしのこと見つめて。わたしの顔に何かついてる?」
「いえ、そういうわけでは・・・先ほど感じたティアさんの力とわたしの中にある力が違うように感じたので。」
驚いたことに先ほどわたしが時空神としてシフィアナに話したとき出た力に気がついていたのだ。力が出たと言ってもオロチですら気がついていないのだ。それに気がついた時点でかなり感受性が高いことがうかがえる。
「そうなんだ。その通りだよ。わたしの力は神の力で、シフィアナの中にある天使の力とは根本から違うの。天使の力は簡単に言えばわたしたち神の力を制限した力にあたるのかな。まぁその辺りはいつか理解すればいいから。取りあえず今はその力を完璧に使いこなすことから始めようか。そうすればこんなことも出来るようになるから。」
そう言いながら地面から拾った枝に力を纏わせ気に向かって投げつけた。投げられた枝は矢のように飛んでいき、木に深々と突き刺さった。
「・・・主様、さすがにそれが出来るまでには育てられませんよ。」
「分かってる。いずれは出来るようになるから見せておこうかと思ってね。」
そう言いながら時空間からテントを取り出した。オロチも近寄ってきて設営を手伝い始める。シフィアナはと言うと何故か私たちの方を見ながら何か言いたげな様子。
「どうしました?」
「いや、先に進まないのかと思いまして・・・」
「そういえばそうですね。流れで手伝っていましたがどうするんですか?主様。」
オロチが手を動かしながらそう聞いてきた。今の状況で先に進むのも一つの手だが、わたしを巻き込んだ国がどう動くかがまだ分からない。私たちのことが伝わればすぐにでも動くだろうとのことなので、見つからないようにするのが一番だ。森の中では見つかる危険も少ないだろうし、進むにしても森の中を進むのでどちらを選んでも今は急いで移動する必要がないのだ。その事を二人に伝えると理解したようで、シフィアナも設営に加わった。
三人でやったことでかなり早く設営することが出来た。今回はシフィアナが食べたいものを作ってもらうことにした。オロチが料理の準備をしている間に力を伝達させる効率的な練習方法を教えることにした。
「まず私たちが使う力に共通することなんだけど、自分の力を凝縮させると結晶化させることが出来るの。ただ、それをしても意味がないことが多いからほとんどの神や天使は使わないんだけどね。使うのはわたしみたいに結晶化させた方が有利になる力を使える奴らだけ。でも、結晶化をするには力を瞬間的に凝縮させないといけないから力を操る練習には丁度いいの。」
「力を結晶化、ですか・・・」
「まぁ、想像できないよね。ただし、これをやる場合は絶対わたしかオロチのいる場所でやって。もし暴走したら抑える人がいないと消滅しちゃうから。」
わたしがそう言うとシフィアナは青ざめたような顔をした。恐らくわたしが注意していなかったら暇さえあれば練習していただろう。だからこそシフィアナは青くなった。こういうところを見ていると、あの天使長の血が入っているんだなと思ってしまう。
「別に隠れてやろうとする必要もないよ。シフィアナのおばあちゃんに当たる天使長も隠れて努力してたからね。そうやって見ると血が繋がってるって感じだね。シフィアナも一緒なら隠れてやろうとしても絶対ばれてただろうけどね。」
昔この世界の最高神と一緒に世界を調整していたとき、その頃はまだ天使として生まれたばかりの天使長は自分の力を磨こうと必死になっていた。天使としての仕事が終わったらすぐに練習していたのはわたしを含めその頃に一緒にいた天使や神の中では秘密のこととしている。なので、天使長はばれているとは思っていないだろう。そんなことを思い出していると、シフィアナが珍しいものを見たような顔をしていた。
「今度は何?」
「・・・そんな顔するんですね。」
「へ?」
急にそんなことを言うので変な声が出てしまった。オロチも一瞬こちらの方を見てきたがすぐに目線を火に掛けた鍋に戻した。
「どんな顔してた?」
「どんなって言われても・・・、ただ優しい顔で笑ってたので。」
「あー、そりゃわたしだって笑うよ?別に感情がないわけじゃないんだから。」
「わたしもティアさんが笑ってるのは見たことはあるんですけど、さっきのはそれとは違う顔だったので。」
「違うって?どういうこと?」
シフィアナに聞いてみると、わたしがシフィアナと出会ってから少なくとも二回はわたしが笑ったところを見たそうだが、その二回というのがすこし普通の状況ではなかったらしい。一回目はわたしがシフィアナを助けたときに化物にとどめを刺すときに一瞬だが笑ったそう。二回目はランク戦の時一回目と同じように決着がつく時一瞬口角が上がったそう。
「へー、よく見てるね。そうなんだ、わたしも知らなかったな。」
「そういうものは他人のが気づきやすいものですよ、主様。」
オロチが料理の入っている鍋を持ってそう言いながら近づいてきた。鍋の中にはおいしそうなお肉や野菜などが入っていた。
「さて、即席ですがおいしいと思いますよ。」
シフィアナは取り皿を受け取ってからすぐに鍋の中に箸を伸ばした。この世界は最高神が頑張って箸を布教した影響で世界のどこに行っても食事には箸を使う。
おいしそうに食べるシフィアナの方を見つめているとオロチがわたしに取り皿を渡してきたが、今は食べないと断っておいた。勿論食べたくないわけではないのだが、今の中途半端に肉体が残っている状態の体だと味覚が完全ではないのでおいしいものが最大限おいしくtベラレないのだ。それをオロチに伝えると、また作るのでその時には食べてとのこと。オロチと約束すると、オロチ自身も鍋に手を付け始めた。
「さて、明日には進み始めようと思ってるから今日はしっかり休むようにね。」
「はーい。」
「そういえば次の街ってどれくらい離れてるんですか?シフィアナさんのことを考えてもそこまで長い期間森の中を歩くことは出来ないと思うんですが。」
「そこは大丈夫。この森も一ヶ月あれば抜けられるだろうし、そこからは整備はされてないけど森の中よりかは歩きやすくなるから。」
「了解です。シフィアナさんはわたしが面倒を見ますが、護衛とかは主様に頼みます。」
「分かってる。」
それだけ話し合うとわたしはふと空を見上げた。そこには綺麗な星空が広がっていた。




