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日本では当たり前!? タピオカミルクティーを作ってみた!【料理】

「ただいま! 買ってきたぞー!」



幸いにも、この世界にはタピオカという概念は存在していて、さらにタピオカミルクティーという飲み物は、この世界の人々には浸透してなかったようだ。



……ただ、和菓子屋に行って、シナフィンと顔合わせするのは、いろんな意味で辛かった辛かった。




「お帰りなさい、駿我くん。いいタピオカは手に入ったの?」


「ああ、バッチリ新鮮なタピオカだ! ……新鮮なタピオカって何だ?」



いや、それ以前にいいタピオカとは……? 自分ツッコミ不可避。



「まぁまあ、そんな事気にしないで、材料も揃ったし、早速作ろうよ!」


「だな。よし、撮影準備開始!」







動画を作る際に、必要不可欠なのが、オープニングだ。いきなりタピオカを作っている動画から始まったら、視聴者に負担をかけてしまう。



「カメラをテーブルに置いて……3、2……はいどーもー! 近年異世界転生デビューを果たした、スガルと申しまーす…… ほら、ナナミールさん」


「えっ私? ……は、はぁーいどーもぉー! モーサン町で町長をやっていた、ナナミールでーす! ……こんな感じ?」


「ああ、そんな感じ。そして……」




俺はカメラを反対側に返し、メノにカメラを向けた。


彼女は恥ずかしがり屋だから、あまりこういうの乗らないかな……。




「メノちわ! 同人サークル名は【苺畑】。絵のイラスト依頼募集中の、メノです!」




数秒間、言葉が出なかった。オリジナルの挨拶に、さり気なくサークル紹介もするという、何とも配信慣れしているような雰囲気が、メノから漂っていた。




「ほらスガルくん、続けて続けて」


「…… あっ、ええと…… 今日はですね、皆さんは知らないと思います、#タピオカミルクティー__・__#を作ってみたいと思います! それでは、キッチンへGo! 」




一通り挨拶を終え、カメラを一時的に止めた。…… 色々と驚きがあった。





「えへへ、久しぶりにこんな挨拶したなぁ」


「メ、メノちゃん……? こういうのやった事あるの?」


「うんっ。地球でお絵描き配信してたから、こういうのは慣れてるんだぁ。さあ、早くキッチンに移動しよ?」


「わ、わかったわ……」




そうか。今時の同人作家は、動画を通して自分を宣伝するのも変わったことじゃないからな。これは俺の偏見だったな。



そんなメノの後を追って、俺もキッチンへと向かっていった。






「……はい、キッチンに着きましたー。今回使うのはこちら。~ここで材料を出す~」


「カットカット! ちょっと七海! カンペ丸読みするな!」


「だって……私こういうのやった事ないし……」




七海は子供のように拗ねた顔をして、裾を下へ引っ張った。


そんな態度をしている七海に対して、メノが七海の傍に寄り添っていった。




「ナナミちゃん、安心して、緊張する必要ないよ。今度は私も一緒に立って紹介するから、もう一回チャレンジしてみようよ」


「……そうね。駿河くん、もう一度お願い!」




メノの優しい励ましのお陰で、七海の調子もよくなったようだ。よし、俺も期待に応えなくちゃ。




「よーし、行くぞ……3、2……」


「はい、キッチンに着きました! 今回使う材料はですね…… こちら! インスタントタピオカ、牛乳、それに紅茶です!」



……よし、いい感じだぞ、ナナミ。笑顔で視聴者にいい印象を持たせるという、ナイステクニックだ。



「それでは、早速、調理に移りましょう! まずは鍋に水を多めに入れて……沸騰するまでフリートーク!」



……あれ、台本と違うぞメノ? でも沸騰するまでは想定外だったが……。




「実はですねぇ、私ドラゴンとスライムを融合させた、いわゆるドラ×スラの同人誌を書いてるんですけどもぉ……」


「待て待て待て!! 健全チャンネルでその話はダメだ!!」


「ドラ……スラ……? どんな話なのかしら? 気になるわ」


「じゃあ今持ってきてあげるね! ナナミちゃんも沼にハマってハマって!」



駄目だ。料理そっちのけで同人誌の話題になってしまった。



……年齢制限くらうかもしれないし、ここの部分カットするか。







少しグダったものの、何とか順調に作ることが出来た。


幸いにも、七海がタピオカミルクティーの作り方を知っていたから助かった。


俺は、店頭で売っているのですら飲んだことがないからな。思いつきでやってみたが、上手く行って良かった。




「ドラ×スラ……いいわね! このヌルヌルとしたスライムがドラゴンに絡みついて……」


「でしょでしょ! ドラゴンの顔もちょっと工夫してみたんだ。あ、擬人化バージョンもあるよ!」



「……お二人さん、カットシーンを沢山作らないで。ほら、後は容器に注ぐだけだろ?」


「あ、そうだったね。それでは、容器にタピヲカミルクティーを注いでいきます! …… スガルくん、このシーンいるの?」


「当たり前だろ。よく料理番組でやってる『こちらが完成した料理でーす!』みたいなの、俺嫌いだから、ちゃんとこういうシーンも入れなきゃな」




フッ…… これこそ投稿者の鑑。視聴者の気持ちを考えた上でのやる事。流石だな俺。




「駿我くん、何自惚れしてるのよ。その顔映してあげましょうか?」


「やめて! 全国ネットにこんな顔晒さないで!」


「もう遅いんじゃない? ほら、取り乱さないで早くやろう?」




メノ、確かにごもっともだが、同人誌の話で取り乱したあなたに同じ台詞をそのまま返してもよろしいですか?



……まあ、こういう所が俺らの悪い所だな。早く再開しよう。







容器に無事タピオカミルクティーを入れることができ、これから実食のシーンを撮影する事になった。



「……はい、それではね、早速食べて……飲んで? いやどっちだ?」


「どっちでもいいわ。気にしないで、早く食べましょ。グダグダだと視聴者が退屈しちゃうわ」


「……はい。では、いただきます」




手を合わた後、カップを片手に持ち、極太のストローを口に加え、タピオカを吸った。


口に広がったのは、ミルクティーの甘さ。歯に感じたのは、モチモチしたタピオカの感触。



「……美味しい! なんだこれ!?」


「これが私らが日本にいた頃に流行っていた飲み物よ。駿我くんもタピオカの良さがようやく分かったようね」




…… 別にタピオカ拒否してた訳じゃないんだけど。何だこのマウント取り元町長は。




「二人とも、食レポ出来てない……このスライムのようなモチモチ、それにミルクティーの甘さがマッチングして、新感覚の味ですね。皆さんも是非作ってみてはどうでしょうか?」


「あ、おいちょっと勝手に締めようとするな! ……それでは、また次の動画で!」



こうして、ゴタゴタしながらも、初めての動画撮影は、幕を閉じたのであった。




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