表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

15万円の使い道

 ふと気づくと、机にうつ伏せになっていて、肩には温かい毛布が掛かっていた。どうやら誌絵里こと、メノの同人誌の原稿作業も終わり、寝落ちしてしまったようだ。


 昨晩、隣で一緒に作業をしていたメノの方を見ると、そこは誰も居なかった。ただあるのは、美味しそうな匂いだけだった。




「おはよう、駿我くん。昨日はお疲れ様。はい、朝ごはん」




 なるほど、美味しそうな匂いの正体はこれだったのか。寝ぼけた眼に映ったのは、ホクホクの白米にコーンスープ、海苔の佃煮という、THE・日本の朝食だった。ちゃんと自炊してるの偉いな......。




「それでは、いただきまぁす。ほら駿我くん、食べて食べて」


「どれどれ......健康的で昨日の作業の後にはもってこいだな。とっても美味しいよ」


「えへへ、嬉しいよ駿我くん。今日はとうとうパーティ開設だねぇ」




 そういえばそうだった。同人誌作業をしてたもんだから、そんな事すっかり忘れていた。......メノの職業は同人作家ってことになるのかな?



 そういえば、まだパソコンを買ってなかった。15万円手にあるから、10万円のパソコンを買っても5万円お釣りが出るぞ......でも、本当にこのお金は俺の物としていていいのだろうか? 七海にも渡すべきじゃ......いや、あいつは手伝うって言っていただけだし、別に大丈夫か。



 ともかく、メノだ。スケッチで罠を作ってなかったら、この15万円だってなかったに等しい。やっぱりここは......。




「......なあメノ、ハイヤーレッドドラゴンの15万円の件だけど......」


「それがどうしたの?」


「やっぱり俺が受け取ることは出来ない。七海やメノのお陰で手に入ったこの15万円を、俺一人だけで使うなんて、出来るわけない」


「......逆に私だって受け取れないよ。自分の趣味の為に仕掛けた罠に、たまたまドラゴンが引っかかっただけだし。だから、駿我くんのもので問題ないよ」


「だからって! ......痛っ!」




 突如おでこに感じた痛みは、メノのデコピンから伝わったものだった。優しく怒ったようなメノの顔が、俺の顔面に接近してきた。




「朝から良くないよ、こんな話。決断はナナミさんに決めてもらうでいいでしょ?」


「そ、そうだな......」



 

 メノの言う通りだ、朝から金の話なんてするもんじゃない。爽やかな朝を送れないだろう、と自分で言い聞かせながら、また白米を口に入れたのだった。







「おはよう二人とも、ゆうべははお楽しみ」


「してねーよ!? てかなんで不機嫌なの!?」




 集合場所のギルド集会所に行くと、不貞腐れた七海が椅子に座っていた。




「ナナミさん、私も入ることにしたよ!」


「ホント!? こんなスガルとかいう奴と二人きりとか耐えられないもん!」




 どういう意味だそれ。......やっぱり昨日のが原因だったかな?




「あ、あのナナミ、昨日の15万円はどうするの?」


「......みんなのお金でいいじゃない? もう私達はパーティなんだから、誰のお金でもないわよ。だから、パソコンだってペンタブだって何だって買っていいんじゃないの? メノちゃん、ずっと欲しい欲しい言っていたじゃない?」


「わわわわわ!!! ナナミさんそれは言っちゃだめぇ!」




 ......やっぱりためらっていたいたんだな。同人誌活動だけじゃあそんなお金はいる訳ないもんな。



「よし、パーティ結成記念として、みんなそれぞれ好きな物買おうよ。俺はパソコン、メノはペンタブ、七海は......」


「私はいらないわ。なんせ、()()だから」




 何だこいつ。もう町長やめる癖にマウント取ってきて。七海には買ってやんないしよ。




「......あの~、スガル様一行でしょうか? 会員証が出来ましたので、受け取ってください」


「ありがとうございます!」



 こうして、パーティが結成したのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ