コラボ依頼
......どうやら、意識を失ってしまったようだ。
頭の下にはフワフワの何かがあることから、ここは布団の中であることが直ぐに分かった。......だけどこれ、メノの布団じゃないか? まあそれは置いといて......。
昨日は動画編集していたもんだから、疲れた体であんな無茶したら、ふっと意識が無くなるのも無理はないか......。
「......あ、起きたわね。おはよう、駿我くん。急に倒れたものだから、本当に心配したんだからね?」
「ああ、おはよう七海。昨日は本当にありがとう」
「何言ってるの、私のお陰じゃないわ。礼を言うんだったら、駿我くんの後ろの人に言ってもらえるかしら?」
手を床に置き、クルッと後ろへ体を向けると、友紀香ちゃんが正座で座っていた。
「わ、私ですか!? 私はただナナミールさんに危険を教えてあげただけで、実際にアブゾールスライムとは戦ってないですし......」
「ううん、君がいたから、危機を回避することが出来たんだ。もしも保冷剤が無かったら、俺はスライムプレイ同人誌のネタになっていたところだよ......」
「あ、アハハハ......あ、メノさん」
キッチンから、焼きトーストを運んできたメノがやって来た。この様子だと、しっかり疲れは取れているな。
「おはよぉ、駿我くん、みんな。昨日は私を危険から守ってくれて、本当にありがとう。そして......駿我くん、約束守ってくれて、あ、ありがとう」
「ど、どういたしまして......」
何だか、照れ臭かった。ここまで女の子に感謝された事なんて、指で数えるほどしかなかったから。
「約束? 一体何の話かしら?」
「な、何でもないよぉ!! ほらほら、出来立ての内に早く食べよ!!」
「ハハ、そうだな。じゃあ、いただきます」
焼きたてのバタートーストを口に入れた。口の中で、バターの味が広がった。寝起きだから当たり前の事しか言えなかった。
「......メノちゃん、何だか最近おかしく感じない?」
「う、うん。ここら周辺のモンスターって比較的弱いモンスターが住んでいるはずなのに、ハイヤーレッドドラゴンが来たり、アブゾールスライムが来たりで......強いモンスターが集まってきてるよね......」
「それよ。今まではそんなケースは無かったのに、駿我くんが来てからというもの、急に強いモンスターが現れたのよね。......私が推測するにはね、この町は初心者が沢山集まってる町だから、力が弱い人ばかりなのよ。だから、今まではスルーしていたモンスター達も、急にSランク魔法を使える人間が現れたら、モンスター達もそれに反応したんじゃないかしら?」
......ん? 俺ってこの町にはいらない子なのか?
俺がいたら、このモーサン町にさらなる危険が迫ってくるかもしれない。つまりこの町での俺の立ち位置ってのは、#疫病神__・__#って事か......。
「異世界転生したら町の人から疫病神扱いされました、ってか......」
「ち、違う違う!! あくまでも私の予想だから当てにしないでほしいわ!! それに、私達の目的は地球人を探して、魔王を倒すんでしょ? だったら、この町を出てその人達を探すしかないでしょ? この町にわざわざ戻って来る事もないでしょ?」
「えっ......ナナミールさん達、こっちにもう戻ってこないんですか?」
「ああああ!! 大丈夫よ友紀香ちゃん!! ちゃんと戻ってくるから!!」
何してるんだが......元町長の口から聞きたくなかったなぁ......。
「ごちそう様でしたぁ。あ、そうだ駿我くん、動画の伸び具合確認しなくていいの?」
「そうだった!! 早く食べて確認しなきゃ......」
※
食事を終わらせ、みんなソワソワした気持ちでパソコンの前に集まった。俺も心臓の音がいつもより早く聞こえる。
「そういえば駿我くんって、編集スキルまあまあ高いよね」
「あっちの世界に居た頃に、少しゲーム実況の動画とか出していたからね。そこで慣れてる感じかな」
「へぇ、初めてじゃなかったのね。だからあんなこだわっていたわけねぇ......」
そんな会話を繰り広げている内に、動画投稿サイト「magic channel」のマイページ画面へアクセスする事が出来た。そして、唾をゴクリ、と飲み、昨日上げた動画をダブルクリックした。
「再生数、5000回......見積もってた数の半分か......」
「ま、まあ最初にしてはよくやった方じゃないかな? ほら、コメントも幾つか届いてるし」
コメント欄を確認すると、半数が「おいしそう!!」 という意見で、もう半数が「得体の知れない飲み物飲んでて大丈夫か?」という意見だった。......まあ、日本と変わらないか、そういう所は......。
「す、スガルさん、なんかDM届いてませんか?」
「あ、本当だ。なになに……」
友紀香ちゃんの言葉で気づいたDMをダブルクリックすると、こんな文が書かれていた。
【コラボ依頼】
苺畑のみなさん、初めまして。突然のDMですみません。トールドと申します。
タピオカミルクティーを作ってみたの動画を拝見させて頂きました。テンポも良く、料理の過程も丁寧に紹介していて、非常に好感を持てました。
そして、突然変な事を言いますが、僕もスガルさん達と同じで、数年前に地球から異世界転生をしてきた者です。僕が転生された町は地球人がいなくて、ずっと孤独でした。それでもめげずに僕自身も動画投稿をして、同じ地球人が見つかればいいな、なんて思ってました。そして昨日の夜、スガルさんの挨拶で、この人も地球人なんだ! と大変喜びました。
本題に入らせてもらいますが、僕とコラボさせて頂けないでしょうか。内容は許可を頂いてから決めるつもりです。お返事待ってます。
「──だって。七海、メノ、どうする?」
「いいんじゃない? 私達の目的は地球人探しなんだし、丁度いいじゃない」
「私も賛成だよ。コラボは知名度を上げる近道だし、それに楽しそうだからね。…… ケモナー沼にハマらせるチャンスだもんねぇ」
「ケモナーにさせるかはどうあれ、コラボは決定だな。よし、返信の文を送るか」
カタカタカタ、とキーボードをタップしている俺の後ろで、七海とメノは改めて荷造りを始めた。そして、隣には、友紀香ちゃんが不安そうな顔で座っていた。
「…… 友紀香ちゃん、やっぱり俺らと着いていくか?」
「…… いえ、私は行きません。私の役目は、この町を豊かにすること。モンスターから町の人を守る事。そして…… スガルさん達が安心して帰ってこれる環境を作ることですから」
「そうか…… おい萌子、どうせ聞いてんだろ? さっさと声を聞かせろよ」
〔……あんたも分かってきたわね。まずはアブゾールスライム討伐おめでとう。よく頑張ったわね〕
「それより、友紀香ちゃんを一人にさせてどうするつもりだよ? 可哀想だろうが」
〔……ふん。知らないわよそんな事。沢山特典はあげたんだし、何も困らない筈よ。多少ボッチだろうと平気平気〕
「──萌子!! お前いい加減にしろよ!!」
俺の怒声が、部屋中に響き渡る。みんなは揃えて、ビクッと肩をあげた。
「友紀香ちゃんはなあ、まだこっちに来て一週間も経たないんだぞ!? それにいきなり町長になれなんて言われて、無茶もいい所だよ!! お前はそんな事出来るのかよ!!」
「す、スガルさん……私の為にそこまでしなくても……」
「するさ!! これじゃあ友紀香ちゃんがあんまりだよ!! 」
〔……何よ、一人が嫌な事くらい、私が一番知ってるわよ!! 私だって…… 私だってこんな事望んでやってるんじゃないわよ!! もう知らない!! 私はもう手助けも何もしてやんないんだからっっ!!〕
プツリ、と萌子の声は途絶えてしまった。…… 俺も少し言い過ぎたかな。
〔スガルさん。聞こえますか?〕
「うわぁっ!! だ、誰だ!?」




