希望
今日は朝から雨が降っていた。
僕の代わりに涙を流してくれているのだろうか。
彼女に会う最後の日だというのにいつものように笑えなかった。僕の笑顔が素敵と言ってくれた君にもう一度笑顔を見せてやりたかったのに。
高校三年生の時、初めて同じクラスになった。
それまでに何度か話した事はあった。一年生の時からお互いの事を認識していて、共通の友達を交えて交流していた。
同じクラスになってからは友達を交える事なく二人で話す機会が増えた。
初めて知った君の趣味、好きな食べ物、嫌いな食べ物、得意な教科、苦手な教科そして君の好きな人。
その相手は僕ではなかった。
楽しそうに彼の話をする君の笑顔は、どんな話をしている時よりも輝いていた。その笑顔を見るたびに僕は嬉しくて仕方がなかった。それと同時に、心をえぐり取られたような悲しさも込み上げて来た。
自分の気持ちを伝えてしまうと今の関係が崩れてしまうのではないだろうか。そんな事を考えるととても気持ちを伝える事は出来なかった。
君の好きな人が僕でなくとも、もっと早くに僕の気持ちを伝えておけば良かったとこれから一生後悔するだろう。
もう二度と君の事を知る機会がない。
もう二度と僕の事を伝える機会がない。
ふと射す陽の光が僕の視界に入ると同時に涙が止まらなくなった。
到底素敵とは言い難い精一杯の笑顔を君に向けた。
僕は君が少し微笑んでくれたように感じて最後の言葉を伝えた。
「さよなら、またいつか。」と
作品を読んでくださってありがとうございます。
もしよろしければ他の作品も是非読んでくださると幸いです。
皆さんの大切な人に大事な気持ちを伝えれますように。
ハッピーメリークリスマス