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消えてしまえばいいのに

作者: 未雪織

「あなたなんか消えてしまえばいいのに」

ビールの缶を片手に私は言った。

あなたは別になにも言わない。

散らかった部屋の小さなテーブルに2人きり。テーブルには10本近い缶が転がっている。

頭が重くなっても、ビールを飲み続けた。気分が良くないが、まあいい。


あなたは私よりもつまらなそうな顔をしている。

いつもつまらなそうで、私も余計に面白くないのだ。

どうしてこうなったのかなんてどうでもいいんだけど、とりあえずあなたが悪いことに違いはない。

だからとりあえず、あなたが消えれば、それでいい。


空になったビールの缶を、あなたに向かって投げる。酔っているせいか、缶は横を通り床に落ちた。

あなたはつまらなそうな顔で、そのまま。

私の舌打ちは、テレビから流れる笑い声にかき消される。


私は目を閉じて後ろに倒れ込んだ。

潰れたクッションに着地する。このまま眠りたかったけど、ダメだった。

眠れない。

仕方なく目を開けて、天井をボーッと眺めた。あなたは消えない。その事実は、私の頭にへばりついて重い。


いつだってあなたはつまらなそうだった。どこに行っても、何をしても、つまらなそうだった。

デパートでの買い物も、水族館に言った時も、映画を見た時も、。


けれど、たまに私につられて笑った。私が歌を歌う時、はじめて手を繋いだ時、キスをした時。

本当に少しだけ、目を細くして笑った。

ちょっと猫みたいに見える笑顔だった。

その顔が、私は好きだった気がする。

たしか好きだったような、気がする。


だからこそ、あなたが消えればいい。

綺麗さっぱり、いなくなればいい。

笑わなくなったあなたは、もういらないんだ。このままなんて、私は辛い。

私の好きなあなたがいないなら、全て消えてしまえばいいのに。


もう、私があなたの笑顔を見る事はない。

見れたらいいとも思っていないけど。


隣にあるクッションをあなたに向かって投げた。投げるものが大きいから、酔っていても当たる。

からからと、缶がぶつかって転がる音がする。

体を起こすと、机の上であなたの写真が倒れていた。


あなたはもういない。

ならば、私の中からも消えてしまえばいいのに。


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