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芸人

作者: @もあい

今日は芸人になって初めての番組収録だ。僕が子供の頃からしている長寿番組が初出演なので僕はこれ以上にないほど緊張している。昨日も緊張して全く寝られなかった。今も緊張で心臓が周りに聞こえそうなほどドキドキしている。


「落内さんもうそろそろ出番です。こちらへどうぞ」


 アシスタントの子が僕を呼びに来た。緊張で口から心臓が出そうだ。けどここで結果を出さないと僕の今後に関わってくるから頑張らないといけない。収録するスタジオへ向かう。顔は緊張で強張り、歩いていると無意識に手と足が一緒に出てしまっている。


「落内さん入られまーす」


 スタジオ内にはテレビで見ていた人たちがセットの椅子へ座って既に準備を終わらしていた。ある人はギリギリまで台本を読み、ある人は共演者と楽しそうに会話をしていた。


「よ、よろしくおにゃがいしますっ」


 噛んでしまった。僕はどれだけ緊張しているんだ。恥ずかしくなり顔が真っ赤になる。


「よろしく。落内君。そんなに緊張しなくてもいいんだよ。リラックスリラックス」

「は、はい。よろしくお願いします」


 番組収録が始まった。この番組は司会者がルーレットを回し針が止まったところに書かれている名前の人が五分程度のフリートークをしていくというものだ。毎回出演者が話す内容が面白く、昔から好きな番組だ。芸人を目指したきっかけの番組でもある。


 トップバッターは面白戦隊の田中さんだった。面白戦隊はこの番組の常連で芸歴も一五年と安定した中堅芸人である。


「僕占いが好きで毎朝チェックするんですよ。今日は何位かなって毎朝の楽しみになっていて何位かでその日のテンションが変わったりして」

「それは芸人としてどうやねん」


 すかさず司会者がツッコミを入れる。僕も自然に笑っていた。


「いや、最下位でもねラッキーアイテムてのがあるんでそれを持ってたらそこまでテンションは下がらないんですよ。赤いものがラッキーアイテムだったら赤いモノを身に着けますし、甘いモノだったら一日ずっと食べますし」

「糖尿病になるで」

「そこまで頻繁に食べてる訳じゃないんで多分大丈夫です。それでね、あっ僕おとめ座なんですけど最下位だったんですよ。それでいつも通りラッキーアイテムなんかな思ってみたらホワイトハウスって書いてあってホワイトハウスっ って思わず二度見しちゃいました」

「ほんで、どうしたん」

「はい、一応もっときました。白いネズミ」

「それ、ホワイトマウスやん」


 司会者のツッコミが面白く笑いが止まらない。田中さんの話が終わりもう一度ルーレットを回す。[落内]僕の名前で止まってしまった。


「おっ、初登場の落内くんやね。ほな、話お願い」

「僕落ち着けた話できないんですけど面白く言いますね」

「なんか不穏な感じやね」

「僕、中学生でぐれちゃってろくに学校行かず喧嘩ばっかりしてたんですけど。そのときにほんまヤバい奴に喧嘩売っちゃって……」

「ほうほう」

「それでボコボコニされて連れて行かれて、ほんまやばかったんですよ

「ん? まさか終わりじゃないよね」

「え、終わりですけど……」

「自分オチってもんを知らんのか」

「初めに言ったじゃないですか。『オチ付けた』話できないって」


 以降落内が番組に呼ばれることはなかった。






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