1 フランス旅行
大学院に在学中、学会発表のためにフランスのリヨンとチェコに出かけた。同じ学会で発表する同期のTくんと一緒に、2週間、宿代をケチってホテルのおなじ部屋に泊まった。
昼間は学会に出席して英語の発表を聞き、夜に学会主催のパーティに参加して、ホテルに戻ったら明日の発表のチェックをして寝る。休日の前日には、Tくんが「あした観光地まわろうよ」と誘ってくれた。僕はTくんのパワフルさに感心し、自分の引きこもり具合にあきれた。僕は休日の朝になったら、ホテルでニコニコ動画でも見ようかと考えていたのだ。日本から遠く離れたフランスの、外国人があふれる観光地リヨンで、ニコニコ動画を見る。自分でも何をやってるんだろうと思った。おそらく連日の英語の発表と、海外の刺激につかれていたんだと思う。普段見ているものを見て安心したかったのかもしれない。それか、そのときの僕は大学の研究にかなり疲れていたので、観光する根性がなくなっていたのかもしれない。僕は「Tくんすげえなあ」と本気でつぶやいて、彼のプランに従った。
後から考えると、そういえば僕は普段から、旅行先では観光地には行かずに散歩に出かけていた。サークルなどで合宿所に泊まった日には、朝早くから合宿所のまわりを散歩する。ひとり旅なら路地や図書館へ行って、その国や地域の空気を吸う。地面の感触、空のいろ、路地のよごれを見たい。たとえホテルの周りにコンビニやチェーン店しかなくても、その土地を歩いて回らないと落ち着かない。自分がどこにいるのかを把握したいのだと思う。移動中はさっぱり地図も開かないくせにだ。なのでよく旅行から帰ったあと、「観光地はどこに行ったの?」と聞かれると困ってしまう。
もちろん、僕を観光地にさそってくれたTくんには感謝している。彼のおかげでリヨンのノートルダム大聖堂にも行けたし、劇場でオペラの「アイーダ」も見れた。チェコでは有名なカレル橋にも行けたし、おいしいビールが飲めた。僕ひとりだったら絶対に経験できなかったと断言できる。この体験は、後で小説の執筆にも多いに役にたった。ただやっぱり、僕がどこかで「散歩がしたい」と言って、彼と別れた記憶がある。やっぱり散歩がしたかった。僕はバスやモノレールを使わず、ホテルまでの道を歩いた。「その国に行った」気分を味わう方法として、観光地を回るか散歩するか、それだけの違いだけだと思う。どちらも大事なような気がする。
こういうこともあって、旅行先を選ぶとき、その土地が気軽に散歩できる場所かどうかは、僕にとって大事な要素だ。必然的に治安がいいところになるけど、最も適しているのが日本ということになってしまう。東南アジアなんかは怖くてひとりで歩けなかった。だけど海外はとても刺激が多い。どうしたものか。
こんな感じです。
「きもち」を優先すると動きやセリフが少なくなるかな……。
フランスでワイン、チェコでビールを飲みまくりました。




