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こんな夢を観た

こんな夢を観た「裏山の山賊」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/11/01

 近頃、裏山に山賊が出るという。町へ行くには近いので、よく通る道だった。

「何だか怖いねぇ。いきなり、刃物で切りつけてきたりするのかな」喫茶店でチーズケーキを食べながら、わたしは言う。

「あれ、お前知らねえの? そいつ、光り物とか使わねえんだぜ」小ばかにしたような口調の桑田孝夫。

「じゃあ、棒を振りまわすとか、そんな?」

「違うって」クルクルッとフォークで巻き上げたパスタを、一口でほおばる。「聞いた話だけどな。その山賊、左腕におっかねえ武器を仕込んでるんだってよ」

「へーっ、それってマンガの主人公みたいでかっこいいね」無意識に、赤い全身タイツ姿のタフガイを思い浮かべていた。


「あー、違う、違う。全然、そんなんじゃないから」顔の前で手を振って否定する。

「わかった、けっこう太っちょだったりするんじゃない?」

「体格のことまでは知らねえけど、仕込んでるっつう武器は、ビームとかなんとかじゃねえから。そんなハイテクなもん、現実世界にゃ、ねえだろよ」

「なんだ、ただの凶器か。刀とか、鉄パイプとか……」期待した分、妙にがっかりしてしまう。

「えーとな、仕込んでるのは生きたヘビだ。それも、毒ヘビなっ」桑田が言った。

「どうやって?!」わたしは驚いた。そんなことが可能なものだろうか?


「どうやったかなんて、おれは知らん。だが、そんな噂だぞ。ついでに言うと、コブラとかじゃねえ、マムシだ。で、そいつの呼び名も『マムシ』って言うらしい」

「マムシ――」後の言葉が続かなかった。同じ毒ヘビだというのに、なぜだろう、急にかっこ悪くなってしまう。 

「名前からして、いかにもしつこそうだよな。関わりたくねえなあ、そんな奴。山賊なんぞ、ただでさえごめんこうむるが」話の合間に、パスタを巻き始める。

 わたしは、チーズケーキの最後の山にフォークを突き刺し、口へと運んだ。せめて、「ハブ」だったら、もう少し体裁がいいのにな、などと思っていた。よりにもよって「マムシ」とは、あまりにも冴えない。


 パスタを食べ終えた桑田が、突然、かしこまって、作り声を出す。

「おれは山賊マムシ。左腕に毒ヘビを持つ男だ」

 コーヒーを飲みかけていたわたしは、思わず吹きそうになった。

「ちょっと、桑田ってば! 鼻に逆流するとこだったじゃん」わたしは抗議した。笑いのツボにはまったわたしは、ただもう、可笑しくて仕方がない。

 山賊マムシ、実際にはどんな容姿をしているのだろう。ますます気になる。

「ねえ。その山賊ってば、どんな顔をしてると思う?」笑いの発作が治まると、意見を求めてみた。

「そうだなあ。毒ヘビなんかで脅す野郎だぜ、陰険で暗い奴に違いない。ナメクジみたいな顔をしているじゃないかな」それが桑田の答えだった。

「それ、最高にキモイよね……」


 何日か経って、裏山の山賊が捕まった、というニュースを目にした。

 テレビの画面に映し出されたその人相は、桑田の思い描いていた、まさにそのものズバリな顔だった。

 逮捕されて明らかになったことが他にもある。

 左腕に仕込んでいた毒ヘビというのは、実はアオダイショウだったという事実だ。

「アオダイショウって、確か無毒だったような。あの人、自分が噛まれるのが怖くって、そんなハッタリをかませたのかな、やっぱり」

 人ごとながら、情けないやら、憐れでならなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 腕に無毒とはいえ、蛇を仕込むのは、なかなか度胸ありますねぇこの山賊。 そして自分はハブよりマムシの方がかっこいいと思ってしまいました。 とても面白かったです。
[一言] ナメクジみたいな顔だなんて! 決めつける桑田さんに大笑いしましたが、実際にそんな顔だった山賊にはもっと笑いました。 のっぺりしていて垂れ目なのかなあと想像。 腕に蛇を仕込んでいる時点ですごい…
[一言] コブラ、大好きな漫画のひとつです。山賊マムシ……しかも青大将かー。そういえば、我が家で葬式を出すたびに、なぜかいつも青大将が出てきます。3年前も出てきました。守り蛇なのでしょうか。
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