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射城学園の殺し屋  作者: 黒楼海璃
壱 『異常』に『異常』で『普通』じゃない
9/44

捌殺

 あの後、業者がやって来て広場は完璧に修理された。俺が部屋に戻るとシュンがいきなり質問攻めをしてきたので、「理事長からの命令があった」とだけ言うとそれ以上何も聞いてこなかった。そして次の朝。


「おいシュン」

「ごかー」


 学校の日、シュンは鼾を掻いて寝ていた。制服に着替えた俺はシュンを何度も起こそうとするが、全然起きない。


「おい起きろシュン」

「があー」


 俺はシュンの体を揺らすが全く起きる気配が無い。俺はもう朝飯は既に食べ終わっているし、学校に行く用意も出来ている。できれば俺以外の唯一の男子であるシュンと一緒に行きたかったが、これは多分起きるのは相当時間が掛かると思い


「……ほっとくか」


 俺は寝たままのシュンを放って学校に行くことにした。てか、シュンの『異常』はだらしなさで良いんじゃねえのか。ちなみにも誘おうと思ったが、あいつは絶対まだ寝ているという確信があるから止めておこう。



 学校は寮から歩いて五分ぐらいの所にある。なのであっという間に着いた俺は真新しい上履きを履くと、自分の教室に向かった。だがここで一つの疑問があった。まず俺は一番最初のクラス番号を見るとそこは『1-A』と書かれていた。そこまでは良い。だが次が問題だ。その次のクラス番号は『1-W』と書かれていた。


「……何でBじゃないんだ」


 普通はアルファベット順の筈なのにそれを大きく飛び越してる。しかもその次のクラスは『1-E』だった。


「何なんだ一体……」


 そしてその次は『1-M』クラス。何が何だか分からない。するとその次は『1-R』クラス。ここが俺のクラスらしい。


「一体どんな奴がいるんだ……」


 俺は恐る恐るドアを開ける。そして驚く。


「……おいおい」


 最初に驚いたのは席の数だ。机が七つしかない。そして二つ目は、一人の女子生徒が席に座っていた。その女子は黒髪のおさげで眼鏡をかけている。そしてキチンと手入れされたブレザーをキチンと着ていて、こちらもキチンと手入れされたスカートの丈も膝より下、白いソックスもキチンと履いているし、上履きも綺麗に磨かれている。机の上には開いたノートと教科書。多分予習か何かをしていたんだろう。ノートには色ペンで色々とアンダーラインがしてあるし、図で分かりやすくまとめられている。教科書も何回も読み返した跡がある。見た目からどうも真面目さが伝わってくる。それも良い。だが問題は


「……すう」


 その女子はシャーペンを握ったまま綺麗に眠っていた。俺はすぐに考える。何故この女子がシャーペンを握ったまま綺麗に寝ているのかを。


「……まあ大方、勉強の途中で疲れて眠ってしまったって所か」


 とりあえずそういう事にしておく。この女子が書いたと思われるノートを見ると、かなり手が込んである。恐らく全ページがこんな感じだろう。こんなに懇切丁寧に分かりやすく書き続けていたらそりゃ疲れて寝たりする筈だ。なので俺は窓側の椅子に座り、スマホをいじって時間を潰す。


「……しかし、何で机が七つしかないんだ・・」


 そんな事を呟いていると、


「……ん」


 不意に声がした。その声の主はさっきまで寝ていた女子だ。


「……あれ、私いつの間に……」

「やっと起きてくれたか」

「ひゃあっ!?」


 俺が声を掛けるとその女子は声を上げ、握ってたシャーペンを放した。そして声のした俺の方を見る。


「え、えっと、いつからいました?」

「十分ぐらい前だ。ここに入ったらあんたが寝ていて、起こすのも悪いから起きるのを待ってたんだ」

「え、ええ!?」


 その女子は顔が真っ赤になる。そして両手で顔を隠す。


「そ、そ、そんな、わ、わ、私」

「一つ聞きたいんだが、俺の教室はここで合っているのか?」

「え?」


 女子は手を顔から放すと俺を見る。


「あ、もしかして、転校してきたっていう」

「ああそうだ」

「そ、そうですか。あ、はいそうです。あなたはこのR組で合ってますよ。ところで私からも一つ良いですか?」

「何だ」

神楽かぐらざか君は来てないんですか?」

「シュンなら寝てる。全然起きないからほったらかしにした」


 俺がそう答えると女子は溜息を吐く。


「そうですか。あの私、二宮にのみやかなと言います。今後ともどうぞ宜しくお願いします」


 二宮金実は椅子から立ち上がりペコリと御辞儀をする。


「……服部はっとりじゅう兵衛べえだ。宜しく」


 俺は一瞬固まった。よく分からんがこいつからは真面目という雰囲気が伝わってくる。しかもこの二宮はどうも、伊賀異業学園の栗原綾香に似ている。二宮はあいつと同じ黒髪のおさげで眼鏡を掛けていたし、栗原も栗原で結構真面目な奴だった。


「あの、服部さん」


 すると二宮が俺に話しかけてきた。


「何だ」

「あの、服部さんが座ってる席……」

「ん?何だ、誰かの席だったか?」

「いえ、その席、先生が転校生さん用に置いた物なんですが、なんでその席があなたの席って分かったんですか?」

「……この机は真新しい。傷一つ付いていない。そして中には何も入っていない。つまりこれは誰も使ってない。恐らく転校してきた俺用だろうなと思っただけだ」

「成程。凄いですね」


 二宮は感心しているが、分析ぐらい出来ないと忍者はやってけねえんだよ。


「つーか二宮、俺からも色々聞きたい事があるんだが」

「はい、何ですか?」

「なんでこのクラスがR組なんだ?あとA組の次が何でWなんだよ」


 何故かこの学校のクラス分けはA、W、E、M、Rになっている。俺はそれがどうしても分からない。


「あー、それがですね、この学校は『異常』の種類でクラスを分けているそうです」

「『異常』の種類?」

「はい。

A(Abnormal)組は人知を超えた究極の『異常』を秘めた、射城学園の主席クラス。

W(Warrior)組は武人などの戦闘を主体とするクラス。

E(Esper)組は超能力や魔術、精霊術を持つクラス。

M(Medium)組は巫女や日本人物の末裔などのクラス。

R(Rest)組はそれ以外の『異常』、その他のクラス。

になってるんです」


 俺はそれを聞いて納得した。あれはアルファベット順じゃなくてそれぞれ『異常』、『武人』、『超能力』、『巫女』、『その他』のイニシャルだったのか。てかそんなクラス分けあんのかよ。


「んじゃあ、次に聞くが、このクラスの机が七つしかない理由は?」


 それも聞きたい。ここに来る途中別のクラスをドアの窓から覗いてみたが、机は五十ぐらいはあった。


「それはですね、このクラスは転校生、男子生徒、その他の『異常』しか集まらないので、七人しかいないんです」

「へえ」


 俺は納得する。てかこのクラス男子が集中してんだな。まあ良いけど。


「で、俺とあんたとシュンを除いた残り四人は?」

「一人は毎日来てるんですけど、残りの一人は週に半分、二人は入学以来二、三回ぐらいしか来てないんです」


 大丈夫なのかこのクラス。と思っていると、ドアの開く音がした。二宮が振り向く。


「あ、れんざきさん」

「…………」


 そいつは赤いショートヘアーに黒い目の、無表情の女子。


「お早う御座います煉崎さん」

「…………」


 二宮が挨拶するが女子は何も言わずに席に座る。


「相変わらず無口なんですね煉崎さん」

「二宮、こいつか?」

「はい。彼女は煉崎テラさん。神楽坂君を合わせた私達三人が大体の面子です」

「…………」


 二宮がそう言うと煉崎テラは俺の顔を無表情でジーっと見始めた。


「……何だよ」

「…………」


 煉崎は無言だ。


「用があるなら喋ってもらわないと困るんだが」

「…………」

「服部さん、煉崎さんはいつもこんな感じなので気にしない方が良いですよ」

「は?」

「煉崎さんはこうやって誰かの顔をジーっと見る事が多いですから」


 なんじゃそりゃ。てか二宮、お前何でシュンは君付けで俺はさん付けなんだよ。

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