弐拾捌殺
俺は黒眼の表示を見た。
『真田刃刃幸の着ている浴衣の下にヒップホルスター、そこに銃:ウィンチェスターM1892ライフル(装弾数7発)ソードオフモデル二丁有り』
今度は銃持ちか。しかもウィンチェスター。
ウィンチェスターM1892ライフルは「西部を征服した銃」と呼ばれるM1866、M1873の発展型である。コッキングが片手だけで操作出来るレバーアクション式なので二丁拳銃の時に重宝する散弾銃である。それにソードオフモデルは銃身と銃床を切り詰めて秘匿しやすいように作られた形。それが二丁だから弾数は14発。対する俺は装弾数19発のグロック18Cが二丁、弾の数では俺が勝っている。けど、正直コイツに勝てるかどうかなんて分からない。銃撃戦だけだったら勝てるかもしれないが、あの黒刀を抜かれたら高確率で俺は死ぬ。アレが抜刀される前に倒さないと。
「服部銃兵衛、俺はあの時代の決着をつけたくてウズウズしてたんだ。遠慮なくブッ殺させてもらうぞ」
「悪いな真田刃刃幸。ブッ殺されるのはお前の方だ」
俺は黒牙の内側に仕舞ってたグロックを二丁抜く。刃刃幸も浴衣の中からウィンチェスターを抜く。
「黒刀は使わないのか? あれ使えば俺なんて瞬殺だろ?」
俺の疑問に対する答えは、刃刃幸の笑い声として返ってきた。
「おいおい、『暗殺影』とあろう者がそんなんで大丈夫かぁ?確かにコイツは強力だけどよぉ、あんまり使いたくない理由があるんだわこれが」
成程。やっぱ俺が服部半蔵の末裔だって分かってた以上、二つ名を持っている事も知ってたか。それに使いたくない理由、これも気になるな。まあ、使われた時にじっくり調べるとするか。
「さてと、お喋りはこのぐらいにして、サッサと始めようぜ。まあ、勝つのは俺だけどな」
「刃刃幸、その言葉そっくりそのままお前に返すぜ。勝つのは俺だ」
暫しの静寂。
俺達は互いに殺気を出しあう。ここから先は、俺が今までに経験した事の無いガチの『異常』な殺し合いでもあり、約398年前の、徳川と豊臣の決着をつける戦い。
「――っ!」
――パァンッ!
俺の方が速かった。俺が撃った2発の銃弾は、黒眼のスロー表示で見える。狙った場所は、刃刃幸の頭と心臓。けど、俺の方が速かったってのは、単なる俺の思い違いだった。
「――っ!」
俺が撃ったと同時に、刃刃幸も動いていた。俺の銃弾が何処に被弾するのかを予め予想してたかの様に、伏せた。
俺の銃弾は刃刃幸には当たらず、そのまま通過して金属音が鳴り響いた。恐らく奥にあった建物に当たったんだろう。でも今はそんな事はどうでも良い。伏せた刃刃幸はそのままの姿勢で二丁のウィンチェスターの銃撃。黒眼の表示で弾道が見える。場所は、2発の内の1発は俺の額、もう1発は、俺の全身を覆っている黒牙には何らかの防御性能があると思ったのだろう、俺の左足。黒眼が映し出すスローモーションによって、忍法『遅視眼』を使う必要が無いからより集中して銃弾をかわせる。
俺は黒眼の表示に従って後方空中一回転ジャンプをする。額を狙った銃弾は、俺がジャンプした事で俺には当たらず、そのまま通過。2発目の銃弾も勿論の事俺の左足には当たらなかった。そこまでは良かった。不発に終わった2発目の銃弾が地面へと減り込んだ。だがその次の瞬間、
――ドカアァァァァァァァァァァンッ!
「うわあっ!?」
突然着弾地点から爆発が起こり、俺は爆発の衝撃を受けて吹っ飛んだ。地面に強く落ちてそのまま転がり、たまたまそこにあったドラム缶の山に激突した。
「痛え……!」
黒眼の表示によると、全身打撲、肋骨2本骨折、骨盤に亀裂骨折、か。内臓に損傷が無かったのは良かったが、打撲のせいで全身が痛い。黒牙を着ていたのに骨折れたってどういう事だよ。そもそもさっきの爆発何だったんだ?
すると黒眼が別の表示をしてきた。
『マスターの体修復完了まで残り3分11秒。
黒牙、黒竜、黒炎、黒蜘蛛にも損傷有り。それに伴い、自己修復術式が自動発動。
黒牙修復完了まで残り4分24秒、黒竜修復完了まで残り2分54秒、黒炎修復完了まで2分47秒、黒蜘蛛修復完了まで残り1分38秒』
くっそ、黒眼以外全部損傷受けたか。しかも全身が黒牙によって強く締め付けられ、バキ、ゴキという音と共に激痛が奔る。黒牙は自分が一番損傷を受けているのにも関わらず、怪我した俺の体を治してくれているのだ。恩に着るぜ黒牙。
なんて風にロングコートに礼を言っていると、爆発によって舞った煙の中から刃刃幸が姿を現した。
「どうよ銃兵衛、焼火弾の威力はよぉ」
刃刃幸は左のウィンチェスターを肩にトントンしながら笑っている。以前は俺が鉄墜で骨を折ってやったから、今回はそれの仕返しになったな。
「チッ、油断しちまったぜ。何なんだよさっきのは」
俺は平然を装うべく『普通』に立ち上がって黒牙に付いた埃を掃う。まだ体の修復には2分必要だし、まだ全身痛いが、多分コイツ相手に修復時間完了を待つ暇は無い。
「冥土の土産に教えといてやるぜ。今のは『最新鋭銃弾』。最先端の技術を駆使して作り出された、『普通』の銃弾とは比べ物にならない『異常』な銃弾だ。今の爆発は焼火弾っつう、被弾した所から軽い爆発を起こす銃弾でな。最新鋭銃弾は俺達みてえな『異常』な無法者達だけじゃなく、自兵の間でも使われてんだぜ。只、値段がバカ高いから一度で大量に使うモンでも無えけどな」
最新鋭銃弾、聞いた事無えなそんなの。つうかさっきの焼火弾、軽い爆発って言ってたけど、あれで軽いのかよ。手榴弾の倍以上はあったぞ。
「んな凄え銃弾があるなんて羨ましいな。今度理事長に強請ってみるか」
「残念だがそれは無理だぜ。どうせお前はここで死ぬからな」
刃刃幸はウィンチェスターを二丁とも俺に向けてくる。それにさっき吹っ飛ばされた時には気付かなかったが、俺のグロックは吹っ飛んだ時に片方を何処かに落としてしまい、もう片方も銃身に皹が入っている。下手に使えば暴発の恐れもある。だから俺は使い物にならなくなったグロックを捨てる。
「おいおい、お前の銃、以外とヤワいな。たかが焼火弾の爆発受けただけだってのによぉ」
「仕方ないだろ。あんな爆発受けたら『普通』の銃なんて壊れるさ」
「まあ、だよな。ちなみに俺のウィンチェスターの弾は全部が最新鋭銃弾って訳じゃねえぜ。片方だけが最新鋭銃弾だ」
「へえ、貴重な情報を提供してくれて感謝するぜ」
つまり刃刃幸に残された『異常』銃弾はあと6発。さっきので装填されてるのは左側のウィンチェスター。あれさえ潰せば、少なくとも何とかなるかもしれない。
黒牙の修復どころか体の修復さえ終わっていない俺は、袖に仕込んでたクナイ2本を取り出し、両手に握る。
「お前相手に出し惜しみはしねえ。全弾喰らわせてやる」
「やれるものならやってみろ」
俺は源影による加速で瞬時に刃刃幸の懐に入る。そして左手のクナイで刃刃幸の首の頚動脈を狙う。
「チッ」
刃刃幸は舌打ちすると後ろに下がってクナイを擦れ擦れで避け、そのまま後ろ向きにバックする。そしてウィンチェスターで俺を狙い撃つ。
刃刃幸は出し惜しみはしないとは言っていたものの、確実に俺を仕留める為に最新鋭銃弾の方は温存させておきたいらしく、撃ってくるのは右側のウィンチェスター。
なので俺は構わず突っ込む。源影を使えば良いのだが、あれにも欠点がある。源影は一瞬で相手との距離を詰める事が出来て便利なんだが、実は連続使用しにくい歩法なのだ。使う度に脚の筋肉を強くする必要がある為、まだ体の治っていない俺には正直1回を何十分の間隔を空けないといけない。だから俺は『普通』に走る。
刃刃幸はレバーアクションで弾を装填。もう1発撃ってくる。狙いは今度も俺の頭。黒眼の見せるスロー表示のおかげで、俺は頭を横にズラしただけで銃弾をかわせた。
「チッ」
刃刃幸はまた舌打ちすると即座にレバーアクションを連発。残ってた5発の銃弾が俺の心臓、脚、腕、肩、脇腹を狙う。頭を狙ってもどうせ避けられるから別の所を撃ったみたいだが、今度の俺は避けない。というか避ける必要が無い。俺の体を狙った銃弾5発は全て俺の体に命中。だが銃弾は、ボスッボスッボスッ、という音を立てて、俺の肉体どころか黒牙すら貫けず弾け飛んだ。この光景を見て目を大きく見開いている刃刃幸は俺の左手のクナイを、もう弾を撃ち切ったウィンチェスターの銃身でガード。けど右手のクナイも残ってた俺は刃刃幸の頚動脈目掛けて突き刺す。だがそれも刃刃幸の左手のウィンチェスターでガードされる。
俺と刃刃幸は散弾銃と暗器の鍔迫り合いになり、互いに一歩も退かない。
「何なんだよ、お前のそのコートはよぉ」
刃刃幸は俺を睨みつけながら尋ねてくる。ふむ、さっき親切に教えてくれたし、礼に教えとくか。
「俺の黒牙はな、『普通』の銃弾も、『普通』の刀剣も効かない。全部弾くし、全部ヘシ折る。それにさっきまでは損傷してたんだがな、もう修復されたし、俺の怪我も治してくれた」
俺の黒牙の情報を言うと、刃刃幸は驚いて目を大きく見開く。けどすぐその後でニヤリと笑う。
「へえ、んじゃあお前を殺したら、その便利そうなコート使ってやるよ」
「殺せたら、な。それにコイツらがお前の言う事聞くかどうか。ていうか、お前がそうなら、お前を殺した後にその背中に背負ってて未だに抜いてない黒刀貰ってくぞ」
「そっくりそのまま返すぜ。殺せたら、なッ!」
刃刃幸は俺を無理矢理押し返すと、ウィンチェスターを撃ち放つ。刃刃幸に残された銃弾は全て最新鋭銃弾。その内の1発はさっき撃ったから残り6発。黒眼のスロー表示で弾道が見える。狙いは俺の左脇腹。押し返された後だからすぐに体勢を立て直すのは難しい。それに撃った弾がさっきと同じ焼火弾という可能性もある。けど、俺はそれをかわせる。体を反時計回りに回転させ、銃弾が体に当たるのを避ける。俺に当たらなかった銃弾は背後のドラム缶に当たり、爆発を起こした。予想してた通り、また焼火弾だった。
「おいおい、今のかわすってマジかよ」
刃刃幸は驚きつつも、レバーアクションで弾を装填。再度撃つ。
俺はまた避けようと思ったが、弾道を見てみると、それは俺の体ではなく、地面。
(っ!コイツ、俺に当たらないから地面に当てて爆発させようって魂胆かッ!)
ていうか最初からそうすれば良かったのに何で今までしなかったんだっていう疑問も虚しく、銃弾は地面に被弾。その直後に再び爆発が起こった。
(――源影ッ!)
けど、爆発したとほぼ同時に源影で横向きに加速。そのおかげで爆発の衝撃は軽めで済んだ。元来は前一直線を進む為の歩法なんだが、応用すれば横だけじゃなく後ろにも真上にも走れる。
けど刃刃幸はそれを先読みし、俺のいる方向に銃撃を放つ。俺は再度源影で避ける。連続使用はしにくいのだが、筋肉を無理矢理強くすれば最大5連続までなら使える。全部使えば脚は物凄く痛くなるけど。
俺が避けた直後に刃刃幸がまた撃つ。けどこれも源影の加速で回避。
これで刃刃幸に残された弾は2発。源影の連続使用はこれで3回目。
刃刃幸の5発目の銃撃も4回連続の源影で避ける。これも焼火弾だった。ていうか、どんどんとチート化してねえかこれ。
刃刃幸に残された弾は残り1発。俺の源影の連続使用可能数は残り1回。ちょうど足りた。
「……よくかわせるな。もうチートじゃねえか」
「俺も今そう思った」
俺が言うと、刃刃幸が噴き出した。何が可笑しいんだよ。
「くっくっく、そうか、同じ事思ってたか。なんか逆に気色悪いな」
「どういう意味だよそれは」
「そのまんまの意味だよ!」
訳分からない事を言い出した刃刃幸がウィンチェスターを俺に向ける。俺は源影の準備をしようと思ったら、脚に激痛が奔った。
(――っ! 何で……っ!)
源影はまだ4回連続しか使っていない。だからあと1回は連続使用出来る筈。と思っていると、不意に黒眼からの表示が出た。
『マスターは最初に真田刃刃幸との距離を詰めた際に源影を使っています』
……え?あれもカウントするの?
『当然です』
マジかよー! 確かにそれもカウントすれば合計で5回。かわしようがねえじゃねえかッ!
『但し、避けれる方法が1つだけあります。タイミングが良ければの話ですが』
その次に黒眼が表示したものを読むと……確かに難しい。失敗すれば確実に爆発に巻き込まれる。けど、やるやらないを決めてる余裕は無い。俺はまだ握ってたクナイの片方を袖に戻し、構える。
「……何の真似だよ銃兵衛」
刃刃幸は眉を潜める。俺の出した構えは、左の掌を前に出し、右腕は後ろ、クナイの先を刃刃幸のウィンチェスターの銃口に向ける構えだった。
「教えてやるよ。刃刃幸の最後の1発をかわす方法だ」
「方法?って事は、さっきのチート臭え動きは出来ねえのか」
「……だったら何だ?」
「……俺の勝ちだ」
刃刃幸がウィンチェスターを撃った。
黒眼の表示により、弾道が見える。狙った場所は律儀に俺の足元。けど、俺は刃刃幸が撃ったとほぼ同時に動いていた。後ろに構えてた右腕を前に出してクナイを突き出す。
これを失敗すれば、俺は負ける。けど何故だろう、負ける気がしない。
(――夏蓮ッ!)
俺は右拳とクナイに掛かる体重を軽くする。
刹那、俺の視界は、黒眼の表示するスローモーションになる。刃刃幸の44口径弾がゆっくりと俺の足元を狙う。俺の動きもスローだ。だから見える。刃刃幸の銃弾が俺のクナイの刃と擦れ違う。その途中、変化が起こった。俺の足元を狙った筈の銃弾が、俺のクナイの刃と擦れ違う時に、刃に軽くぶつかった。夏蓮でクナイに掛かる体重を軽くしてあるので、衝撃で銃弾が爆発する事は無い。けどそのおかげで、銃弾の弾道が上にズレた。銃弾はクナイの刃を滑り、下向きから上向きへと方向を変えていく。やがて銃弾は俺の頭の上を擦れ擦れで通過し、そのまま何処かに当たる事無く飛んで行った。
「ッ!」
刃刃幸は今俺がやった事に驚愕しているみたいだ。刃刃幸の方から見れば、俺が突っ込んで行った直後に、クナイで焼火弾の弾道を逸らした様に見えただろう。
そりゃ驚くよな。俺だって今初めてやったんだから。
俺は突っ込んだ勢いでそのまま刃刃幸のウィンチェスターの銃口にクナイを突き刺した。
「しまっ――」
俺は瞬時にクナイから手を離し、戻してたクナイを再度出し、もう片方のウィンチェスターの銃口を掴んでに突き刺す。クナイはあっさり銃口に突き刺さり、両方の散弾銃は使い物にならなくなった。レバーアクション式の銃は片手で弾を装填出来るのだが、メリケンサック状のループ・レバーに手を通しているので簡単に手から銃を離す事が出来ない。
(――冬厳ッ!)
両手からクナイを離した俺は左拳に全体重を乗せ、両手が銃で塞がり、胴がガラ空きになった刃刃幸に一撃を入れる。
「壊狼烈剋・剛火!」
――ゴッ!
「――っ!」
刃刃幸の鳩尾を狙った俺の拳。けど刃刃幸はウィンチェスターをクロスさせてガードしていたが、剛火の前では無意味。ガードしたウィンチェスターは2本ともヘシ折り、刃刃幸の鳩尾に拳が減り込む。
「ガッ、ハッ……!」
あまりの威力だったか、刃刃幸は血を吐いた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉォォォォォォォォォォッ!」
だが俺の攻撃はまだ終わらない。刃刃幸の鳩尾に減り込んだ俺の拳は、そのまま刃刃幸を吹っ飛ばした。
――ガッシャァァァァァンッ!
10m近くまで吹っ飛ばされた刃刃幸は倉庫の壁に積んであったドラム缶の山へ突っ込んだ。
壊狼烈剋・剛火。それは服部家の男だけが使える、打撃型体術の1つ。
以前俺が天童相手に使った一点重魂・羅生と対極関係にあると言えるその技は、文字通り羅生と正反対。嘗て羅生は夏蓮で拳に掛かる体重を軽くし、源影で速く走り、相手の胴などを貫通させた、軽くて速い一撃。剛火はその反対で、逆に冬厳で拳に全体重を掛け、殴る速さは遅くなるものの、一箇所に掛かる圧力の高さで相手の鎧や盾などの堅い物を力技で破壊する、遅くて重い一撃。羅生と違って体を貫通する事は無いし、アイツの事だから絶命する事も無いだろうが、少なくともこれで戦闘不能に陥ったのは間違い……
――ガッシャァァァァァンッ!
「――あぁっ、くっそ! やっちまったじゃねえかコノ野郎!」
……間違いだったな。全然戦闘不能になるどころかピンピンしてるし、ドラム缶の山も蹴り飛ばしてる。
「あぁ、全身痛え。つうか何だったんだよさっきのは」
刃刃幸はまだ手に握ってた、折れ曲がって使い物にならなくなったウィンチェスターを外し、投げ捨てた。
「よく生きてたな。いや、生きてるだろうとは思ったけど、よく動けるな」
「あぁ?あーまあな。コイツが背中にあったから衝撃が半分で済んだんだよ」
刃刃幸は背中にあるソレを指でコンコンと叩く。
「あーあ、やっぱこうなるのか。まあ良い。全身痛えけど、やっぱお前相手に出し惜しみは止めた方が良いみてえだな」
刃刃幸が背中に背負ってるソレを抜いた。出来ればソレが抜かれる前に倒したかったんたが、まあこれも薄々予想はしてた。
「銃兵衛、良い事を教えてるよ。今までで俺がコイツを使って戦った相手は、全員殺した。けど、コイツを使ったにも関わらず、殺せなかった相手が3人いる」
3人。なんかその内の2人は予想がつくんだが。
「誰なんだよその相手ってのは」
「1人は嵐崎紫苑、2人目はお前だ銃兵衛」
案の定俺と理事長か……ん?
「てか待て。理事長を殺せなかったって、昨日の襲撃の事言ってんのか?だったら一番最初に突っ込んできたユミって女の子や他の人達はどうなんだよ?」
「銃兵衛よぉ、お前は目の前を邪魔する虫の名前を一々覚えてんのか?」
成程。刃刃幸にとってあの人達は虫同然か。それはそれで逆にヤバいな。
「さあ銃兵衛、お前がコイツと何処まで渡り合えるか見させてもらうぜ」
刃刃幸がソレ――刃は黒刀、兼房乱、黒刀『幸村』を抜刀した事により、刃刃幸の周囲を黒い瘴気が覆う。
「殺るぜ『暗殺影』」
「上等だ『黒い妖塞』」




