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射城学園の殺し屋  作者: 黒楼海璃
弐 『異常』な幕開け(スタート・オブ・ゼウス)
24/44

弐拾参殺

 結局話し合いは明日に持ち越され、すっかり脱力した理事長をおんぶして近くの長椅子に寝かせた俺は、飲み物を買うべく自販機のある所まで来た。のだが、


「…………」


 俺はさっきゆきこくとうの斬撃をガードしたコクリュウを見て言葉が出なかった。あの黒竜が損傷を受けた。切られた痕が付いてる。

 黒竜だけじゃない。制服の中に着込んでいたコクにも切られた痕が付いてる。

 俺が暗殺の時に装備する黒牙、黒竜、コクエンクロ蜘蛛クモコクガンには、『異常』なまでに強靭な防御性能が搭載されている。こうげん曰く、多銃身機関銃ガトリングガンの撃つ何百発の銃弾を一度に受けても全て貫通せずに表面で止まり、どんなに鋭い剃刀かみそりよりも鋭利なやいばを持った刀剣で斬られても傷一つ付かず、逆に刃が折れるという。


「……まあ、あの黒刀なら、黒竜と黒牙が傷付いたのも一理あるな」


 あれを貰って以来、今まで俺が受けた攻撃は全て『普通』の銃や刀剣による『普通』の攻撃。だがあの『異常』な黒刀なら、同じ『異常』な黒竜や黒牙を切り裂く事が出来るのは『普通』の事か。


「これ、直せるかな……」


 俺はポケットからコンタクトレンズケースを取り出し、持ってきていた黒眼を右目に装着する。


『……起動完了』


 装着して僅か0.5秒で起動するとは、相変わらず早いなお前は。一体どういう構造してんだよ。


『黒眼にはこうじょうほうじゅつしきが組み込まれています』


 黒眼。お前普段は俺に分かりやすく情報を表示してくれるのに何で分からない表示を出すんだよ。高位情報術式って何だよ。


『高位情報術式:術者や術式を掛けた物を装着した人に様々な情報支援などを行う術式。

術式を掛けた物が破壊されない限り術式はかれない』


 成程。大体分かった。それで黒眼、黒竜と黒牙は今どんな状態だ?


『黒竜、黒牙は共に損傷を受け、しゅうふくじゅつしき自動発動オート・スタート中。修復完了まで、黒竜はあと27分54秒。黒牙はあと26分37秒』


 おい黒眼。お前人の話聞いてなかったのか。何だよ自己修復術式って。


『自己修復術式:自身が損傷を受けると自動的に発動する術式。時間は掛かるものの、徐々に損傷を修復して元通りにする。

例えて言うならば、RPGゲームのHP自動回復の様なものです』


 えらい分かりやすいな。黒眼、これからはそういう具合に説明してくれ。てか、自分で自分を勝手に直すって事は、それなりの力を使うんじゃないのか?


『マスターの持つ黒牙、黒竜、黒炎、黒蜘蛛、黒眼には発電はつでんじゅつしきが組み込まれているので問題ありません』――『自家発電術式:式力を自ら自動的に自家発電する術式。RPGゲームで言う所のMPマナSPスタミナ自動回復の様なもの』


 成程な。でもそれだったら自家発電っていうネーミングは可笑しいと思うぞ。別に動力源は電気じゃないんだし。


『それはこれを産んだ方に文句を言って下さい』


 誰が作ったんだよ、とツッコミを入れた俺は黒眼を戻して自販機でミネラルウォーターを2本買い、寝ている理事長の所に戻る。理事長はドッと疲れて右手で両目を覆っている。


「大丈夫ですか理事長?」


 俺はどう見ても大丈夫そうじゃない理事長にミネラルウォーターを渡して尋ねる。


「……う、うん。一応大丈夫」


 疲れ切った顔を見せた理事長は俺からミネラルウォータを受け取ると蓋を開けようとするが、相当疲れて力が出ないのか、ペットボトルの蓋を開けられずにいた。なので俺は理事長からペットボトルを取り上げて代わりに蓋を開け、理事長に渡す。


「あ、ありがとうじゅう兵衛べえ君」


 理事長は両手でミネラルウォーターを受け取るとゆっくりと飲み始める。


「ぷは~、色々ゴメンね銃兵衛君」

「気にせんで下さい。それよりもアイツらは一体何者なんです?」

「それなんだけどさ~、話すのはホテルに戻ってからで良いかな?結構疲れちゃって」

「ま、まあ、別に良いですけど」


 俺としてはまず理事長の具合を優先したい。いきなり『異常』な殺気を出したと思えば怒り狂って中二病みたいな黒刀使いと斬り合いになるし、この人本当に大丈夫なのか?

 それにあの怒り様。あれはどう考えても昔の理事長に何かあった。そしてそれに『ZEUSゼウス』とかいう組織が関わっているのも確かな筈、と色々考えていたら、ぐぎゅるるる~


「あ~、お腹空いたな~」


 理事長の腹が鳴り出した。そういえば俺達は昼飯を食っていなかったな。朝は早めに寮で食ったし、その後はずっと理事長の助手としてこき使われてたからな。俺も腹が減ってきた。ていうか理事長の元気が無いのって単に腹が減ってるからか?


「じゃあ理事長、飯食いに行きます?」

「う~ん、それはそうと銃兵衛君~」


 理事長がぬ~っとこっちに顔を向ける。なんか轆轤ろくろくびがこっちを向くみたいである意味怖いんですけど。けど正直に言ったらいけないのでここはあえてそこはスルーし、


「何です?」

「銃兵衛君さ~、さっき銃弾が空間跳躍ジャンプしちゃった時の事なんだけど~」


 空間跳躍ジャンプって。あー、あれね。


「あれがどうかしたんですか?」

「あの時銃兵衛君さ~、ボクの太股掴んだよね?」

「うっ……!」


 ヤベッ。やっぱ気にしてた。あの時理事長が銃を出そうとしてたから慌てて止めたんだが、間違えて太股を掴んじまったんだよな。


「何でよりにもよって太股を掴むの~?あれだったら腕でも良かったよね?」

「いえ、あの、その、つい咄嗟に……」

「銃兵衛君のエッチ」


 うわぁ、以外にそんな事言われたの初めてだー。まあ、言われても仕方ないか。一応年上でしかも理事長なんだし。


「だ、大体、スパッツも穿いていない人が自分からスカート捲るのがどうかしてるんですよ」

「まあ、確かにそうだけどさ。でも銃兵衛君、何でボクがスカートの下にスパッツを穿いてないって分かるの?」

「あ゛!」


 ヤベッ! 完全に墓穴掘っちまった!


「そ、それはえーと……」

「正直に言わないと伊佐南美君に言うよ?」

「すみません! 正直に言います!」


 冗談じゃねえ! こんな事伊佐南美に知れたら殺されるだけじゃ済まされねえ!絶対嬲られる! 多分俺が成人するまで絶対嬲られる!


「んじゃ、話して」

「はい。えっとですね、さっきの真田さなだ刃刃幸との戦いの時に、理事長ジャンプしたじゃないですか。その時に理事長のスカートが大胆に捲れて……」


 俺がそこまで言うと理事長は顔が除々に赤くなっていき、口をパクパクさせる。


「み、見たの?」

「え、ええ、まあ。見るつもりはなかったんですが、あの状況で目を逸らしたら多分られてただろうし……」

「え、えぇっ!?」


 それを理事長は顔をトマトの様に真っ赤にし、両手で顔を覆う。


「そ、そんな……まさか、まさかまさか銃兵衛君にパンツを見られてただなんて……! まだ光元さんにだって見せた事ないのにッ」


 理事長さん今さっき変な事言いませんでしたか?あと何であの野郎の名前が出てくるんです?


「理事長、一つ言っておきますけど、光元は止めた方が良いですよ」

「な、何で?」

「光元の奴、ロリコンだって噂ですから」


 そう。あくまでも噂でしかないんだが、光元にはロリコン疑惑があった。何故そんな噂が出たかと言うと、俺が前いたぎょう学園がくえんのある生徒が長い時間をかけて賑やかな街の方に言った時の事。その生徒は偶然見てしまったのだ。理事長、やま光元がデパートの洋服売り場で――その生徒は偶々たまたまそこにいた――女児向けの服を選んでいる所を目撃したらしい。『普通』なら一発で通報されるかもしれないが、実はその時光元の側に5歳ぐらいの白ワンピース姿の少女が手を繋いで一緒にいたのだ。

 それだったら一見すると単なる親子連れにしか見えない。だが光元は独身。結婚経験も一切無い。じゃあその少女は誰なのか。噂を聞きつけたさかくりはらに頼まれ、俺が聞く事になったのだが、


『……それはその子の見間違いじゃないのかい?確かにその日、僕は用事でいなかったが、そこには行っていなかったよ』


 と言っていたが、それは絶対嘘だ。

 そう確信できるのは、その噂の具体的な内容。それは、『理事長が悪趣味な仮面・・をつけて5歳ぐらいの女の子と一緒にデパートの洋服売り場にいる』が大体の内容。

 そう、光元は仮面を付けている。常に顔を隠した白い、笑い顔の仮面を。俺が初めて光元に会った時、最初は驚いた。だから俺はアイツの素顔を知らない。

 仮面を付けているせいで俺はアイツの心だけは読みにくい。俺と伊佐南美が奴から退学処分を受けた日は偶然忍法『どくしんがん』が使えるか試みたが、あんなのは成功確率100万分の1も満たないから無理だった。それだけ奴は謎だらけなんだ。ガチで。

 光元にロリコン疑惑がある事を知った理事長は、体が固まっている。相当ショックだったみたいだ。


「銃兵衛君、それ、本当なの?」

「確証は無くは無いんですが、本人が否定してる以上、詮索は野暮かと」

「そ、そっか……」


 理事長はホッと息を就くいなや、何かを思い出したかの様に顔が真っ赤になってスカートを押さえる。絶対さっき事だ。


「ていうか、ボクのパンツを容赦なく見た銃兵衛君の処遇をどうしよう」

「理事長、何でもするんで伊佐南美には言わないで下さい」


 俺は例の『異常』な殺気を出しながら睨んでくる理事長に懇願する。すると理事長は俺をジーッと睨み、


「……じゃあ、一週間ご飯奢って」

「……はい」


 うわぁ、一難去ってまた一難。俺の命のピンチの次は俺の財布のピンチかぁ。まあこれも自業自得か。


「それじゃあ銃兵衛君、早速今から食べに行こっか」

「……何が食いたいんですか?」


 俺が尋ねると理事長はうーん、と腕を組んで悩んでいる。今の俺の手持ちは約5万ちょい。もし高級レストランのフルコースがいいとか言ったら破産は確実。まあ、貯金は一応沢山あるし、カードも持ってるから大丈夫だと思うけど。


「じゃあね、回転寿司」


 なんだ良かった。一瞬高級寿司って聞こえたけど、ただの回転寿司か……って、


「理事長、今何て言いました?」

「回転寿司」

「……回転寿司、ですか?」

「うん。回転寿司」


 ちょっと待て。あんなに大きくてパッと見金持ち学校に見えるぐらい綺麗+豪華で、国の国策校であるじょう学園の理事長で、絶対高級レストランとかが慣れてそうこの人が回転寿司で食いたい?


「もしかして銃兵衛君、お寿司嫌いだった?」

「いえ、好きですけど」

「じゃあ行こう」

「は、はい」


 この人本当に回転寿司って言ったのか?俺は疑問に思いつつ理事長について行くのだった。

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