表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
射城学園の殺し屋  作者: 黒楼海璃
弐 『異常』な幕開け(スタート・オブ・ゼウス)
16/44

拾伍殺

 そして一方、ほぼ同時刻。私は獲物のいるビルに潜入していた。


「えーっと、獲物は拳銃密売をしている、表向きは輸入会社を経営している社長、その社員、取引相手の20人」


 私は理事長さんから貰った資料を読み直して目的の場所に向かう。20人かぁ。ちょっと少ないなぁ。


「ま、いっか。早くってお兄ちゃんからご褒美貰おうっと!」


 ご褒美、ご褒美、楽しみだっなぁー! 私は景気良く歌いながら走っていると、目的の社長室に到着した。


「あれ?ドアが開いてる」


 変だな。何で開いてるんだろう?私はヒョコッと顔を出して社長室を覗く。


「……え?」


 私は目をまん丸に見開いた。私の視界に入ったもの、血塗ちまみれに汚れた社長室、所々に転がっている沢山の死体、数は20人。これは獲物の人数とおんなじ。そしてもう一人いた。


「……あぁ、あたし。2013年、4月21日、すぎうらひとしとその部下、取引相手計20人の抹殺完了。て訳だから後お願いね。あぁ……」


 その人は女の人だった。年は多分16か17。身長はちょっと高め。ガンマンハットを被り、茶色のミニスカート、白シャツに黒いベスト、緑のウエスタンポンチョを羽織り、腰にはヒップホルスターに入った拳銃を二丁下げている。女の人は私を数秒見るとすぐに顔を振り、


「……ねえ。悪いんだけどさぁ、ちょっと野暮用が出来ちゃったの。だから予定変更ね。野暮用が済み次第すぐ行くから。んじゃ」


 女の人は電話を切るとスマートフォンをスカートのポケットに仕舞い、再び私の方に顔を向け、歩いてきた。


「……で、お嬢ちゃん。あたしに何か用?」

「……ここに転がっているのはお姉さんの仕業ですかー?」


 とりあえずまず最初にこの人にそれの確認をしないと。でも言うかなぁ?見ただけで分かるけど、この人『普通』じゃないもん。


「もしそうだったら何?」


 あ、答えた。多分この人がったんだ。ムカつくなぁ。人の獲物勝手にっちゃって。


「もしそうだったらですか?」


 私はホルスターからベレッタM92SBを抜き、


「だったら殺す」


 お仕事モードに切り替え、切り替え。人の獲物を勝手に奪った罪は償ってもらわないとね。


「……良いわ。面白いじゃない」


 お姉さんはヒップホルスターから拳銃二丁を抜く。あの銃は確か装弾数6発の回転式拳銃リボルバー、マニューリンMR73。スチールを削り出して作られていて、精度が高い上に仕上げも良い拳銃だぁ。けどその代わりに値段が高くて、生産されたのは少数。だから殆どは機動隊などで使われているらしい。そんな拳銃を持ってるなんて、誰だろあの人。ま、いっか。どうせ殺しちゃうんだし。くふふふっ。


「死んでも恨まないでね」


 マニューリンは二丁で12発。対する私のベレッタは二丁で30発。弾数でなら私の方が勝ってる。でもなんだか嫌な予感がするなぁ。でもそんな事でめげない、めげない。という訳で私はベレッタで一発お姉さんの頭を撃つ。するとお姉さんもほぼ同時に私を撃った。

 ――パァン!

 ――ギィン!


「……え……」


 私は目を疑った。忍法『がん』――片方の目だけ、見るものがスローモーションになる忍術――で私が見たのは、私の撃った銃弾はお姉さんには当たらず、お姉さんの撃った銃弾も私には当たらなかった。途中で銃弾同士がぶつかり、弾道が逸れた。しかもお姉さんは意図的にそれをやった。お姉さんの撃った銃弾は私を狙ったのではなく、私が撃った銃弾を狙った。つまりお姉さんは銃弾に銃弾をぶつ・・・・・・・・けて弾道をずらした・・・・・・・・・


「……お姉さん何者ですかー?」

「……さあね」


 お姉さんは答えない。だったら仕方ない。


「殺す前にしっかり拷問しないとー」


 ――パパン! パパン! パパン!

 ――パンパンパン!

 ――ギイン! ギイン! ギイン! ギイン! ギイン! ギイン!


「……え?」


 また驚いちゃった。私はベレッタ二丁でそれぞれ3発ずつ、計6発撃った。それに対してお姉さんは3発撃った。もしまたさっきみたいな芸当が出来るんだとしても、3発だけだったら半分しかずらせない。なのに、6発全部弾かれた。つまりお姉さんは、1発の銃弾で2発・・・・・・・・の銃弾を弾いた・・・・・・・。1発の銃弾で2発の銃弾を撃つには、反射の角度の計算をしなくてはいけない。それをこのお姉さんはやってのけた。つまり、相当強いなこのお姉さん。これじゃあ10発撃とうが30発撃とうが全部弾かれるだけかぁ。


「……じゃあ良いや。接近戦にしようっと」


 私はベレッタをホルスターに戻すと袖に仕込んでいたクナイを取り出して両手に握って、煙の様に姿を消してお姉さんの懐に入る。


「お姉さん、死んで」

「無茶な注文するお嬢ちゃんね」


 私はクナイでお姉さんの首の頚動脈を狙った。でもお姉さんは当たる前にマニューリンの銃身バレルで受け止めちゃった。結構ちから入れた筈なのに、お姉さんは平気で私を押し返した。


(……この人一体何者……)

「お嬢ちゃん。あんた一体何者さ?」


 お姉さんは私が思った事と同じ事を私に聞いてくる。


「……さあ、誰でしょうね。お姉さんが答えてくれるなら教えますけど?」

「……あたしはね、『異常』な人間さ」


 うーん、それって教えないって言ってるのと大して変わらないようなー。


「じゃあ私も教えますね。私は、『普通』じゃない人です♪」


 私はとりあえずニコニコしながら教えたのに、お姉さんは怪訝な顔で私を見る。


「……お嬢ちゃん、それって答えになってないよね?」

「お姉さんも似たようなものじゃないですかー」

「じゃあ面倒だし、殺すか」

「その台詞そっくりそのままお姉さんに返して上げますね!」


 私はお姉さんから離れると両手のクナイを上に投げ、両手で三角形を作る。


「忍法『しんしゅうおん』」


 ――ギィィィィィィィィィィン! 掌で作った三角形から頭が割れるような音が流れ出る。


「うっ、ぐっ……!?」


 お姉さんは頭を押さえる。忍法『心終音』は、掌で作った三角形から振動波を作り、対象の脳を直接攻撃して脳を破壊する振動型忍術。ちなみに使ってる私本人は平気ー。


「ふ、ふふふふ……」


 でもどうしてだろう。そろそろ脳が破壊されても良い頃なのに、お姉さんはまだ立っている。もしかして、『心終音』に耐えてる?でも『心終音』の作り出す音は術者以外は絶対効く筈。防ぐにはガラスで密閉した空間に入らない限り、絶対に当たる。それなのに何で?


「お嬢ちゃん中々やるね。でも、これぐらいならあたしだって平気さ!」


 お姉さんはマニューリンを片方床に落とすとスカートのポケットから、あろう事か手榴弾を取り出し、安全ピンを抜いて私に投げる。


(ヤバッ!こんな狭い所であんなの喰らったら……!)


 私はすぐさま『心終音』の発動を止めて手榴弾にワザと突っ込む。手榴弾のピンを抜いてから爆発するまでの時間は三秒ある。1秒で手榴弾の所に走って、1秒で手榴弾を蹴り飛ばして、0.9秒で後ろに下がるぐらい、私にとっては至極『普通』の事。だから私は本当に1秒で手榴弾の所に向かい、蹴り飛ばそうとした。でもそれをやろうとする前に、私の予想を超える事が起こった。お姉さんがいつの間にか、握っていた方のマリューリンで私を撃っていた。2発も。多分手榴弾を投げたとほぼ同時に。狙いは私の左胸と右脇腹。幸いにもコクを着ていたから、銃弾2発は当たっても私には傷一つ付かなかった。でも予想外の出来事で2.9秒を使ってしまった。残り0.1秒だといくら忍者の私でも、無理。


(ヤッバ……!)


 けど違った。何が違ったか。それは手榴弾じゃなかった。だって3秒経ったらドッカーンって爆発したんじゃなくて、

 ――カッ――!

 ――ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!

 まっぶしい光と大音響だーいおーんきょーう


「うわぁぁぁああああああああああああああああああ!」


 私はおっきい音と眩しい光に目と耳を塞ぐ。しまった。あれは手榴弾じゃなくて、手榴弾の形をしたスタングレネード。しかも『普通』のよりも遥かに効果の強いやつだ。耐光訓練たいこうくんれん耐音訓練たいおんくんれんの経験あったから失明も無かったし、耳の鼓膜も破れずにグワングワンする程度で済んだ。それでもかなりのダメージ。目は開けられないし、耳も聞こえにくくなっている。


(忍法『せん』)


 でも私は遠くの音を聞ける、所謂いわゆる集音機能の忍法『千里耳』で聞きやすくする。最初に聞こえたのは、お姉さんが撃鉄ハンマーを起こしてマニューリン銃口マズルを私に向けた音。『千里耳』のおかげで大体分かる。


「お嬢ちゃん、さようならだ」


 お姉さんが私に別れの言葉を言う。でも私は終わったとは思っていない。私もベレッタを抜いてお姉さんに銃口を向けているから。


「……お嬢ちゃん、それは無駄な足掻きだよ?」


 お姉さんはそう言った後に、撃った。無駄な足掻き?違うよ、それ。お姉さんの位置は音で大体予測できる。目が見えなくても、耳で、『千里耳』で聞ける。私もお姉さんが撃ったとほぼ同時に撃った。そして多分、私の撃った銃弾と、お姉さんの撃った銃弾は、互いにぶつかり合い・・・・・・・・・互いに弾道がずれて・・・・・・・・・、互いに銃弾が当たらず、後ろの壁に当たった。


「……な、あ……!」


 お姉さんは私がやった事に驚いて声を漏らしている。そりゃ驚くか。さっきお姉さんがやった芸当を私がやったんだしー。すると外からパトカーのサイレンの様な音が鳴り出した。


「ヤバッ、警察サツかよ」


 お姉さんは焦った口調で言うとチャッ、チャッ、という音がした。多分マニューリンをホルスターに収めたんだ。


「……お嬢ちゃん。多分、また今度会うかもね」


 ――ババッ、ダッ!

 お姉さんの走る音が聞こえたって事は、窓から飛び降りたのかなぁ。でもここ結構高いよね? ……ま、いっか。さてと、どうやって帰ろう。目が見えないし。とりあえず『千里耳』を発動したままビルから出て、後は北条ほうじょうさんにお迎え来てもらおうっと♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ