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射城学園の殺し屋  作者: 黒楼海璃
壱 『異常』に『異常』で『普通』じゃない
12/44

拾壱殺

 理事長に詳しい事を聞いた俺はと別れ、教室に戻り、自己紹介の後普通に授業が行われた。この学校普通は無いんじゃなかったのかよ。そして夜十時、消灯の時間が過ぎ、シュンは鼾を掻きながら寝ていて、俺は部屋にいなかった。



 夜十時半、学校の校門前、ここに紫苑しおんほうじょうはいた。そして誰か二人が煙の様に現れた。


「お待たせしました」

「ただいま来ましたー」


 それはじゅう兵衛べえと伊佐南美だった。銃兵衛はベルトがゴテゴテと付いたとても長い黒のロングコートを着て、黒い手袋、黒い覆面、黒いブーツを履いている。伊佐南美もそれに似た感じで、覆面を付けていないのが唯一銃兵衛と違う所だ。


「よく来たね二人とも。それに面白い格好もしてるしね」


 紫苑はクスクスと笑い、銃兵衛はムッとする。


「あ、ゴメンゴメン。随分と変わった武装だなーって」

「このコートはコク。覆面はコクエン。手袋はコクリュウ、今俺が履いているブーツはクロ蜘蛛クモ。この装備一式は全部光元の奴が俺達の為に用意した物です」

「ふーん、こうげんさんも面倒見が良いねー。でもそれだとなんだか本当に忍者みたいに見えるね。色黒いし」


 紫苑はクス、と笑う。すると北条が紫苑の前にやって来て二つのトランクを渡した。紫苑がそれを開けると中には拳銃二丁とサブマガジンが6本入っていた。銃は装弾数19発のグロック18C。そしてもう一つのトランクに入っていたのは装弾数15発のベレッタM92SB二丁。こちらもサブマガジン6本入りだ。


「銃ぐらい必要かなって思って」


 紫苑はそう言うとグロックを銃兵衛に、ベレッタを伊佐南美に渡す。


「……有難う御座います」

「大事に使いますねー」


 銃兵衛と伊佐南美は受け取ると、一緒に渡されたショルダーホルスターをコートの内側に取り付け、銃を収め、サブマガジンは黒牙の外ポケットに入れる。


「使い方は分かるかい?」

「問題ありません。コクガンがありますから。」


 銃兵衛はそう言いながら自分の右目を指差す。その目は左目より全体的にかなり黒い。


「ふーん。確かに文字通り黒眼だね。それって何なの?」

「簡単に言うとコンタクトレンズ型ディスプレイです。こいつからはあらゆる情報が表示されるので、銃の使い方どころか大半の武器も扱えるので大丈夫です」

「そっか。それはそれで安心だよ」


 紫苑は懐から一つの封筒を取り出し、銃兵衛に渡す。


「それが今回の獲物と地図。初仕事頑張ってね」

「はい」

「頑張りまーす!」


 銃兵衛と伊佐南美はそう言うと煙の様に消えた。この二人がやる仕事は一言で言うなら、悪人狩りである。


「さてと、あの二人の実力、どんなものか楽しみだよ。ところで・・・」


 紫苑には一つ疑問に思う事があった。


「……光元さんは、一体何処であんな『異常』な武装を手に入れたんだろう? うーん……、ま、いっか」



 俺と伊佐南美は煙の様に獲物のいるビル内に潜入し、――正確にはビルの通気口から匍匐前進で入り、ビル内の金網を外して入った――気配と姿を消しながら静かに移動していた。


「ドーピング剤?」

「ああ。表向きは製薬会社の社長。だが裏向きの顔は製法不明のドーピング剤を不正に取引している男だ」

「サイテー。じゃあそいつをれば良いの?」

ついでにそのドーピング剤の実物も盗んできてくれ。と、この紙に書かれている」


 俺はそう言いながら封筒に入っていた紙切れをヒラヒラさせながら伊佐南美に見せる。


「でもさ、獲物がそれだったら簡単じゃない?」

「それがそうもいかないらしい。その男が取引している相手がヤクザらしい。しかもこの時間ならそいつらと会ってるだろう。ちなみに紙にはそのヤクザに出くわしたら殺しても良い、と書かれている」

「じゃあヤクザは私に殺らせてー。獲物はお兄ちゃんに譲ってあげるからー」


 伊佐南美は勝手に役割分担を決めてしまった。俺だってヤクザを殺したかったのに。


「……お前な、殺し甲斐のある相手を勝手に取るなよ」

「良いじゃーん。次殺る時は先に選ばせてあげるからさー」

「……まったくお前は」


 俺は溜息を吐くが、伊佐南美はニッコリと可愛い笑顔だ。この笑顔を見ると何故か心が癒されてある意味困る。まあ別に悪い意味じゃないから良いけど。


「ていうかお兄ちゃん、学校どうだった?」

「……何で今それを聞く?」

「だぁーってぇ、お兄ちゃんの事が心配なんだもんー。伊賀にいた時は全然友達作んなかったし。しいて言える友達なんかさか先輩とくりはら先輩だけだしー」


 坂田と栗原の名前が出た途端に俺は止まった。


「……伊佐南美、俺は別にの二人と仲が良かった訳じゃない。単に向こうが勝手に構ってきただけだ」

「うっそだぁー。先輩達と話してる時お兄ちゃん、活き活きしてたのにー」

「……活き活きってどういう事だ?」

「なんかいつも一人でいるよりも良い雰囲気を出してたって事」


 何だよ良い雰囲気って。大体あの二人の話は殆ど聞き流してただけだぞ。


「伊佐南美、トットと行くぞ」

「……はぁーい」


 二人は再び移動を開始した。



「……着いたな」

「そーだねー」


 そうしている内に俺達は獲物のいる社長室に辿り着いた。


「……伊佐南美、やるぞ」

「りょーかーい!」


 俺はドアを開け、業と物音を立てて入った。


「な、何だ!?」

「誰だ貴様!?」


 部屋の中には三人の男がいた。二人は若い黒ずくめ、こいつらが多分取引相手のヤクザ。もう一人は理事長に渡された写真に写っている中年のおっさん、恐らくこいつが今回の獲物だろう。


「『忍法・おと結界げっかい』」


 俺は伊佐南美がドアを閉じたのを確認すると、部屋の中を特殊な空間にした。


「……さて、仕事の始まりだ」

「レッツラゴー!」


 俺はグロックを、伊佐南美はベレッタを抜く。


『黒尽くめ二名トカレフTT-33(装弾数八発)所持。サブマガジン無し。戦闘経験少し有り。中年男性武器無し。戦闘能力皆無』


 黒眼から表示される情報が俺の右目に映る。今回の獲物も殺し甲斐無しだ。


「伊佐南美、ヤクザはトカレフ持ちだ」

「オッケー」


 伊佐南美にそう言うとヤクザ達二人は内ポケットからトカレフを出し、俺達に銃口を向ける。その瞬間、俺と伊佐南美は抜いたグロックとベレッタをヤクザ目掛けて投げた。


「なっ!?」


 ヤクザが驚いている隙に伊佐南美は瞬時に移動し、ヤクザ二人の前まで来ると二人のトカレフを掴み、互いの頭に当てた。


「バーイバーイ」


 そして引き金を引いた。発砲音と共に血が噴出し、ヤクザ達は倒れた。そして伊佐南美は即座にトカレフを俺のほうに投げる。俺はジャンプしてトカレフを受け取ると、床に着地する少し前ぐらいに獲物にトカレフを撃った。その高さは丁度ヤクザ達が獲物の頭に撃つ時の高さとほぼ同じ。


「っ!?」


 獲物は血を噴出して呆気なく倒れた。俺と伊佐南美は投げた銃を拾い、ホルスターに収めた。


「終わったね」

「そうだな」


 俺はそう言うとデスクの上に置いてある黒いトランクを見つけ、蓋を開ける。中には黒い謎の液体が入っていた。黒眼からは『ドーピング剤の可能性99.7%』と表示が出てる。


「お兄ちゃん、それ?」

「らしい」


 俺は蓋を閉じ、トランクを持っていく。するとデスクの脇に大きなトランクがもう一つあるのに気付き、腰を下ろして蓋を開ける。中には札束が沢山あった。


「伊佐南美、こいつも持ってくぞ」

「りょーうかーい!」


 俺は札束の入ったトランクを伊佐南美に渡し、煙の様に―――姿と気配と結界を消して通気口から―――消えた。

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