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射城学園の殺し屋  作者: 黒楼海璃
壱 『異常』に『異常』で『普通』じゃない
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玖殺

 れんざきにジーっと見られたまま時間が過ぎていき、朝のチャイムが鳴り始めた。


神楽かぐらざか君、また遅刻みたいですね」


 二宮にのみやが呟く。てかシュンの奴遅刻ばっかしてんのかよ。すると、

 ――ドドドドドドドドド!

 何かが近づいてくる音がする。そして音はどんどん大きくなり、ドアが思いっきり開く。


「セーーーーフ!」


 それはシュンだった。シュンが教室に入るとチャイムは鳴り終わった。


「神楽坂君、またギリギリですか」

「へっ、まあな。てかじゅう兵衛べえ、ルームメイトなんだから・・」

「起こそうとしたがいびきを掻きながら寝ていて起きる気配が無かった」


 俺はシュンが文句を言い終わる前にサッサと言う。


「神楽坂君、あなたはもうちょっとしっかりする必要があると思いますが」

かな、お前に心配されなくたって大丈夫だって」

「まったく神楽坂君は」


 二宮は溜息を吐く。すると、また教室のドアが開いた。


「はーい、皆さんちゃんといますかー」


 入ってきたのは一人の若い女性。


「えーっと、あなたが転校生の服部銃兵衛君ね?」

「あ、はい」

「私はこのクラスの担任を任されているしきざきめいです。宜しくね」

「よ、宜しくお願いします」


 俺は慌てて会釈する。なんだろう、この先生はどうも悪意が無さそうだ。優しそうな顔をしているという理由じゃなくて、優しい雰囲気が出ている。悪意と優しさの比率が1:9ぐらいな人だ。


「えっと、早速服部君には自己紹介をしてもらいたいんだけど、その前に服部君、理事長に呼ばれてるのよね」

「は?」

「兎に角朝一番に理事長室に来てくれって。そういう訳だから早く行った方が良いわ」

「わ、分かりました」


 俺は席から立ち上がると急いで理事長室に向かった。



「……で、お前も呼ばれたのか

「うん、そうだよお兄ちゃん」

「やあ、よく来てくれたね」


 ここは理事長室。ここにいるのは俺と伊佐南美、理事長、秘書のほうじょうさんだ。


「悪いね二人とも、朝から呼び出しちゃって」

「気にしないで下さい。それよりも用件は何ですか?」

「うん、それなんだけど、昨日君達に言い忘れてた事があったんだ」

「言い忘れてた事?」


 理事長がコクと頷くと、北条さんが何かを持ってきた。それは『東京射城学園校則』と書かれた書類だった。


「実はね、この学校に於いてやってはいけない事があるんだ。それは犯罪を犯す事。当然の事だろうけど、この学校の生徒が犯罪を犯した場合、ボク達が厳重に処罰するんだけど、その中で最もやってはいけない事が一つある。それは殺しだ。この学校では、人を殺した生徒は秘密裏に消され、存在していない事になる。つまり、君達はこの学校の生徒である限り、殺しは出来ないんだ」


 理事長がそう言った瞬間、俺は理事長の喉元に手刀を放とうとした。が、すぐに伊佐南美に止められてしまう。


「……銃兵衛君、落ち着きなよ。話は全部終わってないよ」

「……分かりました」


 俺は渋々返事をすると手を収める。


「で、話を戻すけど、この学校に於いての如何なる殺人は厳禁。やった時点で確実に消される。ボク達教員総出でね。でも、一つだけ例外がある。人を殺しても良い方法が」

「何ですかそれは」

「簡単だよ。理事長、つまりボクの許しを得た者だけが殺しをする事が出来る」

「どうやったら許しが得られるんですか?」

「うん、そこなんだよ。ボクが君達を呼んだ本当の理由は」


 理事長はそう言うと立ち上がる。そして俺達の目の前にやって来る。


こうげんさんから話を聞いているよ。君達は伊賀の方でも暗殺をやってきたんだろう」

「はい」

「実はね、ボクは光元さんに大きな恩を受けてるんだ。君達は光元さんが元暗殺者だって知ってるかい?」

「知ってます」

「とっても人脈の多い冷酷な暗殺者だったらしいですよー」


 俺と伊佐南美が答えると理事長は頷く。


「うん、そう。その冷酷さから『悪鬼羅刹サティスト』って呼ばれてたらしいしね。それでね、ボクは光元さんに頼んだんだ。ボクの親族を全員暗殺してくれって」

「え……」


 俺が声を漏らすと、理事長はフッと笑う。しかもそれは、「そりゃ驚くよね」と言わんばかりの笑い方だった。


「祖母が死んだ後に親族会議があったんだ。誰がこの学校の次期理事長をやるか、祖母の遺言ではボクを使命してきた。でも親族達は猛反対だ。当時ボクはまだ十歳。、理事長なんて出来る訳ないってね。でもボクは分かってた。親族達は祖母の遺産が欲しかった。だから反対した。だからボクは光元さんに頼んだ。親族の皆殺しを。そしたら光元さん、タダで引き受けてくれたよ。死んだ祖母の孫のよしみだからって。それで光元さんは一時間で全員殺してくれたよ。あの時はゾクッとした」


 理事長の話を聞いていた俺達は複雑な気持ちになる。この人もこの人で色々と訳ありなのか。


「理事長は後悔してないんですか?」

「してないよ。というか親族達は金の亡者だったからね、消えてほしいって毎日のように思ってた。あっと、話が逸れたね。それで、二人はそんなに人殺しがしたいのかい?」

「はい」

「したいですー」


 俺と伊佐南美は即答する。そりゃもうしたいですよ。殺しは俺達の生き甲斐ですからね。


「じゃあやらせてあげる。但し条件は守ってもらうよ」

「条件?」

「うん。簡単さ、君達は罪無き人を殺したら駄目。つまり、正義の殺し屋をやってもらいたいんだよ。出来るよね、『暗殺影シャドー』の銃兵衛君、『暗殺霞ミスト』の伊佐南美君」


 理事長はニッコリとした顔でそう言った。

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