友達作り~西城椎名の場合~8
「俺はさ、その人の絵が本当に好きでさ、だからこそそんな絵を描ける、生み出す人が傷つくかもしれないなんて許せなかった。だからめちゃくちゃなこと言ったよ。下手したら馬鹿にすんなって思われたかもしれない、いや思われてたかなあれは。その後はもう怒りに顔を赤くしたあの子にボコボコにされて」
(違う! ただ照れてただけだ)
「罵倒浴びせられて、でも俺はめげなかった。ここで待ってるよって・・・・・・君にボコボコにされたこの道で待ってるって」
(そうか・・・・・・全然聞いてなかった。自分のことでいっぱいいっぱいで何も)
「まぁその人は結局こなかったんだけどね・・・・・・で、そんなことがあった人に西城が似てるから俺はちょっかいだすのかもな・・・・・・まっ、他にも理由はあるけど」
「そうか、そうだったのか。何勝手に拗ねてたんだろうな私は、バカバカしい」
「え?」
西城は自分の髪の毛を持ち上げた。美しい黒髪は風に揺られながら西城の手によって少しずつ天に浮かび上がる。俺はあいた口がふさがらなかった。まさかこの年で、
「・・・・・・若ハゲだったのか西城」
「違うッ!」
俺のふざけた言動に腹を立てたのか顔を真っ赤にしながらそのヅラを一気に取り去った。出てきたのはふわりとゆれる、まるで向日葵のようなキレイなブロンドヘアーで、あの絵の中の人のようで、
「母の空・・・・・・」
絵のタイトルが自然と口をついた。
「ちょっとちょっと! なんで西城さんはあんなにヤンキーヘアーをしてますの?」
あのあと西城は固まる俺をおいて一人学校へと行ってしまった。
放心していた俺が意識を取り戻したのは遅刻ぎりぎりの時間。ダッシュで学校へ向かえばこの有様だ。
西城はブロンドを隠しもせず教室の真ん中に堂々と座っている。それを見た恋歌が俺に問いただしてきたのだ。何故俺に聞いたのかって? それは、
「西城さんと何がありましたの! わたくしが髪の色を尋ねたら、あの方なんておっしゃってたと思いますか? そんなのお前には関係ない、私と悠木の問題だ! ですって。あなたいつの間にそんな間柄にッ?」
ってことみたいで俺もさっぱりわけがわからん。ただなんて言うか俺と西城の問題ってのはあながち間違いでもないのかもしれないな。
「恋歌」
「なんですの?」
「早い話が最終段階突入だ」