友達作り~西城椎名の場合~4
まぁつまりこういうこと。実は恋歌と仲直りして数時間も経っていない。
西城を尾行し始めて数十分立つが、西城は気づいていない様子。尾行は成功していた。
「なぁ恋歌? そろそろやめないか」
「っし! あちらを見なさい」
俺が恋歌に注意され西城がいる商店街屈指の人気を誇るたこ焼き屋を見てみると、その店の前で西城は知らない制服の学生に絡まれていた。
いかにも柄の悪そうな女子生徒二人と男子生徒二人は西城を裏路地へと誘い込もうとしている様子。
「ね、ねぇ。あれってまずいんでなくて?」
「まずい、気がする・・・・・・もう少し近くまで近づいて様子を見よう」
「そうですわね」
そういっている間にも西城は裏路地へとつれてかれてしまった。俺たちは彼らから見えない位置で尚且つ、いつでも助けを呼べる位置につく。すると西城達の言い争う声が聞こえてきた。
「西城! この前は俺のダチがお世話になったそうだな」
「・・・・・・お前達はあのクズの仲間なのか。っくっく、負けたことを友達に報告し、あまつさえ、しかえしを人に頼むとは・・・・・・思っていた以上にクズだな」
西城は四人に囲まれていても余裕の表情を崩さなかった。
「てっめぇ!」
怒りに我を忘れた男は西城に掴みかかろうとするがそれを西城は許さなかった。
西城を掴もうとする男の手を逆に引き寄せ、思わぬ反撃にタタラを踏む男の腹に膝を思いっきり打ち込んだ。
「っぐふ!」
男の目はグルンと白目を向き、そのまま地面に横たわってしまった。俺はその光景に言葉を失う。恋歌も口をパクパクとしながら驚いているようだ。
「ザコが、いきがるな。面倒くさいんだよ。いつもいつも・・・・・・お前らも、やるのか?」
「っひ、ひいぃ!」
残りの三人は、たった一人相手に臆し仲間を見捨てて逃げてしまった。
「・・・・・・これで友達とかのたまうのか、お前らは」
西城は一言ぼそっと言うがおそらくあいつらには聞こえてなかっただろう。
「で? お前らは、いつまでそこに隠れてるつもりなんだ」
げ、ばれていた・・・・・・俺達は互いに顔を見合わせて、西城の前に姿を現しす。
俺は、何をしゃべってもいいかわからなかった。それに、まさか尾行していましたとも言えない。
そんな俺に気づいてか恋歌が口を開いた。
「彼らはなんでしたの?」
「そんなことお前に言う必要はない」
「っむ」
「それよりお前らは仲直りしたみたいだな」
「っふん、そんなことケンカなんてする野蛮な人に教える義理はないですわ」
「っなんだと?」
西城の眼がぎらついた。だが恋歌もそんな眼に引けをとらず互いの視線がばちばちと音を立てているようだった。
「ストップ、ストーップ、二人とも俺らがケンカする必要はないだろ? それと西城! あんまケンカとかすんなよ・・・・・・問題になったら困るだろう? それに、もし大人数つれて仕返しにこられたらどうすんだ」
「それこそお前には、悠木には関係ないだろう! お前にどうこう言われるのが一番腹が立つんだ!」
西城は俺に詰め寄り、襟首を掴んだ。
「っぐ、関係ある!」
「何がだ!」
何がだろう・・・・・・俺は必死だった。最初はちょっとした仲裁のつもりがいつの間にか俺が襟首をつかまれ、あるいみ窮地に立っている。へたしたら、さっきの男の仲間入りなんじゃないだろうか。それだけは勘弁だ。
でも、俺が本当に勘弁して欲しいのは、そんなことじゃない。西城だって女の子なんだ。恋歌は野蛮って言い方をした。確かに女の子の振る舞いじゃないかもしれない。俺もいくら西城がケンカ上等の人間だったとしても・・・・・・これから仲良くなっていければと思っている子に暴力を振るってもらいたくはない。
それにこいつの、俺を掴んでいる手は、
「こんなにキレイなのに」
「あ?」
俺は襟首を掴んでいる西城の手を掴み西城自身に見えるよう持ち上げた。
「お前のこの手はこんなにキレイなのに、ケンカなんかして傷ついたら勿体無いだろう?」
「っんな!」
西城は自分の手を抱えるようにし、俺から距離をパッと取った。
「っど、どうした?」
俺は急にそわそわし始めた西城に少し引け腰になる。
「お前は・・・・・・また」
「ぇ?」
「るせぇ・・・・・・」
西城はそわそわしたまま俺たちに背を向け、歩き始めた。
「お、おいちょっと待てって」
俺が声をかけても立ち止まらず、しかし・・・・・・
「また・・・・・・学校で」
と、ぼそっとつぶやき路地を曲がり姿を消した。