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友達作り~西城椎名の場合~3

仲直りも果たし、教室で大騒ぎして居た俺達だったが、


「うるさい! 他のクラスには補習をしている者もいるんだッ、静かにできないのなら今すぐ帰りなさい!」


 と、見知らぬ教諭に怒られた。


「空がうるさくするから、わたくしまで怒られたじゃありませんの」

「俺のせいかよ・・・・・・」


 恋歌はツンとした態度をとったが、すぐにに軟化し、ほっとするような優しい笑みを浮かべながら、


「では途中まで一緒に帰りましょう」


 と言われれば、こいつは本格的にヤバぃ。縦端への思いが薄れたわけではないが、どうにも恋歌が可愛く見え、俺はドギマギしながらもうなずく事しかできなかった。

 恋歌は超のつくほどお金持ちだが、学校までは歩いて登校していた。本人いわく、


「学校くらい一人で行かなくてどうするの、車でずっと送り向かいしてもらうなんてお子様のすることですわ」


 だそうだ。では、車登校の者は皆お子様かと、問えば、


「人には人の事情がありますの、わたくしにはなんとも言えませんわ」


 とはぐらかした。

 俺たちが学校の敷地を出たところで恋歌はコホンと一つ咳払いをする。


「先ほどの件ですが」

「?」

「その・・・・・・ぁなた・・・・・・つくり・・・・・・しますわ」

「あ、なんだって? っ全然聞こえなかったぞ」


 俺がそう言うと恋歌は顔を真っ赤にしながら怒鳴りだす。


「あぁ、だから! 空の友達つくり協力しますわ! 狙うは西城さんですの!」

「ぅわ、っちょ、お前ツバとばすなって」


 すると余計に顔を赤らめる恋歌。


「っむっきぃ~! 何度も言わせるようですがわたくしは、九上院恋歌ですの! それにわたくしのツバは汚くないですわ! っぺ、ぶぶぅベロベロバァ!」

「っお、おい、だからってわざと飛ばしてくんなって! わかった、わかったからやめろ」

「っふん! もう空なんかしりませんわ」

「ったく、わるかったって、待てよ」


 先に行く恋歌の後ろ姿を追いかける。

 だが、俺はこんなケンカならわるくもないなとニヤけてしまいそこを運悪く恋歌に見られ、また怒られる。けど・・・・・・やっぱり悪くない。


 恋歌が俺に対してここまで打ち解けたのは、ちゃんと友達に成れたからなのだろうか。そうならこんなにうれしいことはない。今までの恋歌ならまず間違いなくツバを飛ばすようなしゃべりかたをしないだろう・・・・・・いや、ツバを飛ばされることがうれしいわけじゃないぞ? 

 ただ、自分ってものを言葉に乗せてしゃべってくれたような気がしてうれしかった。ただそれだけ・・・・・・


「空・・・・・・」

「?」

「空は西城さんのことどう思います?」


 恋歌は突然立ち止まるといきなり難しい質問を投げかけてくる。


「どう思う・・・・・ね。わかんねぇよ。なんか少し嫌な奴っぽい気もするし。恋歌はどうなんだ?」

「わたくしは・・・・・・わたくしも分かりませんわ。彼女とは一年の時から同じクラスですが、何もわからない」

「・・・・・・つまり謎の人物なのだな」

「えぇ、ですわ」


 その後しばらく俺たちは考える人の立ち姿を公道でさらす。


「でもまぁ、考えていてもしょうがないだろ。恋歌は西城と友達になりたいんだろ? でもどうして西城にこだわるんだ? もし前に言っていた箔がつくとかだったら他にも金持ちはいるだろう」


 でも、きっと違うはずだ。そもそも恋歌は箔とかそんな自分につく付加価値になんて興味ないはず。この際だから聞いておきたい。

 俺は表面上西城に近づくことをそこまで嫌っていない。だがあいつは俺を容赦なく凹ませた(恋歌とケンカ? していたときに言われたことを根に持っている)。正直あいつには苦手意識しか持ってない。恋歌だって普段の態度から見ればあいつと仲良くなろうとしている様子は見受けられない。どちらかといえば対立しているようにも見える。ならなんで西城なんだ?


「空は知っていまして? わたくし達のクラスが二つに分かれていることを」


 あ、はじまった。


「え?」

「あなた、わたくし達のクラスに入ってあまりいい印象を抱かなかったのではないかしら」


 恋歌はいつものように俺の周りを囲うように歩き出す。


「なんでそう思った」

「そんなの簡単なことですわ。だってあのクラスの半数は良家のお嬢様としては半端者として認識されていますもの」


 もしかして、これはムッチリ教諭が言っていたことと関係があるのか?


「クラスはほぼ二分にされているといってもいいですわ。ひとつは西城さん筆頭の、令嬢としては不良に値するグループ。もうひとつはわたくしを筆頭に令嬢として完璧な振る舞いを行なえるグループですわ」

「・・・・・・・・・・・・」

「なんですのその沈黙は」

「あ、いや・・・・・・つづけてくれ」


 恋歌の完璧という言葉には引っかかるものがあったが俺は進行を促しつつも思い出す。

 俺がクラスに最初抱いた感想はとてもお嬢様学校には思えないということだったが、すっかりそんな事は忘れていた。何故ならこのクラスが第一印象とは全然違い意外とまともだったからだ。


「こほん・・・・・・そのことからわかるように両者は互いにイガミあっております。一時期わたくしが不在だったため力関係に差があったようですが」


 なるほど、だからあの時、悪そうな娘が目立って感じたんだ。


「ですが、今はわたくしも居ります。力関係はまた並行の道をたどるのですが・・・・・・いつまでもそんなの、つまらないでしょう?」

「ははっ」


 俺は思わず噴出してしまう。


「っな、なにがおかしいのですか!」


 だって、それはお前、


「だってさ、恋歌は俺と仲直りするまで他人が信じられないとか言ってたけど、西城とつるむって考えてたのはもっと前じゃんか、それってクラスのみんなと仲良くなりたいってことじゃねぇの?」

「ぁ・・・・・・」

「自分じゃ気づかなかったのかもしれないけど繋がりが欲しかったんだな・・・・・・わかった、西城を落とそう! 俺たちの輪の中に引き込んでやろうじゃん」

「・・・・・・ありがとうですわ。戦を制すには敵の情報を掴むしかないですわね! 早速敵情視察をしなくてはいけませんわ! 尾行開始です」

「いや、尾行って! そもそも西城今いなっ――って居た!」

 こうして俺たちは都合よく現れた西城を尾行することにした。


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