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星を歌う (蓮&ヴォルド)

※時系列でいえば13~14話の間のお話




 見上げる夜空に溢れんばかりの星が瞬く。

 青い青い星の光は、月明かりと見まがうほどの明るさがあった。

 その明るさに誘われるように、口を開く。

 小さく開かれた唇から漏れ出したのは、柔らかい旋律だった。



 輝く夜空の 星の光よ

 瞬くあまたの 遠い世界よ

 更けゆく秋の夜 澄み渡る空

 臨めば不思議な 星の世界よ (「星の世界」川路柳虹/詩)



「歌、か?」

 視線だけ声の主に見ると、本から顔をあげてじっとこちらを見ていた。

 ベッドの端に腰掛けているその人物ににじり寄りって、隣にまで移動する。

「うん」

 手にしていた本を取り上げながら頷くと、仕方ないなと小さな子供を見るように頭を撫でられた。

 その視線に、ふと思い立って聞いてみる。

「ね、この国の子守唄とかってあるの?」

「子守唄…。そうだな、有名なのがあるが」

「どんなの?」

 歌ってと催促すると、困ったように笑われた。

「他の誰かに歌ってもらってくれないか。私は…」

「なんで」

 他の誰かと言っても、そう易々と頼める相手が思い当たらない。

 それに今聞きたいんだと催促を繰り返すと、頭まで下げられて断られた。

「なんで」

 もう一度理由を問うと、言いづらそうにこう言われた。

「人前で歌うのはやめた方がいいと、以前言われてな」

「…」

 音痴か!

 顔がよくても完璧じゃないんだなぁと、改めて認識した。

 認識した瞬間、ぶふっと吹いてしまい、バツの悪そうな顔で視線を逸らされる。

 それがさらに笑いを誘い、腹を抱えて笑ってしまった。

「くくっ…、うん、ならいいや」

 頼んでごめんねと肩を叩いて、なんとか笑いを引っ込める。

「……他にも何か歌はないのか?」

「んーそうだなぁ」

 他の歌、と言われ改めて考えると、流行りの歌しか思い浮かばない。

 クラシック系の曲しか聞かないこの国でJ-popを歌う気になれず、さて何にしようと考えると、昔よく聞いた童謡が頭をかすめた。



 通りゃんせ 通りゃんせ

 ここはどこの 細道じゃ

 天神さまの 細道じゃ

 ちっと通して くだしゃんせ

 ご用の無いもの 通しゃせぬ

 この子の七つの お祝いに

 おふだをおさめに まいります

 いきはよいよい 帰りはこわい

 こわいながらも

 通りゃんせ 通りゃんせ (「とおりゃんせ」童歌)



「……肌寒くなるのは気のせいか?」

 自らを抱きしめるように二の腕を擦られ、雰囲気だけで恐さが伝わるものなんだなと頷きながら同意する。

 実際この歌、人身御供の歌だしね。

 子殺しの歌にゾッとしないのは当然だろう。

「こわい歌いっぱいあるよ?あ、人身売買の歌、歌ってあげようか?」

「いや、いい」

「つまんないの…」

 きっぱりと断られて、口をすぼめて窓の向こうに見える空を見上げる。

 キラキラと瞬く空を視界に入れたまま、また小さく歌を口ずさんだ。



 きらきらひかる お空の星よ

 瞬きしては、 みんなを見てる

 きらきらひかる お空の星よ (「きらきら星」武鹿悦子/詩 フランス民謡)



 二番の歌詞はなんだったかなと思いながら、本を読みながらメロディーだけ口ずさめば、また優しく頭を撫でられた。

 軽く笑みをもらせば、頭を撫でていた手が頬をくすぐるように一撫でして離れていく。

 その手を追うように視線をあげれば、懐かしむような視線と合わさり、二人して小さく微笑みあった。

この二人の無自覚なイチャつきは、契約とは関係ないんだぜっていう話

契約して顕著になっただけだったり

皇帝はヘタレに加え、音痴設定が追加されたもよう

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