酒盛り後
時系列無視ってます
パロとしてお楽しみください
「マノレイ!」
これでもかというほど胸を反って堂々と呼んだ蓮に、いつも通り応えてやってきたマーノンは、目の前の光景にうん?と首を傾げた。
蓮の足元には屍累々となった男どもがいて、そこから少し離れたところで皇帝であるヴォルドが苦笑交じりに目礼してくる。
充満する酒の匂いに、なるほど、酒盛りをしていたのかと、にへにへと笑って抱きついてくる蓮を抱きしめながらマーノンは納得した。
目礼のみで、そのまま酒を飲み続けているヴォルドを見ると、かなりの量を飲んでいるようだ。
「レーン、お酒飲んだの?」
「うん!あまくておいしーの!」
にっこにっこと笑う蓮の可愛さに、マーノンもへらりと笑う。
酔ってるせいか、舌足らずで幼い印象を受けた。
機嫌のいい蓮を抱き上げて、マーノンはヴォルドの前に座る。
「これってどういう状況?」
「…レーンが酒を飲みたいと言いだして、カミッロがそれに便乗を」
マーノンに新しい杯を用意して、それに酒を注ぎながらヴォルドが説明する。
顔色は常時と変わらないのに、随分と酔っているようだ。
「それでこの惨状か…。レーンが可愛いからいいや」
何が楽しいのか、きゃっきゃっとはしゃぐ蓮を腕の中に抱きしめながら、ヴォルドから受け取った酒にマーノンも口をつける。
「…これ」
一口飲んでから、マーノンは酒瓶を手にとった。
「やっぱり」
この世界で一番アルコール度数が高い酒であるデーティ酒だ。
神々の間では酒といえばこれだが、人間たちにとってこの酒は並大抵の酒豪では太刀打ちできないと言われる酒だ。
その酒瓶が、ヴォルドの傍にごろごろと転がっている。
もちろん、それらすべて空き瓶だ。
「さすが皇帝…っていうところかな」
「んー!マーノンちゅー!」
ちゅーと言いながら、蓮はマーノンの頭をかかえるように抱きしめている。
「レーン、何がしたいの」
「ちゅー!マーノンとヴォルド!」
これは二人とキスをしたいという意味か。
それとも二人でキスをしろという意味か。
わからないが、とりあえずまた腕の中に閉じ込めて、マーノンは蓮の頬に口付けた。
「はい、ちゅー。レーン、皇帝には自分からしてあげな」
「うん!」
ほっぺにキスがそんなに嬉しかったのか、蓮はいい子の返事で勢い良く頷いて、こちらに気にした様子もなく酒を飲み続けていたヴォルドへと抱きついた。
あまりの勢いに縺れるように二人は倒れこんだ。
「ヴォルドー!」
「…ん、レーンか」
「ちゅーしよ、ちゅー!」
いいながら、すでに顔中にキスを落としている蓮に、ヴォルドは心地よさそうに目を細めながら、お返しにと唇に啄ばむようなキスを落とす。
二人のじゃれあいを見ながら、もしかして蓮はキス魔なのだろうかと、マーノンは心配になった。
貞操観念自体が希薄な蓮だ。
もし外で酒を飲んで、その都度誰かれ構わずキスなんてしたら襲ってくれといってるようなものだろう。
今襲われないのは相手がヴォルドだからにすぎない。
「ねぇ、レーンは僕が来る前もこんな感じだったの?」
「……」
ちゅー!とまだ言っている蓮をそのままに、ヴォルドは少し考え込んだ。
それから緩慢な動作で顔をあげる。
「いや、反撃できないことをいいことに、アナクたちに理不尽な命令をして殴っていたくらいだ」
「…そう」
キス魔より性質が悪そうだ。
となると、今のこの状態は相手が僕と皇帝だからか?とマーノンは首を傾げたくなった。
「マーノン、ちゅー!」
「ちゅーはもういいから寝ようね、レーン」
無理矢理横にさせて、膝に頭を乗せる。
ちょっと唇を尖らせたものの、すでに眠かったのか、蓮はすぐに大人しくなって目を瞑った。
寝息が聞こえてきたのを聞きながら、ヴォルドへと視線を向ければ、こちらもどこかうつらうつらとしている。
「皇帝、寝るならレーンをベッドに運んで」
声をかけたことで眠りの淵から顔をあげたヴォルドの腕に、蓮を押し付ける。
大事そうに蓮を抱えながら、ヴォルドはゆっくりと頭を傾いで頷いた。
貰った酒ネタ…。
多分期待されてたのとは違うと思う。
蓮は酒飲むと幼くなります。
そして常以上の傍若無人になり、特定の人間にキス魔に…。