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ゲテモノ (元・拍手お礼)

※拍手お礼だった、蓮とヴォルド(晩餐中小ネタ)の会話文に肉付けしたものです




「これは?」

 習慣と化した晩餐の中、これまた習慣と化した問いを私は繰り返す。

 何故って、そりゃ見た目有り得ない食べ物が多いからだ。

 最初は黙々と食べてたけれど、その有り得なさの度合いが日増しに強くなってる気がする。

「スーデルだ」

「魚?」

 乳白色のそれは、フォークでつついてみた感触では魚というには固い。

「肉だ」

「肉!?」

 肉なのに白いのか。

 いや、でも今日の昼に食べたハンバーグに似たのは、普通にいい具合の茶褐色だった。

「なにかおかしいか?」

「や、肉にしては…白い」

「そういうものだからな」

 さも当然といったヴォルドに、おそるおそる一口食べてみる。

「あ、肉の食感…」

 味は普通。食感も普通。

 見た目の白ささえ目をつむれば、なんてことはない、普通の牛肉だ。

「……うまいか?」

「まぁまぁ。ソースはもう少し濃くてもいいかも」

「そうか」

 この国の料理は基本的にうす味すぎて物足りないことが多い。

 自分で料理しちゃいたいくらいだが、材料が材料なので断念している。

「スーデルってどういう動物?」

 やっぱり恰幅のいい動物なんだろうか。

 丸々太った動物を連想した私に、ヴォルドが首を振った。

「いや、植物だ」

「………植物?」

「ああ。食人植物でな。野生のものはとるのがなかなか難しい」

 食人?

 今食人って言った?

 …え?ってことはなんだ?

 この肉…。

「………………げぇっ」

 吐き気を覚えた私は、マナーも忘れて胃から絞り出したくなった。

 今すぐに!

「どうした」

「気持ち悪い…」

 口を手で覆いながら、スーデルがのった皿を押し退かす。

 それで合点がいったのか、ヴォルドは付け加えるように説明した。

「それは養殖だ。餌は魚を食べさせているから、なかなか淡白だと思うんだが」

 養殖できるのか。

 育てる人大変そうだな。

「養殖…。あ、でもだめ」

「何がだめなんだ」

「植物が人間バリバリ頭から食べてる想像しちゃったのよ、バカ!!!」

「それは災難だったな」

 淡々とした言葉に腹立たしさを覚えながらも、スーデルの盛り合わせの緑色をしたゼリーに似たものに手を伸ばす。

「……こっちは何?」

「クロンデンだ」

「野菜…?」

「いや、海藻だな」

「海藻?」

「ああ。………あ」

 海藻ならば大丈夫かと思い、口に入れた瞬間ぞわぞわぞわっと鳥肌が立った。

「うあっ!まっずい!!」

 こればっかりはすぐさま吐き出してしまった。

 とてもじゃないが飲み込めた味じゃない。

「それはそこにあるソースをかけるものだ」

 言われてスーデルにだけかけたソースの存在を思い出した。

 が、後の祭りだ。

「先に言えっての!!」

「すまん」

 笑い堪えながらじゃ誠意がねぇよ!

 そう怒鳴りたいけれど、口の中に残る異様さにそんなことも言ってられない。

「うぅ…。まだ口の中に後味が…。何この味」

 生ごみに臭みが残ったままの肝すり潰して凝縮したような…。

 こんな味だけど、多分ソースかけたら美味なんだろうな。

 この間のデザートみたいに。

「海藻といっても、それは内臓だからな」

「な…っ!?」

 やっぱり内臓系か!

 レバーとか苦手だから余計に食べれないよ、もう。

「そんなにだめか?」

「ゲテモノ多すぎない?朝食昼食そうでもないのに」

 素材を知らないから言えることなのかもしれないが、それがなくてもソースかけて味が変わるような、この世界特有とも言える料理は一人で食事をする分にはついぞお目にかかっていない。

 出てくるのはヴォルドとの晩餐のみだ。

「この晩餐以外は、普通に食べれる物以外は出させないようにしている」

「それはそれは…」

 晩餐にそれらを出す意味は何だと睨みつければ、疲れたように肩を落とされた。

「ダミアンがこの晩餐で会話のきっかけにしろと」

 ダミアン…宰相閣下か!

 なるほど、それで。

「色々出してるわけですか…」

「そういうことだな。クロンデンは私もあまり食べない」

「…」

 いじめか…!

 これは新手のいじめなんでしょうか!?

 本気でゲテモノかよ…!

 打ちひしがれている私に、気遣うようにヴォルドが言った。

「デザートを食べるか?」

「それを食べずに何を食べろと?」

 こんなゲテモノで食事を終えさせられてたまるか…!

 そう睨みつければ、ヴォルドはややたじろいだ。

「いや…」

 まぁ、これはヴォルドのせい、とはいうわけではないだろう。

 しっかり同じ料理を食べてることですし。

 八つ当たりをやめて、やってきたデザートに舌鼓を打ちながら私は言った。

「ゲテモノはもういいです。今度から普通に食べれる物お願いします」

「わかった。そう伝えよう」

「お願いします」

 切実な願いに、ヴォルドは深く頷いた。


こうしてゲテモノは晩餐から排除されました、という話。

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