ワンシーンパロ(蓮&ヴォルド)
※白鳥○伝のワンシーンパロ
※本編のストーリーとは何ら関係ございません
※突っ込みどころ満載なので、スルー出来る方のみどうぞ
「レーン?」
現れたその存在に、ヴォルドは眩しそうに目を細めた。
その、安堵したかのような表情に、蓮はもの言えず見入った。
肌着の白いシャツのまま、剣を片手に立つヴォルドは、自らに言い聞かすように繰り返した。
「レーン」
愛おしそうに、慈しむように、呼ばれる名前。
彼は手を伸ばし、けれど途中でその手を止めた。
困ったような苦笑をもらし、ひっこめる。
その一連の動作に、蓮はすでにわけがわからなくなった。
けれど、自らの目的を果たすべく、腰にさしていた短剣を引き抜く。
「レーンが来るとは、思わなかった」
「どうして?マーノンが来るとでも?」
人間同士の事に、マーノンが手を出すわけがない。
それに、今回は手を出さないよう、蓮はきつく言い含めてきた。
「いや…。そうではない。来て、欲しくなかっただけだ」
疲れた様に眼を閉じて、ヴォルドは岩に寄りかかる。
剣を支えにして立っているのがやっとだった。
「…今のヴォルドなら、私でも容易く殺せそうね」
マーノンから貰った短剣でなくても、心臓を一突きすることは容易そうだと、ヴォルドへと歩み寄りながら蓮は思った。
「レーン?」
不思議そうに瞬くヴォルドに、蓮は隠し持っていた短剣を突き刺す。
ずっぷりと肉の裂ける感触を短剣越しに感じながら、蓮はきつく目を閉じる。
それから、目を見開いて、ヴォルドを見上げた。
考慮していなかった身長差から、心臓を狙った短剣は大きく逸れて脇腹へと突き刺さっている。
「それではだめだ、レーン。ここを突き刺さなければ」
「…ヴォルド?」
苦しく喘ぐ息の合間から、心臓を指し示してヴォルドが囁く。
「殺して、くれるのだろう?」
がくぜんと、蓮は息を飲んだ。
後ずさった反動で、短剣が引き抜かれ、鮮血が飛ぶ。
顔を濡らしたその血の温かさに、手をやりながら、体が震える。
「あ…」
出来ない。
そのことを自覚する。
出来ない。殺せない。
血の生ぬるさに身が竦む。
「うそ」
一歩、また一歩と後退する蓮に、ヴォルドは傷口を抑えながら慌てた。
蓮の背後にあるのは、海へとつながる崖だ。
「レーン、待て…!」
「うそ…なんで?なんで、にいさんのためなのに。にいさんの…」
「レーン!」
上ずったヴォルドの叫びも届かない。
蓮はそのまま崖の外へと足を踏み出す。
「レーーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!!!!!!!」
落ちた少女は青い海の底へと浚われた。
勾玉三部作を読み直してたら書きたくなった
前後のストーリーや蓮がどうして皇帝殺せなかったのかは
好きに補完してください