例えばこんな終わり
※一章17話前後で少しだけ考えたバッドエンド(死にネタ含みます)
※過程をすっ飛ばして終わりだけ
※契約後、妊娠設定なし、皇帝と蓮が恋人関係であったと前提
※本編でこの終わり方はありませんのであしからず
「ねぇ、レーン。レーンが欲しい物はなんだったっけ?」
ほしい、もの。
ほしいとおもったもの。
そんなの、決まってる。
この世界に来てまで欲したのは。
「兄さんの、幸せ」
どうしてとかなんでとか。
そんな些細なことをすっ飛ばして、まるでそれが絶対みたいに、私はそれに手を伸ばした。
だって、兄さんが幸せでないと、私は…。
「ねぇ、レーン。目の前に見えるものはなんだろうね?」
笑みを含んだささやきに、私は虚ろに首を振った。
見たくない。
視界に入れてはいけない。
見てはいけない。
堅く瞑った瞼も、両手で塞がれた耳も、マーノンの前では何の意味を持たない。
「そろそろ現実を見ようか、レーン」
「…っ、私は!」
「レーンが一番好きな人は誰?」
一番、好きな人。
唐突な問い。
意味のある問い。
その答えは、私を壊す。
「すきな、ひとは……」
太陽みたいに綺麗な金髪と空のように澄んだ青い瞳の…。
私に触れて、抱きしめて、ただ傍にいることを望んでくれた人。
最期まで、私を愛してくれた人。
「ヴォルド」
私を守り、囲っていた世界が、音を立てて砕ける。
鬱蒼とした森の、神殿の中。
十字の石碑が立つ庭で、私は茫然と座り込んでいた。
石碑に刻まれた名は。
「兄、さん…」
10年前、召喚されたのは私。
神子だったのは私。
兄さんは…。
「兄さんは、もう死んでた」
死んでた。
けれどこの世界から、兄はすぐに弾かれた。
その遺体すら埋葬することも出来ず、私は泣いて、絶望して、フィーリーシャに理不尽な怒りをぶつけた。
フィーリーシャのおかげで私は助かって、生きてて、それが一層自己嫌悪に拍車をかけて、死にたくなって。
眠りについたのも、私。
「お帰り、レーン」
後ろから抱き寄せられて、体が強張る。
マーノンの腕の中、その温かさに私は泣いた。
「レーン」
一瞬にして、すり替わった景色は、先ほどと殆ど変わり映えはしなかった。
変わったのは、石碑に刻まれた名前だけ。
「これが、レーンが望んだもの?」
違う。
違うんだと、私は首を横に振るしかできない。
どう否定したところで、これは私が招いた結果だ。
頑なまでに兄の幸せを追い求めて、それ以外を顧みなかった結果。
どこからが夢で、どこからが現実だったのか、私は知らない。
それでも、ヴォルドと共に過ごした時間は本物で、そして、有りもしない兄の幸せだけを追い求めた私は。
「ヴォルゲルド・フィーシェーラ・ケアトラフェス・ヴィレンツァーレ」
石碑に刻まれた名を私は宝物を抱きしめるように囁いた。
もう戻ることのない、大切な人の真名を。
過程がないと暗さも半減だ。
この話だと蓮は悉く大切な人を失う。
この時点でマーノンも実は瀕死の状態だったり。
完全なはないにしてもハッピーエンドがいいなぁ