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ホワイトデー小ネタ3 (蓮&ヴォルド)




「…」

 やってきた蓮の姿に、ヴォルドは目を見開いたまま微動だにせず、じっと魅入った。

「…何」

 向けられる視線に居心地の悪さを覚えて、蓮は不貞腐れた様にふくれっ面をする。

 それにふっと顔を綻ばせながら、ヴォルドは立ちあがって蓮の前に立った。

「随分と愛らしいな。レーンは白がよく似合っている」

「毎度思うんだけどさ。ヴォルドの女嫌いの基準がわかんない」

 艶言でも語りだしそうな甘い表情に、こいつは本当に女嫌いなのかと蓮は疑いたくなった。

 しかしヴォルドは、笑みを深めて白いグローブに覆われた蓮の右手を取りキスを落とす。

「そうか?レーンとそれ以外で、明確ではないか」

「………っっっ」

 顔に熱が集中するのを蓮は自覚せざるを得なかった。

 ヴォルドの行動と言動に他意はない。

 だからこそ多大な羞恥を覚えてしまい、蓮は何も言えなかった。

「どうした」

 赤面して閉口している蓮の顔を心底不思議そうにヴォルドは覗き見る。

 その仕草にさえ過敏に反応してしまいそうになり、蓮は顔を背けた。

「口閉じようか、ヴォルド」

「何故?」

 真面目に問い返されて、なんともいえない脱力感が蓮を襲い、馬鹿らしくなった。

「…もういい」

「…そうか?ああ、それでな。先月バレンタインのチョコレートなるものをくれただろう?」

 力が抜けた様に項垂れる蓮を心配そうに見ながらも、ヴォルドは机の上に置いた箱を手にとった。

「ああ、うん」

「そのお返しなのだが」

 手のひらサイズの箱を蓮に手渡す。

 味気ない紺色の箱に、装飾の類は一切ない。

 今日出来上がったばかりだからだ。

「これ?開けていいの?」

 期待したような瞳を向ける蓮に、ヴォルドは淡く笑みを浮かべ頷く。

「ああ」

 そっと大事そうに蓋を開け、中から姿をのぞかせたそれに、蓮の瞳が輝いた。

「……イヤーカフス?」

 箱の中の銀色のそれを指で撫で、感触を確かめるように形をなぞっていく。

「受け取ってくれるか?」

「それは…うん」

 バレンタインの時に装飾品でもいいと言ったのは自分だものと頷く蓮に、ヴォルドは安堵したように肩から力を抜いた。

「よかった」

 柔らかく笑うヴォルドに笑みを浮かべ、蓮は手にした壊れ物でも扱うようにゆっくりと持ちあげる。

 窓の外から流れ込んでくる光に透かした。

 宝石の類は一切なく、彫刻の模様だけのそれは光に透かした途端、青く光った。

「この模様…」

 見たことのある模様に息を呑む。

「契約の紋章だ。気に入らなかったか?」

「ううん。綺麗…」

 この世界の、絆の象徴。

 ヴォルドとの絆。

 それが契約を交わした時のように青く光るそれは、涙が滲むほどの感動を覚えて、蓮は知らず恍惚とした表情を浮かべていた。

 ぎゅっとけれど柔くそれを握りしめて、パッと笑みを浮かべてヴォルドに礼を言う。

「ありがとう、ヴォルド!」

「いや…」

「ちゃんと身につけるね!」

「それは、是非とも」

 身につけてもらえるなら作らせた甲斐があると頷けば、そんなヴォルドの返答も耳に入らない様子で、蓮はすでに部屋から出ようと駆けだしていた。

「ちょっと待ってて、今つけてくるから!」

 蓮がいなくなったのを見送りながら、口もとを片手で押え、ヴォルドは顔を赤らめた。

「…………………あの顔は反則だろう」

 艶のあるけれど純粋な穢れを知らない色の、華のような笑顔。

 伸ばしかけた左手を握りしめ、大きく息を吐くヴォルドに、蓮が出て行ったあと入ってきたアナクは、またやってんのかと生温い視線を向けた。

神様二人からお膳立てされてるというのに、手も出せないヘタレ皇帝

3月にはこれが当たり前と化している模様

拍手の時はこれで終わりでしたがあと1話あります

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